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さよならだけが愛だった  作者: 大木戸 いずみ
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 私たち、初対面だよね?


「さぁ、どうだっけな」


 なんだ、その意味深な言葉は……。

 間違いなく初対面だ。幸助くんのような人を忘れるわけがない。他人に興味はないが、このオーラを放っている人間は一度会っていれば嫌でも一生覚えているはずだ。


「変な男」

「……どうも」


 ……扱いにくい男。幸助くんに人を惹きつける魅力があるのはよく分かる。

 けど、実際に関わると面倒かもしれない。鑑賞対象ぐらいが丁度いいって感じなのかも。


「城崎さんになんて言うの?」

「幸助くん、シスコンだからやめといた方が良いよって言うよ」


 私がそう言うと、ハハッと声を上げて幸助くんは笑った。

 その笑顔に私は目が離せなくなった。こんな風に笑うんだ……。全校生徒がきっと幸助くんの笑顔の破壊力にやられるだろう。

 これはなかなか罪な男。本当にあまり踏み込み過ぎない方が良い。このまま、フェードアウトするのが正解だ。


「シスコンか~、まぁ、悪くない」


 幸助くんは笑みをこぼしながらそう言った。


「幸助くんって、意外とさ」

「うん」

「かまってちゃん?」


 私の言葉に、彼は固まった。

 ……失言だったかもしれない。けど、言わずにはいられなかった。

 一匹狼のように見えて、実は誰かと絡んでいたいのかもしれない。……なんでそう思ったのかは分からないけど、なんとなくそう思った。


「は?」


 これでもかってぐらい、彼は眉間に皺を寄せた。

 相当気分を害させてしまったようだ。人は本当のことを言われると不機嫌になるらしい。

 ……つまり、図星?


「だって、わざわざお姉さんの暗い話を出してくるって、構ってほしいからなんじゃないの?」

「お前に俺の何が分かるんだよ」

「ドラマみたいな台詞、幸助くん面白いね」

「あ? 馬鹿にしてんのか?」


 私に対する嫌悪感が露骨に表情に出ている。

 なんだか、映画のワンシーンの気持ちになってきた。友達の好きな人に、私は一目見た瞬間心奪われた…………わけではないな。

 だが、私の奥底に眠っていた何かが目を覚ましたのだ。

 とにかく、その人物に私は今とんでもない形相で睨まれている。


「友達の代わりに俺に彼女がいるかどうか聞いてくるし、人を馬鹿にするのも大概にしろよ」

「じゃあさ、お姉さんがトラウマかどうか知らないけど、それを梨穂子に重ねるのも失礼だよ」


 私が冷静に言い返してくるとは思わなかったのか、幸助くんは少し驚く。

 体育館裏で、なんと殺伐とした雰囲気。私たちが去った後、ここで告白しようと思っている生徒がいたら、気の毒に思えてきた。


「あ~~、説教? だる」

「……幸助くんって、思ってたよりもガキだね」


 思ったことをすぐに言葉にしてしまう私も私だが、ここまできたからには言いたいことは全部言わせてもらう。

 勝手にもっと大人だと思っていた。あまりにも他の高校生とは違う雰囲気を放っていたから。

 ……けど、喋ってみたら意外と普通の男子高校生かもしれない。


「殺されたいか?」


 その声に私は背筋に悪寒が走った。

 

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