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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド壱の二:嫌になったら生まれ変われば良いんじゃね?
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半分ゾンビな貧乏憑依型宇宙人

 津名は、いつものように都内のT高校に向かって登校していた。その彼を筆頭に後ろには複数の女性陣がついていた。

 赤髪の女子高生は明らかに西洋人であり、瞳は緑色をしていた。同じように赤髪で緑目の10歳ぐらいの少女がその横でランドセルを重そうに背負っていた。肌の色は色白で長髪の女子高生は、気品が溢れているように見え、いかにも可憐な少女に見えた。更にもう一人、何処にでもいるようなミディアムぐらいの髪の長さの女子高生も居たが、不思議な事に彼女の身体は半透明だった。


「うん、おかしい……。これはおかしいって自分でも分かる……」


 津名はこの状況に独り言のようにつぶやいた。それを聞いた珠川すみは、男らしくない事を言う彼にあきれ顔になった。


「あぁ、しょぼい男だ。何がおかしいのさ、多様性とでも呼ぶことだな、貧乏少年」


「貧乏とか酷いっ!本当だけど……」


「大体、お前の左半身は死んでるようなもんではないか」


「うっ……こ、これはすぐに回復するっ!……と……思うんだど……」


 日高麻帆は、それを聞くとどういう事かと叫んだ。


「えぇ~、津名くんの左半分は死んでるのっ?!ど~りで左手でタブレットを操作しなかったわけだ~……しかし、どういうこっちゃいな?」


「日高さんにもバレてたか……」


「でも、歩けてるじゃないか~っ!大丈夫だよぉ~っ!」


「あはは……」


 力なく笑う津名を見て、実は情けない男だなと珠川すみは思った。


「えん、こいつにだけは惚れるなよ、余は許さんぞ」


「そうだね、お姉ちゃん。宇宙人だしねっ!でもさ……」


 "姉"に忠告を受けた珠川えんは、昨日の津名の姿を想い浮かべた。彼は見たことも無いような白いローブのようなものをまとい、白い羽も天使の輪のようなものも美しかった。


「昨日の"あれ"は、かっこ良かったなぁ……。ねぇ、まやちゃん?」


 大寬まやは、彼女の話から同様に津名の姿を思い浮かべて犬のような鳴き声を出した。


「キャンッ!はぁ~……そうなのよ、分かってるじゃない。あぁ、あのお姿を思い浮かべるだけで……」


 しかし、うつろな目のデレ顔になった彼女だったが、周りの目に気づいて我に返ると、いつものような半ギレ女子に様変わりした。


「はっ!!し、知らないわよっ!えんの勝手にすれば良いでしょっ!」


「様変わりはや~っ!えぇ~、本当にぃ良いのかいぃ?」


 珠川えんは、完全に大寬まやをからかっていた。彼女はえんを睨め付けた。


「ギィィ~ッ!」


「あはっ!怒ってるぅっ!そいえば、あんたって津名君と知り合いなんでしょ?もしかして、宇宙人だったり?」


「そうよ」


 珠川えんの質問に大寬は何の躊躇も無く答えた。津名が正体を見せたので隠している意味が無いと思ったからだった。


「ズルッ……、さらっと言ったなぁ」


 二人の横にいる日高は、驚いた顔をして大寬に息を吹きかけるようにしていた。大寬はうざったそうにした。


「麻帆、フ~フ~しないでっ!イミフだって言いたいんでしょっ!」


「ワンちゃんも宇宙人だったっ!」


 日高は大寬が天使のような津名の姿を見ると犬みたいになってしまうのでワンちゃんと呼ぶようになっていた。無論、大寬は苛立った。


「麻帆っ!あんたぁぁ~っ!」


「ひっ!おこりんこ、ワンたっ!」


 日高は恐怖のためか、意味不明な返事をした。


 珠川えんは、更に彼女についての不思議に思ってることを聞いた。


「だけど、まやって、そんな性格だったっけ~?前はこんなに話しやすくなかった気がするんだけど」


「私も身体を借りてるのよ……。……あぁ、もうっ!麻帆はフ~フ~しないっ!」


「はぁ~?マジで言ってんの?んじゃ、"前の"大寬まやちゃんは何処にいるのよ」


 珠川えんの質問を聞いて、大寬はじっと黙って、しばらくすると顔を赤らめモジモジとし始めた。


「ここにおります……、お気遣いありがとうございます」


 明らかに大人しい女性の声に変わった。しかも、とても丁寧な言葉遣いで今までの大寬とは違う人物に思われ、女性陣は驚いた顔になった。


「うぉ?キャラ変したっ!」

「フ~ッ?!別キャラじゃいなっ!」


 珠川えんと日高の驚きの声に"元の"大寬は丁寧に答えた。


「あ、あの……、しばらくお身体をお貸しすることにしました……のです」


「はぁ~、良くもそんな気になったねぇ……。自分の身体を宇宙人に貸しちゃうとか……身体は大事にしないとっ!」


 珠川えんは、そう言いながら自分が永遠の命を失ったことを思い出した。


「うん、そうだよ。大事にしないと」


 彼女は、自分に言い聞かせる様にもう一度言った。


「お勉強の時間は頂けていますし、期限も決まっていると言うことでしたので……」


「そうかい、しかしねぇ……」


「それに彼女の本当のお姿は、とても神々しくて嘘をついているようには思えませんでした」


「はぁ、あの性格で神々しいぃっ?」

「ワンたなのにぃっ?!」


 珠川えんと日高のツッコミに耐えられなかったのか、大寬の性格が戻った。


「うっさいわねっ!いつか、私の本当の美しさを見せてやるからねっ!神々しくってあんたらはひれ伏すしかないからねっ!」


「戻ったなっ!いや~、うそくさ~っ!ね、麻帆」

「きっと犬の姿じゃいなっ!」


「ギィィ~ッ!」


 大寬は怒っていたが、珠川えんと日高は笑って受け流していた。


「じゃあさ、津名君も前の津名君がいるわけ?」


 日高は津名も同じように前の宿主がいるのだろうと思った。津名は困った顔になって頭を掻き出した。


「前の津名ほずみ君はホームに帰ったよ……」


「えぇっ!それって……」

「私と同じじゃいな……」

「まったく……お前自身が普通ではないではないか……」


「も、もちろん、合意の上だからね……」


 珠川まやは、津名の半身が動かない理由が分かった。


「……つまり、それで身体が半分動かないというわけか。腐っているんじゃないか?」


「……く、腐ってないよっ!臭くないよっ!」


 津名は言い訳がましくそう言った。


 すると、日高は津名を険しい顔でじっと見つめた。


「えっ、なに……?また、フ~?」


「つまり、津名くんは……」


 彼女はもったいぶったようにそう言うと津名を指差した。


「うん?」


「半分ゾンビな貧乏憑依型宇宙人っ!あ、アイティ音痴もだったっ!君は特大のフ~じゃいなっ!ぷぷぷっ!!あははははっ!」


「ガクッ……」


 日高は、自分で言った言葉が笑いのツボにはまったのか腹を抱えて大笑いしていた。他の女性陣も釣られて笑い始めた。


「あははっ!麻帆っ!面白すぎっ!」

「ふっ!クククッ!」

「ほ~んと、ゾンビ人間ねっ!」


 津名はため息をつくと空を見上げた。


「津名君に失礼だなぁ……。しかし、多様性ねぇ、この星らしいか」


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