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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド壱の二:嫌になったら生まれ変われば良いんじゃね?
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その後

 津名と大寬はフリーマーケットの開かれている校庭に向かっていた。津名は様々に装飾された校舎を眺めて嬉しそうにしていた。


「嬉しそうね」


 大寬が声をかけると、津名は両手を上げた。


「そうだね、学校が一つの生き物みたいに生き生きとしているっ!まるでこの星のようだっ!」


 日高と大寬には、津名が学校の全てを掴もうとしているように見えた。


「何かを創るって事は宇宙のことわりの一つだよっ!コピペよりずっと良いっ!」


 津名がまたコピペを蒸し返したので、日高と大寬は慌てて周りに会長が居ないことを確認した。


"わうぅ、またそれ言っちゃうんか~い"

「そうよ、会長に喧嘩を売るようなこと言っちゃだめだって」


「あぁ、そうだった……」


「せっかく、会長にゴマすったのに意味が無くなるでしょ?」


「あはは……」


 津名は会長へのバカ丁寧な挨拶を指摘されて頭を掻いて苦笑いをした。


"そいえば、ワンタは色目を使って会長を誘惑していたんじゃまいか?"


 日高に色気を使ったと言われて大寬は何を言うかと憤慨した。


「使ってないわよっ!普通に挨拶しただけでしょっ!」


「そうだよね、笑顔を振りまいたりしてキャラ変わりすぎじゃない?」


 津名も同感だとうんうん頷いていた。


「あっちが本当のわ・た・しっ!」


"本当のまやちゃんは、ワンタじゃまいか?"


「麻帆ぉぉぉっ!ほっとに調子に乗りすぎっ!大体、話し方が変なのよ、あんたはっ!」


"ふぁんたっ!なにを唐突に言ってるんじゃ"


「それよ、それっ!なに、"ふぁんた"ってっ!"じゃ"、とか、"じゃまいか"とか何処の方言よっ!」


"ファンタスティックな事を言うワンタだと言ったのですぅぅ~"


「も~、いちいち変な言い方するっ!」


"言いがかりだっ!あたしは元気になって通常モードの話し方になっただけなのにぃっ!"


「知らないわよっ!」


 大寬がエスカレートしてきたので津名は彼女を押さえねばと思い始めた。


「大寬さん、声が大きいって……」


"ワンタこそ女神じゃないことは確かだいっ!"


「んが~~っ!ひ・だ・か・ま・ほぉぉぉっ!」


 津名は困り果てて頭を抱えるしか無かった。日高はあっかんべえをして更に煽っていた。


「もうすぐ着くんだから止めようって……」


----- * ----- * -----


 こんなくだらない会話をしていたので津名達はすぐに校庭に到着した。


「ほら、着いたよ……」


 そこには、事前に話していたとおり、フットサルのコートも使用されていて様々な出店があった。商店街のお店も多数出店していて、団子や、まんじゅうや、串刺しのフルーツなど、他にも自慢の料理を出していたり、コーヒーや紅茶など飲み物を売っているところもあった。スーパーの出店では軽食も売っていたり、アイスも売っていた。


 大寬はまだ日高をじっと睨んでいたので津名は仕事を思い出させようとした。


「ほらほら、問題が無いか確認しないと……」


「ふんっ!分かってるわよっ!」


 大寬の怒りは収まらなかったが、二人でフリマを歩いていると出店している人達から手を振って挨拶された。


「あら、お二人さんっ!これ持って行ってっ!」

「おう、津名か~。飲み物やるよ」

「まやちゃん、ほらこれ。食べたいって言ってたでしょっ!」


 商店街のフリマ出店に貢献したことで二人はすっかり有名人になっていた。大寬もさすがに笑顔に戻った。


「ありがとうございますっ!」

「調子どうですか?」


 二人は、出店者達から食べ物を貰ったり、飲み物を貰ったりとした。お土産が手に持ちきれなくなって、遂に最後のエリアであったフットサルのコートに到着した。すると、聞いた声に声をかけられた。


「おい、津名っ!」


 それはフットサル部の蓮沼だった。


「あ、蓮沼。そう言えば、フリマに出るって言ってたね」


「んだぜ?ばあちゃんが家にあるもんを出したいって言うから手伝ったんだよ」


「あぁ、おばあちゃん……か……」


 どうしたわけか、津名はその場に居る老婆を身体が凍ったようにじっと見つめていた。


「……ん、どしたんだよ、津名?」

「津名?」

"津名氏、どうしたん?"


 そして、急に津名は涙を流し始めて下を向いて腕の裾で涙を拭き始めた。その姿に大寬達もそうだったが、見つめられた老婆も困惑した。


「や、やだよっ!どうしたんだい、この子は?」


「う、うっ……、生きてる……、そうだね。良かった……」


「生きてるだって?津名、どういう意味だよ」


 蓮沼はその意味を聞いたが、老婆は思わず笑ってしまった。


「あはははっ!確かに私はいい歳だけどまだまだ元気で生きてるよっ!」


「い、いや……、何でも無いです……、申し訳ございませんでした……」


 謝りだした津名を見て、老婆は何処か懐かしさのようなものを感じ始めていた。


「……貴方、何処かであったかい?……そんなわけないよね、でも、どこか懐かしいんだよ、どうしてだろう……?」


「初めてですよ、とっきょさん。失礼します」


 そう言って、津名は何処かに走って行ってしまった。大寬と日高は慌ててしまって彼の後を追った。


「あっ、津名、何処に行くのよっ!し、失礼しますっ!待ちなさいっ!」


 取り残された蓮沼と彼の祖母はどうしたのだろうかと思った。


「ちょ、ちょっと……。わ、私の昔のあだ名を……?あ、あの子は一体誰なんだい?」


 老婆に取って懐かしい名前を何故か津名は知っていた。


「え、そうなのか?津名のヤツ、もしかしたら婆ちゃんのアイドル時代を知ってるんじゃないか?」


「やだよ、何十年前だと思っているんだい?知ってるわけないだろ」


「そうだよなぁ……。あいつホントに変になったなぁ」


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