表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の二:サダク編:キュンキュンブーメラン
93/175

分岐点

 バイトには色々なものがあった。何かの採集に、魔物退治に、隣町へのお届けに、服を作るっていうバイトもあった。ゲーム通りだったけど、リアル体験だから違和感だらけ……。


 あ~、そう言えば、海で魚を集めるというバイトには驚いたなぁ。魚の方じゃ無くて海にね。

 海岸に到着して水平線まで見えた時はちょっと感動した。こんな岩肌の天井しか無い場所だったけど、海ってあるんだって。水平線のその先は壁らしいけど……。

 それよりも波に違和感があった。波打ち際のザワ~ってのが無いの!なんだこれ?って思って海に触ったら、ゼリーみたいだった。すっごい柔らかいゼリー!!これじゃぁ泳げない……。正確には泳げるけど、めちゃくちゃ疲れる!だからかもしれないけど、海水浴をしている魔族は一人も居ない。

 川や湖は普通?の水だけど、海に流れてくるとこんなになっちゃうらしい、よく分からん。こんなところだけど、魚は泳いでいるし、海の底では人魚族という魔族も居るらしい。


 まぁ、ともかく、勉強もこなして、バイト(実技)もこなして、学校生活に慣れた頃だった。教室での勉強が終わって、いつものバイトタイムがやってきた。私は掲示板のある食堂に向かっているところで声をかけられた。


「お、おい、レイラ」


「な、なあに?」


 まさかと思ったけど、振り向いたらサダクだった。遂にこのイベントがやって来た。分かっていたけど本当にやって来るなんてなぁ。


「い、一緒に魔物退治に行かないか……」


 そうやって誘う割りにはそっぽを向いていて、だけど、顔は赤くなっているのは分かった。ちょっと可愛いかも。


「北西部の森でトレント退治って依頼だ……。お、お、お前的には、"ばいと"だっけか……」


 私が依頼のことをバイト、バイトって言うから合わせてくれたのね。


「いつ?」


 私は返答を聞かなくても分かっていたけど意地悪しちゃった。


「こ、これからだよ」


「フムアルとかシェラとかイェッドは?」


「い、いないよ」


 これも知ってたけどね。


「二人だけ?私はポンコツ魔道士だよ?」


「お、おれが守ってやるから大丈夫だ」


「ふ~ん……」


「んだよ、駄目か?い、忙しいなら、ま、また別の時に……」


「いいよ~」


「おっ!!おぉ、そうかっ!!」


 私がOKしたときの彼の顔!凄く嬉しそうだった。


「ちょっと待ってね。魔法回復薬を買ってくるから。この杖があっても油断できないからね」


「おう、北の校門で待ってるっ!」


 一旦、サダクと分かれた後、購買部に向かったけど、その途中でギエナに会った。何故かイェッドと一緒だった


「おんやぁ、慌てて何処行くんじゃぁ?」


 ギエナは何故かニヤニヤしていた。目つきがいやらしい……どういうこと?


「べ、別に……。ちょっとサダクと一緒にバイトに行くの」


 隠すのも変だし、だけど、ちょっと恥ずかしかった……。


「はぁ、二人だけで何処にぃ?」


「ま、魔物退治よ、北西の森に……」


「ほ~、ほ~。えへへへ~、ひぇひぇひぇ……」


「な、何よその笑い」


「なんでもないったらりん」


「うん」


 イェッドは何故かじっとこちらを見ているだけだったんだけど、また変なことを言った。


「その選択にするんだね」


「せ、選択?」


 そう、この選択はサダクコースと呼ばれている分岐点。彼と一緒に行くのを選択すると、彼と、そ、その親密になっていくんだけど……ん、あれ、なになに?まさか、この子はゲームの事を知っている?私が不審がっていると回復薬を出してきた。


「ほら、僕の回復薬が余っているから上げるよ」


「むむ?……こ、こんなに?く、くれるの?お金払うよ」


「お金なんていらないよ」


「そんなわけいかないでしょ?というか貧乏学生でしょ、あなたって」


「ぐっ!痛いところを……、でもまぁ、アルバイトを結構こなしているから少しは貯金も出来ている。良いからそれ持って行ってよ」


「う、うん……、そ、それなら」


 貯金がある?相変わらず穴だらけの制服を着ているくせに演技が下手だなぁ。ん?今、アルバイトって言った?


「頑張ってね~。あたしはこいつと話があって行けぬのだよ」


「う、うん」


 正直言うとギエナが来たらどうしようかと思っていたんだけど、もしかして気遣われた……?ギエナもこの分岐を知っている……?そんなわけないか。

 この二人には違和感があったけど余り考えていられなかった。サダクを待たせているから急がないと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ