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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の一:最大魔力999の私は魔物に囲まれてもイケメンモテモテスローライフを送りたかっただけなんですけど?
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雑談

 ギエナは、自分がまき散らした糸をまとめるとレイラの向かいのベッドの上に自分の足を器用にまとめて座った。


「えへへ、お待たせっ!お話ししようっ!」


 レイラは自分は君を待ってないぞと思ったが、彼女の屈託無い笑顔にそんな疑問はどうでも良くなって話し始めた。

 ゲームに存在しないギエナは、同世代の女の子でもあって話も弾んだ。彼女は東の方の洞窟に住んでいるようだったが、魔力の勉強のために父親にせがんで入学させてもらったのだと言った。


「勉強熱心なんだね」


「んなことないよぉ~。しかし、君は魔導学校の事をよく知ってるみたいだね、突然、入学が決まったんじゃまいか?」


「えっ!い、いや~……」


 レイラはそう言われて顔が青ざめた。ゲームの設定を覚えていたため全然疑問に思っていなかった。


「な、名前から魔法を教えるのかなぁって……、ま、魔法器が凄いとかって言われたし……」


「そかぁ」


「そ、それよりも足に触ってもいい?」


「なんか話を変えられた気もするけど、いいよ~」


「そ、そんなことないよぉ……(汗)」


 ギエナは、アラクネ族で下半身が蜘蛛で上半身が人間の魔族だった。ゲームで見ればただのドット絵だったが、本物の八本ある足には毛が生えていて気になっていた。

 レイラが折りたたまれた足に触らせてもらうとフワフワしていて気持ちよかった。


「ふわふわだね」


「んだね。皮ふは堅いけど毛は動物みたいなんだよねぇ。……しかし君って尻尾も角も鱗も無いし、何族なの?」


 そう言われてレイラはまたも顔が青ざめた。


「ま、禍族まがぞくって言われてる……」


「……えぇっ!君って禍族なの?」


 ギエナも街の人と同じように反応したのを聞いてレイラは落ち込んだ。禍族についてはゲームで同じ設定だったが正直実感が無かった。しかし、嫌われるとはこういうことかと身に染みて分かった。


 「人間」がこの世界では忌み嫌われる「禍族」として扱われている。レイラはどうしてこういう設定だったのか思い出そうとした。


(ここは人間が住んでいる母星と呼ばれる星の衛星、つまり、月だったはず。母星には人間達が住んでいて、何かにはずみで月の地下、つまり、魔族の国に来てしまう設定だった。確か一番初めに転送されてしまった女性、フレイヤが魔族達に嫌われてしまったため……だったような?あれ、どうして嫌われたんだっけ……)


 レイラは設定をすっかり忘れてしまっていた。


「禍族ねぇ……」


(嫌われるって本当にやだなぁ……)


 レイラは、ギエナからも嫌われてしまうのかと思うと悲しかったし、残念だった。同室でこれからやっていけるのか心配だった。


「……そ、そうよね。ごめんね、同じ部屋で……。で、でもね、言われているように不運は呼び込まないから……」


 ギエナはレイラの説明を聞いてキョトンとした。


「不運を呼んじゃう?君の種族ってそういう能力を持ってるん?」


 レイラはギエナの反応に座っているにもかかわらず転びそうになってしまった。


「……ま、禍族を知らない?」


「うん、知らないよ」


 彼女は禍族を知らないだけだった。


「……え、え~っとね、なんか突然現れて不運を呼ぶ特別な種族らしいよぉ。……私は何故、自分で説明しているのかなぁ……」


「へぇ~……んな風に見えないけどなぁ。前髪パッツンで可愛いじゃまいか。あたしも君の種族が良かったぞぉ」


「そ、そう……?ふ、不運は呼ばないからね」


「それなら良いじゃまいかっ!自分の事を悪く言ったら良くないぞぉっ!」


「ギエナァァッ!うぅぅぅ……」


「ど、どど、どうしたぁ」


 レイラはギエナに思わず抱きついてしまった。そして、彼女が同室で良かったなと心から思った。


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