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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド壱の二:嫌になったら生まれ変われば良いんじゃね?
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余話:奪われた身体達

 退学が無くなって一安心の津名は、今日は遅刻もせず、教室に到着して座っていた。

 すると、とある人物が登校してきて、日高は彼に気づいて驚いた。


"あっ!ほ、螢田君っ!?な、中身は……誰じゃいなっ!?"


"元の螢田君だよ"


 螢田は、転生者に乗っ取られていた。


"はぁ~、戻れるんだ……って、何で知ってるんっ!"


"あはは……"


 クラスのSNSで津名の文化祭イベントについて罵詈雑言を吐いてしまった彼はクラスで孤独になっていた。しかし、身体を取り戻し、孤独に負けてはならないと登校した。無論、彼に話しかける者はおらず、一人ぼっちで椅子に座っていた。


"ん?津名氏?"


 そんな彼の元に津名は立ち上がると近づいた。


「螢田君、おはようっ!」


「お、おはよう……。そ、その節は、ありがとうございました……」


 螢田は何故か津名にお礼を言った。


"ななな、なんの節?"


"彼を元の身体に戻して上げたんだよ"


"な~、君のお陰ぇぇっ!?いつの間にそんな仕事をしていたじゃっ!"


 日高も驚いていたが、クラスメイト達は津名が螢田に話しかけたので驚いていた。津名は彼によってSNS上で叩かれていたのを知っている者も居たからだった。誰かがそれを教えようともしたが、津名は彼との会話を続けた。


「螢田君のアイデアのお陰でフリマは大成功だったよっ!」


「う、うん……、よ、よかった」


"なんじゃ、あれって津名氏の考えじゃ無かったんか~いっ!"


 日高のツッコミに大寬が遠くから心の声で説明した。


"あったりまえでしょ~っ!フリーマーケットって言葉すら知らなかったんだからっ!"


"津名氏なら、ありえんてぃ~じゃまいか……"


----- * ----- * -----


 文化祭開催の直前に津名と大寬は、身体から追い出された螢田の霊体と話をしていた。


"君の身体は取り戻せるから……"


"か、身体を取り戻せるの……?"


"さすがに酷いっ!からね。ただ、文化祭の最終日まで待っていて欲しい"


"分かった……。一体僕が何をしたっていうんだよ……。あいつ最悪な奴だな。君の考えた出し物は面白そうなのにさ"


"あ、ありがとう……。そうだ、文化祭でやりたいことはあるかい?"


"そうだなぁ、フリーマーケットはどう?校庭が広くて良いかなって思ったんだ"


"えぇ?ふりーまーけっと?それって何だい?"


 ここまで黙っていた大寬はまたかと思った。


"バカねっ!後で調べなさいっ!"


"わ、分かったよ……"


 津名はさすがにタブレット操作にも慣れてすぐに調べた。


"ふむふむ、なるほど。家にある不要品を売るための市場って意味ねっ!良いかもっ!んじゃ、企画してみるよ"


"近所のスーパーにも参加してもらえば嬉しいかも"


"はぁ~っ!なるほどっ!それは凄いっ!買い物が出来るね"


----- * ----- * -----


 津名が話しかけたことでクラスメイト達は螢田への考え方を変え始めた。


「なんだよ、お前否定的だったのに津名と話していたのかっ?」

「そうじゃん、以外じゃね?」

「すごいひねくれ者かと思ってたよ」

「良い奴だったのね、参加すれば良かったのにさ~」


「ぼ、僕は……」


 螢田が不参加だった理由に答えきれなかったので、津名は彼をフォローした。


「少し身体を壊していて、ネガティブだっただけだよね。身体も治って良かったね」


「何だ、そうだったのか」

「変だと思った~っ!」

「そっか~」


 元の仲間達も彼を囲んで元の仲間に戻り始めていた。よく見ると螢田は津名を見つめ、泣いていた。


"いやはや、螢田君、良かったのう"


"栢山という人も何とか戻れたんだけど……"


"ふえっ!?ほ、他にもいたの……被害者って……"


 津名は栢山についても日高に説明した。


----- * ----- * -----


 栢山は身体を乗っ取られると、社会的な問題を引き起こされ家庭は崩壊寸前にまで追い込まれていた。津名は彼のところに行くと、特別な計らいで何とかすると持ちかけた。


「酷い、これはさすがにやり過ぎだよ……。辛いよね、君の気持ちも分かる……」


「あ、あの人は一体どうしてこんな事をするんだ……。身体を奪った上にあんな迷惑をかけるなんて信じられない……」


「心配しなくても大丈夫だよ。今回は因果律が宇宙間を超えてしまっているからね。特別な計らいをするつもりだよ」


「しかし、君は身体を取り戻すことも出来るって言ったよね……」


 栢山の霊体はそこまで言うとじっと黙って、深呼吸をし、意を決した。


「ぼ、僕は……こんな運命でも受け入れるつもりだ……戻してほしいんだっ!」


「えぇっ!?う、受け入れる?本当に?関係の無いカルマを背負うことになるよ」


「お、お母さんを助けなければ……心配なんだ」


「母親が心配だから……?し、しかし……」


「僕だけがお母さんを助けられる……。君なら出来るんだろっ?お願いしますっ!身体を取り戻してくださいっ!」


「わ、分かったよ……。この星の天使達にサポートしてもらうようにお願いする。しかし……、君は何て凄い人なんだ……」


----- * ----- * -----


 栢山の事件は、日高も生前に聞いていた。


"えぇ……、あの事件もあの賢者様の仕業だったのかいなぁ……。しかし、栢山君は元の身体に戻ったと……あんな状態の環境に……"


"彼の家族は母親の実家近くに引っ越した。まだ復興もままならない場所だったけど、それが良かったのかも。変な情報が入ってこないから……。家族の関係も修復して、しかし、学校には通わないで復興関係の仕事をしているよ"


"強い人じゃいな……"


"人間の力はすごいね。この星の天使達にも随分サポートしてもらった"


"そうかぁ……"


"だけど、それより前の身体はもう戻れなかった。宿った悪魔の影響が長すぎて、酷い人生になってしまっていた。申し訳ないけど、諦めてもらった……"


"うぅ……、こんなのってないよぉ……"


 日高はこんな恐ろしい人生はあるんだろうかと思った。そして、勝手に身体を奪われて人生を潰された人達を思うと辛くなってしまった。


"泣かないで……、この星の天使に天国には連れて行ってもらったから"


"そうかぁ、良かったぁ……グスッ"


----- * ----- * -----


 その日の帰り道、日高が何かを思い出した。


"あっ!もしかして、まきさんも学校に来ていないけど、転生者的な人にやられてしまってる?"


"牧さん?"


"同じクラスの子だよぉっ!名前だけみんな知ってるんだけど、誰も彼女とは会ってないっていう子なのだよっ!"


"……分かった。その子は別問題……"


"へっ?別問題……、はぁ、また別のお仕事かね"


"あはは……"


2024/05/22

最後におまけを追加

2024/06/11

名前を変えました(台町→牧)

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