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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド壱の二:嫌になったら生まれ変われば良いんじゃね?
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退学の日

 翌日の朝、津名が教室の席に着くと蓮沼が飛んできた。


「お、おい、津名ぁぁ~っ!昨日は大丈夫だったか?大寬がすげー力でお前を連れ去ったんだけど、何処に行ったか分からなくってさ」


「あぁ、ご、ごめんね……。大寬さんには、保健室に連れて行ってもらったんだ」


「そうだったのか」


「今日も登校できているから大丈夫っ!回復したよ」


「みたいだな、良かったぜ」


「ありがとう。そ、それでだけど、部活の方は止めようと思う……」


 津名は部活を続けることは、迷惑になると考えて退部を切り出した。


「分かってる……。残念だけど、お前無しでやっていくよ。お前は治療に専念してくれ……だけど、退部は無しな?あ・く・ま・で"休憩"だぜ?」


「おぉぉぉ……」


 津名は、待ってくれると言った蓮沼の友情に涙していた。


「あ、ありがとうぅぅぅ……、うぅぅぅ……」


 昨日、自分を見て応援してくれた部員達もいたことも重なって更に涙が溢れた。


「みんな……いい人だったし……、うわぁぁぁ……」


「な、泣くなってっ!」


 蓮沼はそう言うと津名の肩をポンと叩いた。


「グスッ……」


 すると、津名の気持ちも落ち着いた。


「落ち着いたか?んだよ、お前ってこんなに泣き虫だったか?」


「あはは……、そ、そういえば話は変わるんだけど……」


「ん?どした?」


「お婆ちゃんは元気?」


 津名の唐突な質問に蓮沼は意味が分からず戸惑った。今までの話の流れとは全く異なった質問だった。


「ば、ばあちゃんか?どっちも元気だぜ?」


「ごめん、お父さん方の方だった。元気なら良かった」


「親父の方のばあちゃんか……。だけど、お前、会ったことあったっけ?いや、俺んちの田舎に行ったことはないからねぇよな?」


「ははは……。元気そうなら良かった」


「変なこと言うなぁ。まぁ、いっかっ!ともかく、治ったら部活に戻ってくれよなっ!」


「うん、分かった」


 丁度、始業式開始のチャイムが鳴って、蓮沼は手を振りながら自分の席に戻っていった。


 今日は、主任教師は現れず、仮想教師が現れて出席を取った。


「全員いますね……」


 出席を取り終わると、声が変わって主任に代わった。


「……え~、みなさん、おはようございます。主任の香淀こうよどです。津名君、この後、職員室に来て頂けますか?」


「は、はい」


 津名はそう言われてドキッとしたが、すぐに理由が分かった。退学の話に違いなかった。


----- * ----- * -----


 職員室での話はすぐに終わり、津名は教室に戻ってきたのだが、誰もおらず津名は顔を青ざめさせた。


「だ、誰もいないっ?!異世界転生かっ!」


"あっ!あたしもボケてた。移動教室だった~。異世界転生って、君の時代だと教室ごと漂流するやつ、かずおのやつじゃないかい?"


「えぇっ!何処何処っ?!か、かずお?よ、よく知ってるね……」


 津名は、日高に案内されて美術室に移動した。

 授業はすでに始まっていて生徒達は教室にばらけていてペンを持って何かを先生からの説明を受けていた。この教師は仮想映像だが、リモートで教えているのだと後から日高に聞いた。


 ここは2つの教室を合わせたような大きな部屋だったが、その奥で大寬と珠川えんが津名にこっちに来いと手を振っていたので津名はそっちに移動した。


「どしたの二人とも?」


「どしたの?じゃないわよ、どうだったのよ」


 二人は津名から何かを聞きたがっているようにしていた。


「なにが?」


「何がって先生に呼ばれたでしょっ!……あっ!」


 大寬は感情が高ぶって声が大きくなった事に気づいて小声になった。


「(退学の話だったんでしょ?)」

「(そそ、どうなったん?)」


 大寬と珠川も退学の話と分かっているようだった。津名はその話を思い出して落ち込んだ。


「(文化祭の後までだってさ……)」


「(あぁ……、あと一ヶ月ちょっとかぁ)」

「(やっば……、どうするよ、まやぁ……)」


 二人の反応に津名は驚いてしまった。あれだけバカにしていたのに自分に同情していたからだった。


「(ちょ、ちょっと、どうしたのさ。あれだけバカにしていたのに……)」


「当たり前でしょっ!!あっ!ごめんなさい……」


 大寬はまたも声が大きくなって口を手でつぐんでシュンとなった。


「(あんたみたいになったじゃないのよっ!)」


「(自爆しておいてそのセリフ……。でも心配してくれてありがとう)」


 津名を心配しているのは珠川えんも同様だった。


「(んだよ~、せっかくODになったのにさぁ……)」


「(お、おーでぃー?)」


「(説明は麻帆にまかせるぅ~。とりま、私は戻るわ~。はぁ~、やっばげ~)」


 珠川は、そう言いながら友達のところに戻って行った。


"ふむ、ODは男のダチ……、つま~り、男友達のことかと思われるぞ"


"はぁ、そういう意味か……、現在語は難しい"


"現在語じゃない気もするぞい。あ、みんな絵を描き始めてる"


"えっ!そっか、美術の時間だったね"


 教師の説明を聞いていなかった二人は、周りの動きにすっかり置いてけぼりになっていた。


 振り向いた津名は、他の生徒達のやっていることについて、またも混乱しそうになって大声を出した。


「え、えぇ?なにこれっ!」


 結構な大声だったが、クラスメイト達はまたかと思って誰も気にしていなかった。


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