異世界転生の秘密②
津名は、自分を襲ってきた霊体に地球に来る前の姿について話し始めた。
「以前居た場所は、ロールプレイングゲームみたいな世界だったよね?」
"馬鹿な……、ゲームのような世界だと……?"
「手から炎や水なんかも出せたでしょ?魔法みたいに」
"魔法……、魔法が使えた……?"
「つまり、剣と魔法の世界と言えば良いかな。所謂、異世界と呼ばれる場所だった」
"オ、オレは……」
霊体は徐々に元の記憶が思い出されてきた。
「ワ……シ、ワシは強大な魔力を持った賢者だったのだ……"
その姿も元の老人の姿になっていた。ただし、我々と異なるのは瞳が三つある点と頭から角のような触手が生えている点だった。
「あなたの本当の名前は……、この声帯だと発音できませんね……、えっと、賢者だったあなたはとある城の宝物庫で転生の魔法が刻まれた水晶を見つけました」
"そうじゃ……、手に入れた。ワシは身体が震えた……、若い子どもに転生すれば若返ることが出来ると分かったからだ"
「しかし、あなたの誤算は二つあった。一つは、宇宙を超えてこちらの当時赤ん坊だった松田浩一に転生してしまったこと」
"あぁ……"
「もう一つは転生した時、記憶が消えてしまったこと」
"そうじゃ……、記憶を持ったまま転生するはずだった……。それがワシに有利に働くはずだったのに……"
「そんな特別な人生はズルすぎるよ。皆が同じスタートラインから始めるから努力が意味を持つのに」
"あ、あぁ……、私は何故、失敗したのじゃ……?なぜ、ここに私は来たのじゃ……?"
彷徨う魂に対して、津名は彼の転生を邪魔した者の正体を教えた。
「宇宙の闇に存在する凶悪な悪魔……、邪神だよ」
"邪神?邪神じゃと?"
「そう……、邪神によって妨害されたんだよ」
"何故じゃ、何故、ワシのところにそんなそんな奴が来たんじゃ……"
「あなたの魂の力が強いから目を付けられてしまったんだ。転生の水晶に刻まれていた転生の魔法を邪神が書き換えたんだ」
"そ、そんな馬鹿な……"
「邪神はこちらに来てもあなたに付きまとっていたはず……」
"あ、あの女だというのかっ!!!あ、あいつが邪神だったのか……、なんていうことじゃ……、し、しかし、お前は何故そんなことを知っているのだ……"
「これが僕の仕事だからね」
"仕事だと……"
「あなたたちのような宇宙の法則を破壊する者を正すのが仕事でね」
"な、なんじゃと?破壊?"
「宇宙の法則を破壊する者は是正される……、これも宇宙の浄化作用……」
"それがお前の仕事……、はっ!?"
津名の姿は光り輝き、背中から気流が流れ出て羽のようだった。右手には光の剣がまばゆく光っていた。
"……そ、その姿は何なのじゃ……?ま、まるで天使……?"
「邪神はお前が子どもだったから騙しやすいように女の姿になった。あなたを散々騙し続けて何度も転生するように促したはず」
"あの女は私が抜けた後の身体が欲しいと言っていた……"
「それも欺くための手段の一つだったんだ」
"だ、騙されていた……"
「あなたの居た宇宙は特殊で、その物理法則、つまり、あなた達が魔法と呼ぶそれを使うと、宇宙と宇宙をつなげる"穴"を開ける事が出来る」
"宇宙と宇宙をつなぐだと?わ、わしの魔法を使って……?"
「踊らされていたとはいえ罪深き愚かな魂よ」
振り上げた光の剣を見てその霊体は恐れおののいた。
"な、なにをするつもりじゃ……"
「お前の宿った身体がどうなったのか、知るが良い」
津名の剣が振り下ろされるとそれは霧のようなものとなって彼を包み込み、霊体が抜けた後の身体がどうなったかを見せた。
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一人目:松田浩一
憑依者:食糧難で餓鬼地獄に落ちた子ども
食欲が止まらなくなり、何でも口に入れるようになる。食べ物以外も食べようとするため仕方なく両親は食事を与え続ける。
医者にも診せたが原因は分からず、結果、身体動かせないほどの巨漢になり自分自身で歩けなくなる。その結果、現在も引き籠もり状態になる。
二人目:開成英之
憑依者:阿修羅地獄に落ちた殺人鬼
イライラすることが多くなり、街中はもちろん家庭内でも暴力を振るようになり、両親への暴力で刑事事件となる。
その後、少年院でも暴れ回って最終的には精神科に閉じ込められる。
三人目:栢山桂介
憑依者:イギリスで数十名の女性をレイプして色情に落ちた霊体
高校で女子高生を何名かレイプしたが、勇気ある女性の訴えで警察に捕まり、刑務所生活となる。
四人目:富水大輝
憑依者:戦国時代に数百人を殺した武者
父親のDVに反抗した際に殺してしまい、親殺しの罪で捕まる。




