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7、あとがき
栢野から連絡を受けたのは、淀の河津桜が咲き始める三月の初旬だった。
それはAさんが死んだという話だった。どうやら、Aさんの事を、栢野は一応、気にはしていたらしく、栢野の祖母が在宅、つまり自宅へと帰った後も頻繫に様子をうかがっていたらしい。それは監視のようでもあったが、ある種の栢野が見せる不器用な優しさだったのかもしれない。
が、そのAさんも遂に病状が悪化したそうだ。
もともと寝たきりの老人でもあったAさんは、ある日、傾眠傾向、つまり、眠っている時間が長くなるようになった。
それに伴って、ベッドを移ることになったそうだ。
そう。
あの、窓際のベッドに移ることになった。
そして、すぐに、息を引き取った。
おそらく、まだ、あのベッドはそこにあるだろう。
また、次の患者が、入所者が、利用者が、すぐに死ぬかはわからない。




