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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の一:最大魔力999の私は魔物に囲まれてもイケメンモテモテスローライフを送りたかっただけなんですけど?
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レイラちゃん、キノコの国に立つ

 ある街の片隅にその病院はひっそりと建っていた。彼らの住む街は比較的、復興が進んでいたが、その病院はままならない設備のためか前時代では容易に治せる病気も治せなかった。

 その病室の一室で牧玲羅まき れいらは、退屈そうに窓から外を覗いていた。


(はぁ~……。麗しの女子高校生……のはずなんだけど、合格した途端、入院が決まってしまった……。なんて可哀想な女子高生だろ……。昔は手術で治せる病気だったみたいだけど、今は治せないとか……、哀れかな……)


 入院の日々は退屈だったが、リモートで授業を受けていると変な男子生徒が見えて笑ってしまった。


(な、なんだあの人、自慢げに鉛筆出してるっ!すご~く久々に見た。何に使う気なんだろ……。にしたって、ネットは発達してるのに何で手術は発達していないのかなぁ……)


 リモートカメラを操作しながらクラスメイト達を観察した。牧は学生生活を満喫している彼らが羨ましくて仕方がなかった。


(う~、友達も作りたかったし、カフェやカラオケにも行きたかったし、ネットでバズった曲を歌いたいっ!鼻歌でも看護師さんは怒るんだもんなぁ……。文化祭も面白そうだなぁ……。アンティゲームをネタにしたんだっけ、こういうの好きっ!)


 彼女の運命は残酷だった。

 文化祭準備が始まる頃、容体が急変した。意識が朦朧とする日が増えて授業もまともに受けられなくなった。そんなある日、看護師が彼女の元に来たときだった。


(あ、あれ、何か変だな……。身体が動かないぞ……。か、看護師さん……)


「先生っ!先生っ!牧さんがっ!」


(あれ、どうして叫んでる……んだろ……)


 牧は看護師の前で突然、意識を失った。


----- * ----- * -----


 牧が意識を取り戻した時、不思議な事に病室では無く、草原にうつ伏せで寝ていた。目の前に見える草には見たことの無い虫が動いていた。その虫が近づいて来たので急いで身体を起こした。


「わっ!あ、あれ?」


 そして、周りを見ると、草木の他に大小様々なキノコが生えているのも分かった。空を見上げるとそこには青空は見えず、岩肌が見えた。そこにはまばらにコケが太陽のように輝き地面や自分を照らしていた。


 牧はそれを見て愕然とした。


(……わ、私知ってる……。ここがどこか知ってる……。ここは中学校の時に流行った乙女ゲームの世界……?な、なんで?も、もしかして、これは噂の異世界転生ではっ!?ゲームの世界に転生するなんて小説やなろうの話かと思っていたのに……)


 これはゲームを開始した頃の状況に似ていた。主人公が突然、母星と呼ばれる星から魔界に飛ばされてきた場面のように思えた。


(そうか、ここはオープニングの……)


 つまり、次に起こることも予想できた。


(あぁ、ほらほらやって来た。緑の肌の子鬼達、鼻が長くて半裸で目も黄色で猫目で気持ち悪いったらっ!)


 ゲームの展開通り主人公をゴブリン達が小さな棍棒を持って牧の周りを囲んだ。やがて、そのうちの一匹が彼女に向かって襲いかかって来た。しかし、牧は恐れるどころか、ふんぞり返ってそれらにゴブリン達に右手を向けた。


「ふふっ!君たちなどは私の敵ではないのだぁ。ここがスリーキュウの世界なら魔法が使えるはずぅっ!」


 彼女は的に炎の魔法を飛ばそうと念を込めた。


「食らえぇぇ、ファイアぁぁ~っ!」


 しかし、手の平からは何も出ず、プスッという音と共にかすかに煙が出ただけだった。


「げへぇ~?そ、そうだったぁ……。魔法が使えるのはもっと先だったぁ……。あっ!あっ!あぁぁっ!リアルゴブリンキモいっ!こ、来ないでぇぇ~っ!」


 彼女を今にも食わんとするゴブリン達が襲いかかった。しかし、その時、一筋の剣筋が見えて、それと共にゴブリン達は真っ二つに切られたり、腕を切り落とされたりした。ため、恐怖して逃げていった。


(う~、昔のことだから忘れてた……。そうだ、この人が助けてくれるんだった……)


 彼女の前には一人の少年が剣を納め、心配そうに彼女を見つめた。ゴブリン達は殺されまいとして逃げ去ってしまった。


「大丈夫か?」


 彼女はその少年を見たのは始めてではなかった。


(あ、あぁ、そうそう、この人だ……。リアルでもやっぱ格好いいなぁ……。声も心地良い……)


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