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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド壱の二:嫌になったら生まれ変われば良いんじゃね?
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後夜祭

 T高校の文化祭も最終日を迎えて、後夜祭の時間となった。


 校庭のフリマは片付けられ、そこは生徒達がフォークダンスをする会場になった。校庭の真ん中にはキャンプファイアーもどきの立体映像が輝き、周りには紙吹雪や花びらやリボンが同じように立体映像として舞っていて、夕暮れと相まって幻想的な雰囲気を醸し出していた。


 フォークダンスの曲は流すだけではなく、吹奏楽部が軽音部と一緒に演奏していた。軽音部ヴォーカリストが手前勝手な日本語の歌もつけてライブのようなダンスホールのような雰囲気になっていて、自然と生徒達の気分は盛り上がった。


 炎の周りでは、男も女もここぞとばかりに好きな相手と踊れるように配置を考慮して加わり、別の者達は定番的な踊りなど関係ないのか勝手気ままに踊る者もいた。軽音部のファンは演奏している彼女らを応援していた。


----- * ----- * -----


 運営部のテントでは、腕を組んでふんぞり返りながら生徒会長の長田が鼻息を荒くしていた。


「どうだ、荒本っ!これが最後の締めくくりだっ!」


「あぁ、そうだな。お疲れさん」


 荒本は心の中でこれも企画としてはずっと続いているコピペだよなと思った。しかし、津名達が中心となった会議によって、吹奏楽部と軽音部の演奏と花びらなど演出が加えられていた。


(いやはや、こんなに盛り上がった後夜祭って今まであったか?頼もしい後輩達じゃねぇかよ、長田……)


 荒本がこんな事を考えていると、書記の吉田が出し物の人気投票の結果を立体映像にして、二人に差し出した。


「こ、これなんだけど……」


「おぉ、吉田っ!出し物の投票結果が決まったかぁぁ……、グッ?グググッ!?」


 その結果を見た長田は顔をこれでも無いぐらい真っ赤にしてゆがませた。荒本は吹き出してしまった。


「あははっ!完敗じゃないかよ、お前っ!!」


 長田は最後にはため息が出てしまった。


「はぁ~……、ガクッ……」


 荒本は、落ち込んだ長田の肩に腕を回し、少しからかってやることにした。


「ちゃんと発表できるか?俺が変わっても良いぜ?」


「ば、馬鹿な、出来るに決まってるっ!」


 憤慨した長田を見て、荒本はそう言うだろうと思った。


「あいよ、会長さんっ!」


 背筋を伸ばした長田の背中をボコッと叩いて、頼むよ、と仕草で示した。


「分かっているさ……」


----- * ----- * -----


 津名は、左腕も上がらないため、フォークダンスには加わらず遠くから一人で眺めていた。


(はぁ~、すごい演出に演奏だなぁ……。みんなも楽しそうだ)


 そんな一人ぼっちの彼に声をかける女性がいた。


「君は参加しないのかい?」


「あっ!とっきょ……。じゃなくて、こ、こんばんは……。少し用事がありまして……」


 彼の声をかけて来たのは蓮沼の祖母だった。


「やだよ、その名前、照れちゃうじゃないかっ!」


「す、すみません……」


「あははっ!直接、その名前で呼んでくれるのは貴方ぐらいかもしれないね」


「フリマお疲れ様でした。い、色々と並べられていましたが、売れましたか?」


「売上は、まぁまぁってところかね。昔のファンがたくさん来てくれたよ」


「で、ですか……。良かったです……」


 年の割に綺麗に輝く目で彼女は、津名をじっと見つめた。


「しかし、不思議な子だね。何故か君と居ると色々な事が思い出される……。もう何十年も前の話をね……、少し聞いてくれるかい?」


 彼女は空を見上げると、昔のことを話し始めた。


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