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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の一:最大魔力999の私は魔物に囲まれてもイケメンモテモテスローライフを送りたかっただけなんですけど?
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合流

 二人の話は弾んでいたが、しばらくするとギエナのお腹が鳴った。


「あっ、お腹空いたね……。夕食の時間」


 レイラは、ギエナが人間のお腹を押さえたので、その下の蜘蛛のお腹は鳴らないのかと疑問に思った。しかし、自分もお腹が空いているのを感じて、まぁいいかと思った。


「私もお腹が空いたな、六時だもんね」


 レイラも時計を見てそう答えたのだが、それ以前に壁に付けてあった時計の文字盤を普通に読めた自分に驚いた。


「あれ、これって六時っ!?」


「自分でそう言ったじゃまいか」


 ゲームではアラビア数字だった文字盤の文字は見たことの無い文字に代わっていたからだった。


「で、でもね、あの文字盤……変な文字じゃない?」


「はぁ、共通語の文字でしょ?覚えるの大変だったぁ」


「きょ、共通語?ね、ねぇ、私は何語を話してるの?」


「どしたんじゃ、共通語でしょ?」


「きょ、共通語……?」


「変なの。まぁ、食堂に移動しようよ。お腹空いたよぉ」


「そ、そうだね」


 ギエナの後を追って部屋を出たレイラは、共通語とはどんな言葉なのかと思った。

 恐らくは魔族達が多種多様な種族でも話せるように作られた言葉だと想像できたが、それを自分は誰にも教わってもいないのにも関わらず話せていた。


(日本語を話しているつもりなんだけど……)


 訳が分からないと思ったが、そのまま部屋を後にした。


----- * ----- * -----


 レイラとギエナは食堂に向かって廊下を歩いていたのだが、周りの生徒達の攻撃的な視線が気になって仕方が無かった。レイラは自分が禍族だからだと思った。しかし、こんなにも早く噂が広がるのかと不思議でならなかった。


「う~ん、レイラってば嫌われてる?マガマガ族だからかぁ?」


 ギエナもこの雰囲気に圧倒されているようだった。


「多分……、街中で騒ぎになっちゃったからかも……?マ、マガマガ族っ!?」


「うへ~、そうだったのかぁ」


 彼女達が不安に思っていると、急にコボルト族の男子生徒が近づいて来て大声を上げた。


「おまえが噂の禍族だなぁぁぁっ!」


「え、え~っと……そ、その……」


 レイラが答えようかどうか戸惑っていると、その生徒は突然レイラをめがけて殴りかかって来た。


「絶対に許さないっ!種族の恨みを思い知れっ!!!」


「ひっ!」(こんなイベントなかったぁぁ……)


 レイラはとっさに身を守ろうとしゃがみ込んだ。ギエナも彼女を守ろうと糸を出して男を止めようとした。


「なんだぁ?いきなりすぎて糸が間に合わないぞぉ……」


 しかし、その糸は間に会わず、魔族の拳がレイラに当たる直前、その手を止める者がいた。


「あっ、君はっ!?」


 それは、あの三ツ目族のサダクだった。


「サ、サダクッ!」


 男を睨め付けているサダクの後ろ姿が大きな自分を守る壁のように見えてレイラは胸が熱くなるのを感じた。


(ちょ、ちょっと……、か、格好いいんだけど……)


 コボルト族の男は、腕を強く握られていて、その痛みで顔をゆがませた。


「て、てめぇ、何するんだっ!」


「お前こそ、俺の友達に何しようとしたっ!」


「種族の恨みだっ!こ、こいつのせいで俺の種族は絶滅しかけているんだっ!」


 サダクは睨みをきかせたまま、握った腕を一旦、放した。男子生徒はその勢いで後ろに下がったが、怒りは収まらないのかレイラを睨んだままだった。

 すると、男を説得しようとする知的な声が聞こえた。


「いつの時代の話か分からないけど、この子が何かしたわけじゃないだろ?」


「あんっ!なんだてめぇはっ!」


「言いがかりは止めた方が良いと言っているんだ。入学前に問題を起こすと寮にも住めなくなるよ」


 レイラは、またも自分を守ろうとしてくれる赤目エルフ族の男子生徒の声に聞き惚れてしまった。


「シェラッ!」(頭よさげで憧れる……)


 しかし、男子生徒は、まさに獣のうなり声を上げて、また飛びかかろうとした。


「うぅぅぅ……。禍族って聞いて黙っていられるかっ!」


 そして、今度は魔力のかかった声が聞こえた。


≪ 彼女は関係ない、無視するんだ。食堂に行こう ≫


 その声を聞くと男性生徒は棒立ちになり、そのまま食堂に向かって歩き始めた。


「そうだな、彼女は関係ない……関係ない……。食堂に向かおう」


 その魅了魔力のかかった声にレイラは誰かすぐに分かった。


「フムアルッ!」(良い声……、とろけそう……)


 それは角族のフムアルだった。彼の魅了のかかった声によって男子生徒は彼の言いなりになったのだった。


「三人ともありがとうっ!」


 気味悪がっている生徒達の視線に気分が落ち込んだレイラは、三人に再び出会って笑顔を取り戻せた。それはサダク、フムアル、シェラも同じだった。


「レイラ、心配したぜ?何処に行ってたんだよ」

「そうだよ、突然消えてしまったんだからね」

「もしかして、君もここ(魔導学校)に入るのか?やれやれ騒がしい学生生活になりそうだ」


「そうなのっ!校長さんに勧められて寮に住むことになったのっ!」


 レイラは今までの経緯を三人に説明し、同室のギエナを紹介した。


「あっ!紹介するね。同じ部屋になったアラクネ族のギエナ」


「えへへっ!ギエナって言いますっ!三人とも女子を守る格好いいナイトみたいだったよぉ~。よろしく~っ!」


「おう、よろしくな。俺は……名前長いからサダクで良いぜ?」

「僕はフムアル。よろしくね。ナイトか、僕はちょっと違うかなぁ」

「私はシェラで良いよ、ギエナ」


 レイラはこうしてサダク、フムアル、シェラと合流した。


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