第6話:予兆
獣人国へ着いた3人だったが、白が不在ということで獣人国へしばらく泊まることになった。
カイに指定された旅館に行き、女将に案内された部屋を見たレイナは絶句した。
その部屋は、専用の展望風呂などが用意されており高級感あふれる部屋となっていた。
「こ、これって、国のトップが止まるVIPルームってやつじゃないの!?」
「はい。カイ様より、VIP待遇するように申し付かっております。」
女将はそういうとアメニティなどを渡し、静かに去っていった。
「これって大丈夫な奴なの!?」
「レイナ様は、機械族の種族王ですよ?これくらいの対応は、当然だと思われますよ。」
「そうですよ~。これでも十種の王の一人なんですから。」
「これでもは、余計な気がするんだけど…。」
レイナは今まで他国に泊まったことがなく、この対応にかなり困惑していた。
「レイナ様とナターシャ先輩は、お先にお風呂でも楽しんできてください。」
「ナズナさんは、一緒に行かないの?」
「はい。私はご主人にご連絡などをしなければならないので、お先に楽しんできてください。」
「じゃあ、レイナさん。早くいきましょう。高級な旅館の温泉なんてなかなか入れないですよ~。」
「そ、そうだね。じゃあ、ナズナさん行ってくるね。」
レイナとナターシャが去った後、一人部屋に残ったナズナは少し暗い顔をしながらつぶやいた。
「…。ナターシャ先輩、気遣ってくれたんですね…。」
数十分後、温泉でのぼせたナターシャが、レイナに背負われながら帰ってきたのはまた別のお話し…。
次の日。
「朝食も食べ終わったけど、今日は何をする?」
「カイ様のご連絡だと、白様が戻ってくるのは3日後になるようです。」
「3日後か~。それまで何もしないで過ごすのもいいね~。」
「ナターシャ先輩は、礼儀のお勉強なんていかがですか~?」
「それだけは勘弁してください。」
「せっかくだし、街を見て回らない?」
「それはありですね。であれば、街の名所などを見て回りましょう。」
こうして、レイナたちは獣人国の名所各地を回ることになった。
武闘会場や庭園・噴水公園などを見て回り、最後に街を一望できる展望台に来ていた。
時刻は16:00を示しており、もう夕日が沈み始めていた。
「いや~。広い土地ですね~。歩くだけで疲れちゃいましたねー」
「どこも丁寧に管理されていて、いい国だったね。私も参考にしなくちゃ。」
「レイナ様なら、いい国が築けると思いますよ。」
「へへ、ありがとう。」
そんな中、背後でとある話し声が聞こえてきた。
「二丁目のお子さんも攫われたらしいのよ。」
「また人さらいなんて、物騒になったものね。」
レイナはその話を静かに聞いていたが、ナターシャとナズナは少し青ざめた顔をしていた。
「二人とも!?どうしたの?」
「いや、レイナさん大丈夫ですよ。ちょっと疲れているだけです…。」
「レイナ様は気にしなくても大丈夫ですよ…。」
2人の言葉遣いは明らかに不穏な雰囲気を醸し出していた。
しかし、これ以上は踏み込んではいけないと感じ、レイナはこれ以上聞くことができなかった。
3人はそのまま旅館へと戻り、レイナは観光の疲れから意外とすぐに眠ってしまった。
ナズナとナターシャは、レイナが寝ていることを確認すると、少し離れた場所で座って話を始めた。
「…ナズナちゃん。大丈夫?」
「一応、大丈夫です。」
「嘘は良くないよ。手が少し震えているじゃん。」
「気づいていましたか…。」
「で、どうする?調べてみる?ナズナちゃんが関わりたくないなら、私は動かないよ。」
「…。子供が関わっています。すぐにでも動きましょう。」
「わかった。じゃあ、私は明日の昼頃まで調査してくるね。」
そういうと、ナターシャは静かに部屋から退出していった。
翌朝、レイナが起床するとナズナがすでに起きておりお茶を飲んでいた。
「ナズナさん。おはよう…。」
「レイナ様、おはようございます。」
「ナターシャさんがいないようだけど、どうしたの?」
「ナターシャ先輩は、お買い物に出かけていきました。お昼ごろに戻るらしいです。」
「そうなんだ。」
レイナはナズナと共に朝食を食べた後、一人朝風呂に向かった。
「ふー。お風呂にはいれるなんて、お父さんには感謝しかないね。」
レイナの身体は、特殊素材でできており錆びないようになっている。
レイナは湯船につかりながらも、少し考え事を始めた。
「(ナターシャさんとナズナさん、明らかに何か隠しているよね。でも、聞きづらいな。どうしようかな。)」
レイナが朝風呂中、部屋にナターシャが調査を終えて戻ってきた。
「ナズナちゃん、戻ったよ。」
「お帰りなさい。どうでしたか?」
「短期間だったから少ししか情報集められなかったけど、やっぱり胸糞悪い話だったよ。聞く勇気はある?」
その時だった、部屋に勢いよくレイナが入ってきた。
「レイナさん!?」
「お、お帰りなさい。」
「ただいま!じゃなくて、2人とも何を隠しているの?」
「正直、レイナさんが触れていい案件じゃないです。」
「すみませんが、この一件にレイナ様を巻き込みたくありません。」
「二人とも、本当に僅かだけど体が震えているよ。そんな状態で、見過ごせるわけないよ。」
その言葉に、ナターシャとナズナは言葉を返すことができなかった。
レイナは二人の前に座ると、自身の本心を打ち明けた。
「二人だけで悩むことないよ。私も一緒に相談させて?」
「レイナさん…。」
「レイナ様…。」
レイナの言葉に、少し悩みながらも2人は過去のことを少し話し始めた。
「レイナさん。私たちは、元奴隷です。」
「ナターシャさんたちが奴隷!?」
「巨大人身売買組織で売られていた奴隷として、働かされていたんですよ。」
「私は娼婦として売られていて、その時に四肢を欠損してしまいました。」
「ま、まさか、その手袋…。」
「はい。この義手を隠すためのものです。」
ナズナが手袋を外すと、そこには機械でできた精巧な義手が出てきた。
普段はメイド服であまり見ることはできなかったが、足にも精巧な義足ついていた。
「そんな中、ご主人によって助け出されたんです。その時のご主人とてもかっこよかったんですよ。」
「私は、御主人様に命を救ってもらいました。あの時のご恩は一生をかけて返していくと心から決めたんです。」
2人の衝撃の事実を知ってしまい、情報処理が追い付かなかったレイナは、少しの間考えをまとめて、今回の事件に関して話し始めた。
「わかってきた。それで昨日『人さらい』って言葉に反応を示していたんだね。」
「私たちのような悲劇を生み出してほしくない、という思いから私たちのみで行動いたしました。」
「だとしても、少し相談に乗ってほしかったな…。」
「申し訳ないです。そういう事情があり、私は独自で街に出向き調査をしていたんです。」
すると、ナターシャは今回の人さらいに関する調査票を差し出した。
「この組織は、この地域の貧困地域の子供を攫って臓器売買をしてました。」
「となると、攫われた子供は…。」
「ご想像通りです。本当に胸糞悪い話ですよ。」
ナターシャは珍しく苦虫を噛み潰したような顔を浮かべていた。
「この組織、アジトはわかってるの?」
「大体の場所は絞れてます。」
「レイナ様、いったい何をなさるつもりですか?」
「この組織、潰そう。」
こうして、レイナたちは人身売買組織のアジトへと襲撃をかけることになった。




