ぷりんちゃん
しばらく、トレントを追っ払っていたんだけど、よ、良かったぁ……。トレントはたまに大きいのもいたけど、ほとんどは足ぐらいまでの大きさだったのであんまり怖くなくなっていった。私とサダクで武器を振り回すだけで追い払うことが出来た。学生が出来るバイトだからかな、でも、ゲーム通りなら……?ちょっと嫌な予感……。
「ハァァッ!」
そ、それにしても私の目の前で武器を振り回してトレントを追っ払ってくれるサダクってば格好いい。私を守りながら戦ってくれているのも分かった。
「そっちに一匹行ったぞっ!」
「う、うん……。お、おりゃぁぁ……」
彼が追い払えなかった敵は、杖を振り回して追い払った。
「また、行ったぞ。数が多いから魔法で追っ払えっ!」
私はうんと頷くと炎の魔法を声で発しながら杖を使ってその文字を書いた。
<<ワ・ユ・ヤ!>>
最後の文字を書き終わると描いた場所から小さな炎がトレントの足下に飛んで行く。魔法を唱えている私って凄いかも!
トレント達は木の魔物だけあって、炎は怖いらしくすぐに逃げていった。
「お、良いぞっ!何処がポンコツなんだよっ!」
「えへへ」
ふふふっ!私は初期魔法ぐらいなら唱えることが出来るようになっていたのだ!
いや、ごめんなさい。この杖のおかげです……。なな、なんと、この杖は魔力回復機能があった。ポンコツ魔道士のために作られたような便利な杖!名付けて……
「"プリンシパルスタッフ"のお陰だよっ!略して"ぷりんちゃん"魔法回復薬は要らなかったかも」
日本語だと"校長の杖"なんだけど、ふふふ、サダク君は気づくまい。
「ぷりんちゃんっ!?んだよ、その名前は……。それは校長がくれたんだったよな?」
そうそう。この杖は何故か校長がくれたんだよね……。
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「レイラ君、君はとても賢いらしいね。それに依頼を多くこなしているようではないかっ!」
「は、はい、なんとか。勉強は楽しいですし、バイト……じゃなくて、依頼はこなしているとお金も入るので、そのチャリンチャリンって、あぁ、その今のは私の勝手な擬音でした……。いずれにしても、入学させてくれた校長先生や、他の先生達のおかげです」
「ふははははっ!愉快な生徒だっ!我々は、君には期待しているのだよっ!」
「は、はぁ~」
何でだ?とはこの時は思った。
「しかし、魔力が貯まらないという体質には困ったものだ」
「そ、そうですね……。でも、魔法回復薬を飲めばなんとか……」
「ふむ、それでは身体が持たないだろう。これを見たまえ」
「こ、これは……?」
目の前に差し出されたのは不思議な杖だった。
何て言えば良いんだろう。杖の先に付いているいくつかの水晶が互いに共鳴し合っていて底知れない魔力を発しているのが分かった。
「……すごい杖ですね。魔力が溢れています」
「そうなのだっ!この杖は持っているだけで自動的に魔力を回復させるのだよ。これで少しは魔力が貯まるだろう。これを君にあげよう。存分に使いたまえぇっ!」
ものすごく高そうな杖だったから、くれるって言われて驚いちゃった。
「わ、私にくださるっ!?い、いえいえ、こんなの頂けませんっ!」
「他の生徒に内緒にするのだぞ」
すると、校長は杖をポイって私に投げてきた。
「えっ!えっ!えっ!」
私は受け取らざるを得なくて、そしたら校長はそのまま何処かに消えてしまった。
「ちょ、ちょっと校長先生っ!!い、居ないっ!もう、どういうことっ!?はぁ~、良いのかなぁ……」
校長がこの杖を渡した理由は後で分かったけど、この時は分からなくて何でこんなに親切なのかちんぷんかんぷんだった。
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ともかく、サダクは剣を振り回し、私はぷりんちゃんで炎の魔法を飛ばしてトレント達を森から追いやっていった。
「あっちいけっ!」
<<ワ・ユ・ヤ!>>
トレント達が後ろに下がったら彼らが嫌がる匂いを出すキノコを置いていった。キノコは地主さんがくれたんだけど……も、ものすごく臭い……。制服に匂いが染み込んだらどうするんだぁ。
「居なくなったねっ!やった~っ!」
「そうだな」
ともかく、これである程度追いやったんだけど……。
「や、やばいぞっ!下がれ、レイラッ!」
「あぁ……」
私は唖然としてそれを見つめた。やっぱり来ちゃったよ。トレントちゃん達のボス、アルラウネだった。
ワ 我は
・
ユ 炎を
・
ヤ 放つ!




