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AI少女、今日も成長中!  作者: 回路屋
第1章:日常篇
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第2話:業務

朝食を食べた後、レイナは1階に増設されている自身の執務室で機械国(きかいこく)の書類の処理を行っていた。

「これは、貿易品の売り上げ報告書ね。ナノ合金の売れ行きが好調のようね。」

機械国では、ナノ合金という特殊な金属を製造し貿易することで、他国家との関係性を築いている。


そんな中、執務室の扉がノックされた。

「レイナ様、ナズナです。よろしいでしょうか。」

「どうぞー。」

すると、お茶を手にしたナズナが入ってきた。

「レイナ様、お茶をお持ちしました。」

「ナズナさん、いつもありがとう。」

「いえいえ、これもお仕事ですので。」

ナズナは生真面目な性格なので、普段から全員に毅然(きぜん)とふるまっている。

レイナは、もっと仲良くお話したいと思っているが、なかなかうまく前に踏み出せず停滞状態が続いてしまっているようだ。


「いつも言ってるけど、私には気を遣わずもっとフランクに話してもいいんだよ?ナターシャさんみたいに。」

「ナターシャ先輩は少しフランクすぎると思います。」

「それが、ナターシャさんのいいところなんだけどね。」


そんな話をしていると、ナズナのスマホが鳴った。

ナズナはレイナに少し会釈すると、執務室の隅のほうに行き電話に出た。


「(このタイミングで電話かー。おそらく、お父さんだろうな~。)」

レイナはもらったお茶を飲みながら、ナズナが電話を終えるのを待った。

そのお茶は、エルフ国産の高級茶葉が使用されており、お茶の苦みも少なく飲みやすい一杯であった。

「(ナズナさん、お茶入れるの上手だな~。今度教えてもらおうかな。)」

レイナがそう考えていると、ナズナが戻ってきた。

しかし、その様子は先ほどとかなり一変しており、かなり落ち込んでいる様子であった。

彼女の耳は垂れ下がっており、全身から負のオーラがあふれているように感じるほどであった。

これにはさすがのレイナも驚きを隠せなかった。


「な、ナズナさん?どうしたの?」

「…先ほど、ご主人様からお電話をいただいたのですが…。」

「やっぱりお父さんか。」

「急遽、人間国(にんげんこく)に出向くことになって、その付き添いはナターシャ先輩になったんです。」

「な、なるほど。ということは、ナズナさんはお留守番ということですか?」

「そういうことですね…。」

ナズナは、零についていきたかったらしいが、アクのこともあり留守番と言われてしまったのである。


「(えぇー…お父さん何してくれてるの…。ナズナさんって、ほんと繊細なんだから…。また私がフォロー係じゃん…!)」

「私どうすればいいんでしょうか…。」

「お、お父さんは、ナズナさんに信じてお留守番命令を出してくれたんだと思うよ。」

「本当でしょうか…。やはり私は役立たずのゴミ屑同然…。」

どんどんと話していると、ナズナの負のオーラが強くなっているような気がするほどであった。

「そんなことないよ。ナズナさんはしっかり者だから、お父さんも期待してるんだと思うよ。」

レイナは立ち上がりナズナの手を取って話し続けた。

「ナズナさんは、お父さんの右腕。だからこそ、お母さんの護衛という重要な命令をしてくれたんだと思うよ。」

「重要な命令…。」

「うん。だからさ、今日はお母さんと一緒にお話ししながら過ごそう?」

「レイナ様…。」

こうして、レイナは仕事を切り上げナズナのメンタルケアに当たることになった。


一方そのころ、人間国へ向かう零とナターシャは人間国の送迎車の中にいた。

だが、その車内は異様なほど気まずい雰囲気が流れていた。

送迎車には、二人以外にも運転手ともう一人の男が乗っていた。

その男の名は、ヴァリス・ガルディア。

鍛え上げられた鋼の肉体を持つ人間族(にんげんぞく)種族王直属の武闘派である。

「(まさか、ご主人とヴァリスさんが鉢合わせるなんて…。雰囲気がヤバすぎる…。これはナズナちゃんだったら卒倒してたかもしれない…。)」

「ヴァリス。やはりお前が送迎担当とはな。」

「お嬢からの命令だったから仕方なくだ。正直あんたには会いたくなかったんだがね。」

零とヴァリスは2年前に本気の殺し合いに発展して以来、犬猿の仲とまで言われているため、この人選にナターシャは正直恐怖を感じていたほどだった。


「あいつのことだ、おそらくこれを機会に仲直りして欲しい魂胆だろう。」

「ええ。まさにその通り。」

「(拝啓、ナズナちゃん。この車乗らなくてよかったね…。私はもう生きた心地がしなくなってきたよ…。)」


ナターシャの精神がすり減らされている頃、レイナとナズナは事情を話しアクを交えてお茶会をすることになっていた。

アクにひとしきり悩みを話したナズナは先ほどよりも、元気になっているように見えた。

「(流石お母さん。ナズナさんのことよく理解してるなー。ナズナさんの耳が元に戻り始めてる~。かわいい~。)」

「なるほどね~。あの人のことだからナズナちゃんのことを思ってのことだと、私も思うわ~。(おそらくだけど、送迎者にヴァリス君でもいるんじゃないかな~?)」

「そうでしょうか…。それであれば、嬉しいのですが…。」

「そうですよ。私だって、ナズナさんがいてくれるだけですごく助かってるんだから。」

「そう言っていただけるだけで、ありがたいです。」

「大分、負のオーラがなくなってきたわね~。よかったわ~。」

「そうだね。元気になってきたみたいで本当に良かった。」

「お二方私のために、ありがとうございます。」


ナズナの落ち込み事件は、レイナとアクにより僅かな(わだかま)りこそ残っているものの何とか解決することができた。

しかし、人間国に向かう送迎者内のムードは悪夢そのものであった。

武闘派二人に挟まれていたナターシャは、人間国の道中残り約1時間は生き地獄であったと後に語った…。


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