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夕日が沈んでいる

作者: ミドリヤマ


父が死んだ。

父は、脳腫瘍を患っていた。


鮮明に、覚えている。

父が死んだ日では無い……それよりも、もっと昔。死ぬ、二カ月程の昔である。


医者から「余命は、持って半年程かと」と言われていたので、当然の事ながら、覚悟はしていた。

しかし、病院からの帰りの車の中で、脳が揺れるような、激しく殴られたような、そんな感覚に陥った事を、覚えている。


そう。二カ月前。

父は、家族皆で、家のベッドで看病する事になっていた。

医者から、勧められたのだ。もう、病院では、手の施しようが無いのだと。


覚えている。あの日は、父の顔が、白かった。未だ死んでは居ないが、彼の喉に繋がれた空気孔をカパリ…と開き、チューブを挿し込み、そして酸素を送り込む。

でなければ、死んでしまう。


_毎週、一人になれば、ふと、涙が溢れた。学校に行き、友達が羨ましく、そして妬ましくなって行った。

登下校中。救急車のサイレンが鳴っていれば、胃がひっくり返った様な感覚になり、気分が悪くなる。


暗いあの日のことが、父が、死んだ後も…度々、私の眠る夢に浮かんで来る。


二カ月前の、あの日の夕日は、びっくりする程に、大きかった。

赤くて、モヤモヤとしていて


「お父さん、夕日、大きいね」


「ああ」


父も、その日の夕日を、共に見ていた。

次に私は、父と同じ方向を見つつ、嗚咽した。


まだ、医者から言われた"半年"は過ぎ去って居ない。


恐ろしかった。目眩がして、夕日を、私の目に入れたく無かった。


「泣いとるのか?」


私は父が、果てしなく怖い。父も、私の事を情けない息子だと、思っていたのだろう。


「葬式では、泣くなよ」


「お前は跡取りなんだからな」


確か、夕日が完全に沈むまで、私は窓越しで、外を眺めていた。

ひどく気分が悪い。目が腫れたような感触である。



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