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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の一:最大魔力999の私は魔物に囲まれてもイケメンモテモテスローライフを送りたかっただけなんですけど?
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許しちゃう

 入学式は程なくして開かれた。レイラが瞬間移動で初めて来た講堂が入学式の場所だった。


 講堂に入ったレイラは、周りを見渡すと、まさにRPGの魔物が勢揃いといった感じだった。生徒達はおよそ六十名ぐらいいた。


(う~ん、二足歩行の魔物が多いんだけど、ゲームと違ってリアルで見る魔物って迫力がありすぎる……。怖いかも……)


 魔導学校の生徒は全国各地から集まっていて、そのほとんどが寮から通っていた。一部、ポラリスから通う生徒もいた。


(しかし、私は目立ちすぎる……。普通であることが普通じゃ無い……変な世界に来ちゃったなぁ)


 すでにレイラが禍族まがいぞくということは学校中に知れ渡っていた。しかし、彼女のそばには最強蜘蛛女のギエナが居て、食堂で彼女の力を見た生徒達はレイラに近づけなかった。


「ギエナのお陰で誰にも襲われなくなった、ありがとう」


「ううん、それは良いんだけど、あたしが目立ってしまったよ~……」


「あはは……ごめんね。でも助かってる」


「う~、最強と思われているんじゃまいか?んなことないのに」


「最強ナイト様が近くにいてくれて嬉しいっ!」


「え~っ!あははっ!」


「ふふっ!」


 しばらくすると、校長のコカブが前に出て来たため、講堂はしんと静まり返った。彼は演壇に立つ前にレイラをチラリと見て、その視線が合ってレイラは下を向いた。


(い、イケメンおじさん……じゃなくて……どうしてこっち見た?)


 コカブは講堂で一同を見回すと話を始めた。


「入学おめでとうっ!新入生諸君っ!……」


 彼の話は最強の魔法を使えるようになれとか、それで国に貢献せよとか、そう言ったよくある話だった。レイラは少し眠くなってしまっていたが、話の最後で彼は意味の分からないことを言ったので彼女は目が覚めてしまった。


「……今回は実に楽しみなのだ。今まで居なかった者が加わっている。生徒諸君よ、新しい世界を共に作ろうではないかっ!!」


(今回?今年じゃ無くって?魔物の世界は一年ごとに入学式があるわけじゃないのかな……?)


 そして、"今まで居なかった者"に自分はもしかして含まれるのではないかと思った。


(ゲームでこんな事話したっけ……?もっと簡素だったような?まぁ、良いか)


 校長の話が終わると新入生は教室に行く事になった。

 講堂の壁にはクラス分けが書いてあって、およそ一クラス二十名ぐらいだった。レイラはギエナと同じ教室だったことに安心した。


「ギエナと同じ教室で良かったぁ」(この子はゲームにいないから心配しちゃった……)


 一人で不安だったレイラにとってギエナは、すでになくてはならない存在になっていた。


「だね、寮の部屋で決まってるのかいな?」


「どうだろ?ね、早く行こうっ!」(しかし、何で文字が読める……。もう良いかぁ……)


「そだね~っ!行こうっ!」


----- * ----- * -----


 二人が教室に入ると、まず天井の高さに驚いた。目の前には教壇が見え、その後ろには大きな魔石で作られた透明な黒板が見えた。魔法で文字を書くのかなとレイラは思った。生徒が座る席は、後ろまで階段状になっていて、大学の大きな講堂のような構造だった。


 レイラ達が座ろうとすると、すでにサダク、フムアル、シェラが居た。


(まぁ、ゲーム通りか……)


 そして、驚いた事にイェッドも彼らの近くに座って談笑していた。嫌われると思われていた彼だったが、サダク達と仲良くなっていた。


(あの新キャラ君も同じ教室なのね。すでにサダク達と仲良くなってるし……意外とコミュ力高い?あれ、制服がボロボロになってるっ!あっ!ギエナにやられちゃったからかぁ……)


 サダクはレイラを見つけると大声で呼び寄せた。


「おい、レイラ、ギエナ、こっちこいよ。イェッドも反省してるってよ~」


「はいは~い」


 レイラは大きな声で反応したが、ギエナの顔はまだ険しかった。


「はぁ、反省ねぇ……」


 イェッドは頭を掻いて苦笑いをしていたが、立ち上がると頭を下げた。


「レイラ、申し訳ないことをしました、ごめんなさいっ!」


 ギエナはあきれ顔だった。


「まぁ、いいかぁ……。今回で二回目だし、どする、レイラ?」


「許しちゃうっ!許しちゃうっ!」


「やさしいねぇ、レイラはっ!」


「それに、すでに私のそばには最強戦士もいるしね」


 レイラはそう言ってギエナにウィンクしたが、戦士と聞いてサダクは完全に勘違いをした。


「戦士っ!お、俺のことかっ!?」


「あ、もう一人居たね、ギエナ」


「三ツ目族戦士じゃまいか」


 サダクはギエナにそう言われて、龍族に勝った蜘蛛女が居たなと思いだした。


「お、俺じゃないのか……」


 サダクは肩を落としたが、レイラは優しくフォローした。


「最強戦士が二人もいるから安心だよ~っ!」


 サダクは苦笑いし、ギエナ達は大笑いし、イェッドはまた頭を掻いて苦笑いをしていた。


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