第4話:修行
零とナターシャが人間国へ向かって2日後、2人は自宅へと帰還した。
時刻は午後2時となっており、少し暖かい気温であった。
玄関前では、ナズナが玄関の掃き掃除をしていた。
ナターシャはその姿を見た瞬間、すぐさまナズナに飛びついた。
「わぁ!ナターシャ先輩!?」
「ナズナちゃーん。ただいまー。」
「お帰りなさい。一体どうしたんですか?」
ナズナはかなり困惑しており、ナターシャはナズナに引っ付いたまま離れない。
まさにカオスな光景となっていた。
「ナズナ。ただいま。」
「ご主人様、お帰りなさいませ。これはどういう状況でしょうか?」
「送迎者にヴァリスがいてな、それに耐えられなかったかもしれん。ナターシャやっぱり、きつかったか。」
「正直に言うとそうですね…。はぁぁ~ナズナちゃんの尻尾フワフワ~。癒されるぅ~。」
「ちょっと、ナターシャ先輩!尻尾は弱いので、そんなに揉みほぐさないでください~。」
「ナズナ、すまない!しばらく、付き合ってやってくれないか?」
「そんな!?ご主人様、助けてくださいよ~。」
困惑するナズナとそれに引っ付いているナターシャを尻目に、そそくさと家に入っていった。
リビングに入ると、お昼を食べ終えお昼寝中のアクがいた。
「(む?アクが寝ている。起こさないように今はそっとしておくか…。)」
零はゆっくりと音を立てないようにドアを閉めると、自室に荷物を置きに向かった。
荷物を置き終わった零は、アクを起こさないために少し離れた場所にある修練場に向かうことにした。
修練場に着くと、道着を着たレイナが空手の練習をしていた。
「レイナただいま。」
「お父さん、お帰りなさい。」
「今日も鍛錬しているのかい?無理のし過ぎは良くないぞ。」
「ちゃんと休息しているし、お父さんの言いつけはちゃんと守ってるよ。」
「そうか。ちゃんと休めているなら、大丈夫だな。」
「でも、出力調整がうまくできなくて、サンドバックを全部破壊しちゃったんだ…。」
零が見渡すと、修練場の内部は破壊されたサンドバックがいくつも転がっていた。
その破損レベルは、サンドバックを支える金属製の支柱までもが折れていたほどである。
「流石のパワーだな。しかし、出力調整か…。」
「うん…。どうにも手加減がうまくできなくて連撃の練習ができないんだ。」
「そうだな…。(レイナほどのパワーに耐えられるサンドバックは後程開発するとして、今日の対処をどうしたものかな…。)」
零は少し考えると、一つの妙案が思いつきレイナに提案した。
「よし!じゃあ、私がサンドバックの代わりとなろう。」
「え?お父さんがサンドバックになるってこと?急にドMになっちゃった?」
「レイナ…。悪意がない純粋な心配なのはわかるが、それ心に突き刺さる。まぁいいや、私が対戦相手になろうということだ。」
「本当!?やったぁ!ねぇねぇ、早くやろうよ!」
「じゃあ、少し着替えてくるからレイナは準備運動をしていなさい。」
「はーい!」
零は修練場に設置されている更衣室で道着に着替えると、急ぎ足でレイナの待つ修練場へと向かった。
修練場では、レイナが戦闘態勢で待ち構えていた。
「準備運動は済んだかい?」
「うん!結構念入りにギアとかの調整をしたよ。」
「自分自身でメンテナンスができるようになっていて、嬉しいよ。」
「お父さんに頼りっきりだと、成長できないからね!」
「ハハハ。いつか追い越されるかもしれんな。」
そんな会話をしながらも、零は準備運動をしていた。
レイナにはその動作一つ一つに、異様なほどの圧力を感じていた。
「さて、こちらも準備完了だ。さあ、どこからでもかかって来なさい。」
「よーし。一気にフルパワーで行っちゃうよー!」
レイナは、最善の結果を見つけるために内部コンピュータを駆使し計算を始めた。
しかし、その計算結果はすぐに計算不可能と出てしまった。
その結果にレイナは疑問を持ち、零の様子を集中して観察した。
「(あれ?これ隙が無い?)」
「どうした?攻めてこないのか?」
「(ヤバすぎでしょ!隙がないなんて…。だったら…。)」
レイナは覚悟を決め、一気に踏み込み正面から攻めた。
そのスピードは、人間の動体視力を凌駕するほどである。
その勢いのまま、零の懐に潜り一気に拳を振りぬく。
「(いきなりフルパワーで殴る!)」
「いい速度だ。だが…。」
直撃の直前、零は半歩後退しその攻撃をギリギリの間合いで回避。
そのまま、レイナの腕を掴む。
「(しまった!掴まれた!)」
「さあ、地面に転がるぞ。」
次の瞬間、レイナの視界が一回転した。
受け身こそとれたものの、レイナは地面にたたきつけられてしまった。
「(ヤバッ!追撃が来る!)」
「遅い。」
零は倒れているレイナに向かい、手刀を首元で寸止めした。
「ま、まいりました…。」
「ごめんな。大人げなかったかもしれんな。」
「正直、何が起こったかわからなかった…。私からすると、攻撃がすり抜けて、そしたら地面に転がされていた感じだもん。」
「レイナの攻撃は直撃したら、流石にただではすまなそうだったからな。回避してから合気の技術で転がしたって感じだ。」
「な、なるほど。(回避って本当に動いていたの?予備動作が一切なかった…。)」
レイナの眼は人間の認識できない速度まで認識できるため、普通であれば見えるはずなのに零の動きは一切見えなかったのである。
レイナは零に手を指し伸ばされ、立ち上がった。
こうして、零とレイナの模擬戦が終了したが、零は思うところがあったようでしばらく悩んでいた。
「ウーム。パワーとスピードはいいんだけどな。」
「どこがダメだった?」
「ふりの大きさ…かな。今のレイナは、少し力のみに頼りすぎている。一撃一撃に対する隙が大きすぎて、種族王レベルであれば簡単にカウンターをとることができてしまう。」
「それが克服できれば、お父さんにも勝てる?」
「どうだろうな。レイナの成長次第かな。」
しばらく考えていた零であったが、咄嗟にある人物のことを思い出した。
「適任なやつがいたわ。」
「適任って誰?」
「獣人族種族王の鈴奈 白だよ。」
「白さん?お父さんの話だと、あの人無茶苦茶強いんだよね?」
「あぁ、最強格の1人だよ。明日あたり獣人国に行ってみるか?」
「行きたいけど、確か明日、お父さんはお母さんの病院に付き合う予定だったよね?」
「あぁ、その通りだ。よし、明日はナターシャとナズナの二人を付き添わせるとしよう。」
こうして、レイナとナターシャとナズナは獣人国に向かうことになった。
しかし、まさかそこで面倒な事象に巻き込まれることになるとは、この時の3人は想像すらしていなかった。




