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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド壱の二:嫌になったら生まれ変われば良いんじゃね?
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文化祭準備中!

 T高校、T中学校の文化祭開始まで約一ヶ月半月、すでに開始から二週間ほど経過していて、各クラスの準備も進んでいた。一方、文化祭委員会は学校全体に関わる準備を進めていて、生徒会はそれらを仕切っていた。


「あぁ、その絵ですがもう少し右側が良いです……そうだね、そこです。ありがとう」


 生徒会長の長田と副会長の荒本は、校門に装飾されたデザインの調整を美術部と行っていた。


「長田、未来感があってなかなか良いんじゃないか?」


「そうだな」


 長田は荒本にそう言われて改めて立体映像で装飾のデザイン図を見つめた。彼の手元には校門の縮小図と綺麗に装飾された絵が立体映像で写っていた。このデザインは過去のデザインをベースにしたものだったが、美術部が協力してテーマに合わせて大きくブラッシュアップされていた。


 荒本は長田が不機嫌そうにしているのが気になっていた。


「んだよ、まだ気にしているのか?」


 長田が気に入らなかったこのアイデアを自分の指示で出せなかった事だった。文化祭のテーマもそうだった。学校全体から募集して決めたが、それも自分の指示ではなかった。


 長田は、空中に移された看板に映されたテーマを見てため息をついた。


┌───────────────────┐

│    新未来は僕らが創る!     │

│   ~ 復興は僕らに任せろ ~    │

└───────────────────┘


 政府から仕事を貰うような大企業の社長をしていた父親から期待を受けていた長田は、T高校で生徒会長に自ら立候補し、将来への礎とするつもりだった。それが制服が穴だらけの貧乏生徒に仕切られてしまった。


「長田、いい加減にしろって。お前の指示がないと準備が進まないだろ?」


 荒本に声をかけられて長田は我に返った。


「"新未来"なんて変な言葉だと思ってさ」


「そうか?俺は良いと思うけどな。……んなに腐れるなってっ!」


「そうだな……、あっ」


 長田は荒本にそう答えると彼の後ろに津名が大寬と歩いているところが見えて、思わず声が出てしまった。同時にあんなボーッとしているヤツがしゃしゃり出やがってと思った。


 荒本は長田が自分の後ろに目線をやったので、振り向いた。彼も津名に気づいて声をかけた。


「おっ!津名じゃないかよっ!」


 津名はそれに気づくと顔を荒本の方に向けた。大寬も頭を下げた。


「フリマの準備はどうだ?」


「うん、地域に連絡したら参加者が30団体も集まったよ」


「マジでっ!すごいなっ!」


「これから校庭の区画整備に行くところだよ」


「そっか、よろしくなっ!」


 このフリーマーケットのアイデアも津名が会議を仕切って決めたアイデアの一つだった。テーマに合わせて学校と地域全体を盛り上げようと文化祭では校庭が使われないのでフリーマーケットにしてしまおうという企画だった。


「はぁ~、大寬さん、色気がやべえな……って、うわっ!お前、怒ってんの?」


 荒本は大寬の得も言われぬ美しさに見とれたが、それよりも仏頂面な長田を見て呆れてしまった。


「べ、別に何でもないさ……」


「盛り上がればいいじゃねぇかよ、なっ!お前が止まると文化祭も止まっちまうぜ?」


「分かってる」


 長田はそう言うとWBS(Work Breakdown Structure)を空中ディスプレイに表示して作業を見返した。すると、WBSを覆い隠すように各チームから長田にチャットが多く寄せられていた。


「ほら、見てみろよ。お前の指示を待ってるヤツがこれだけいるんだぜ?」


「……」


 長田はチャットを見つめたが、その内容よりも自分を振り返ってしまっていた。何て自分は器の小さい男なんだろうと。しかし、そんな自分を荒本はフォローしてくれていた。調整能力に長けたこいつを副会長にして良かったなと思って改めて感謝した。


 荒本をチラリと見て分かったよと長田は頷くとチャットの一つを選択してビデオ通話を開始した。


「あ~、お疲れ様です。この件は……」


 荒本はそれを見てホッとすると、校庭に向かう津名と大寬を見つめた。


「……ま、良い刺激になってるじゃねぇかよ、切磋琢磨ってか?あははっ!」


----- * ----- * -----


 津名と大寬は、校庭の隅に立ってフリーマーケットの区画をどうするか考えていた。


「ま、まずい……。30も入らない……、どしよ……」


 二人で何度も校庭を分割してみたが、どうやっても4区画足りなかった。


「だから予め調べておきなさいって言ったのにっ!上限を決めていないで募集するんだからっ!」


「あはは……」


 大寬から無計画ぶりを指摘されて、苦笑いで頭を掻いている津名を見つけた蓮沼がフットサルのコートから出て来て声をかけた。


「おい、津名っ!大寬っ!どしたんだよ?」


 県内強豪の彼らは文化祭も関係なく練習に明け暮れていて、蓮沼も汗だくになっていてタオルでそれを拭いていた。


「フリマなんだけどね……」


 津名と大寬は蓮沼にフリーマーケットで困っていることを説明した。


「あぁ、それならあそこを使えよ」


 蓮沼がフットサルのコートを指差したので津名は驚いてしまった。


「え、えぇ、それは不味いよ。練習するでしょ?」


「文化祭の時まで使うわけ無いだろっ!少しぐらい休ませろって」


 爽やかに笑った蓮沼を見つめて津名は涙を貯えた。


「そ、そうか……ありがとうぅぅ、うぅ……」


「泣くな~~っ!」

「な、泣くなってっ!津名、お前本当に泣き虫になったな……」


 大寬と蓮沼は二人して津名にツッコミを入れた。


「でも、ありがとうね。蓮沼君っ!」


「みんなには俺から話しておくからさ」


 大寬のお礼に蓮沼は手を振るとコートに戻っていった。


「うぅぅぅ……、みんな優しい……優しいよぉ~」


「はぁ~、ほら戻るわよ」



 大寬は津名の背中を押した。二人はクラスの出し物を確認するため、出し物を設営する教室に戻ることにした。


----- * ----- * -----


 出し物に教室を使ってしまうと授業が出来なくなるため空き教室を使って出し物を作ることにしていた。二人はその教室に入り、進み具合を確認したが唖然とした。


「え、えぇ……」

「んん……」


 出し物の配管工アクションゲームの絵画が全くと言って良いほど進んでいなかったからだった。


2024/03/21

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