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…………なぜ?
今の状況が全く分からない。何故このような状況に?
「俺とタイマンする気なの?」
思ったより低い声だ。
私は目の前にいる笠原幸助に戸惑いながらも、現在の状況を脳内で整理する。
どうやって幸助くんを呼び出すかという策で私が「果たし状でも書いちゃう?」って言ったのが、見事に採用されたのだ。
そして、それを同じクラスの子に彼の元へと届けさせた。
果たし状を渡した割には一切そんな話題は出なかったから、彼は果たし状を貰ったことを誰にも言っていないのだろう。
というか、幸助くんって友達いるの?
今、思い返せば、梨穂子が聞きたいことを私が聞いて、その為にさらに他の子を使ったって……。
「俺達、面識ある?」
「ないです」
「誰?」
「B組の峯川奈子です」
「……奈子ちゃんは俺と喧嘩したいの?」
優しい口調だが、圧を感じる。けど、苛立っている様子は感じられない。
黙ったままは失礼だから、何か答えないと……。
「とりあえずさ、体育館裏に呼び出すのはあんまりおすすめしないよ」
「なんで?」
「ここって多くの生徒が告白してきた素敵な場所だろ。そんなところで喧嘩するのは良くないだろ」
「愛を伝える場を血で染めるのも悪くないのでは?」
体育館裏にも色々な物語があっていい。
良いことも悪いことも詰まらせておいたほうが、体育館裏にも味が出るだろう。
「……まぁ、確かに」
納得してくれるとは思わなかった。
……もしかして、幸助くんは良い人なのかもしれない。わざわざ、あんなふざけた果たし状にも付き合ってくれるぐらいだし。
「で、本当の要件は?」
少し面倒くさそうな顔をする幸助くんに私は出来るだけ簡潔に「彼女いる?」と聞いた。
こういうのは遠回しに聞く方が駄目だ。
「何? 奈子ちゃんは俺のこと好きなわけ?」
「いや、全然」
「は?」
顔をしかめて当然だ。
私でも同じような反応をする。……けど、ここで梨穂子が幸助くんの恋愛事情を気にしているということは口が裂けても言ってはいけない。
「もしかして、誰かに聞いてって言われたとか?」
ご名答。……てか、普通察するか。
しかもこれほどの容姿だ。今までも何回か同じようなパターンがあったに違いない。
「本人が直接聞いてこいよって思ってる?」
「その通り」
「けどさ、それ聞いちゃうと、もう告白になっちゃうじゃん。だから他人使うんだよ」
「玉砕する勇気のない奴なんて願い下げだけどな」
「まちごうない」
私は思わず頷いてしまった。
梨穂子に頼まれたとて、私はこんな仲介役をしたくなかった。断り切れない私も悪いのだけど……。
けど、私が思っている恋愛は自らぶつかることだ。それが自分の恋愛感情とも真摯に向き合っていると思う。
まだちゃんと恋愛したことない私が言うのもなんだけど……。
「じゃあ、なんで引き受けたんだ?」
「友達だから」
「友達だからこそ、こんなことしない方が良いだろ」
幸助くん、君が正解です。
「ぐうの音もでません」