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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド壱の一:吸収衝動を味わってみるかい?
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極限貧乏宇宙人→???

 津名の説明は、アニヴァと珠川を驚かせたが、にわかに信じられないと言った顔をしていた。津名は信じてもらえないため言い訳がましくなっていた。


「と、ともかく、永遠の命は異端なんだ。輪廻から外れちゃうのは宇宙の法則から外れちゃってる。それで僕らが派遣されてきたってことなだけで……」


 珠川は、自分達の事を話すクラスメイトにあきれた顔をした。


「あんたってさ、今まで同じ教室にいたただの貧乏くんでしょ?宇宙とか、派遣とか、テロリストとか、私達の事をよく知っているし……、君ってなんなん?」


「だ、だから、貧乏ってのは……ま、まあそうかもしれないけど……。あと、テロリストじゃなくて、テロメアね……」


 アニヴァも津名の説明を到底受け入れられず、怒りをあらわにした。


「あぁっ!!ともかく、お前の話は嘘ばかりだっ!お前に余達の何が分かるというのだっ!!」


「お、怒らないで……」


「大体、派遣ってのは何なんだっ!宇宙を統べるヤツとか言ってたが余達を小馬鹿にしているだけではないかっ!」


「え、えぇ~、本当なんだけど……。つまり、僕は……宇宙人って言えば良いのなのかなぁ」


 宇宙人と聞いて日高もアニヴァも珠川も驚きの声を上げた。


「フゥゥゥゥゥゥ~ッ!フッ、フッ!フゥゥゥ……フフフゥゥゥ????ふふふふっ!フ~~~~……」


「あぁっ!日高さんが倒れちゃったぁぁぁっ!」


 津名は目を回して倒れてしまった日高を腕に抱え、更に話を続けた。


「え~っと……つまり、宇宙には色んな星があってさ。進化した星もあれば、この星みたいに未熟な星もあるのさ。僕は宇宙のとある進化しきってしまった星から派遣されたんだ、かっこ良く言うと宇宙全体を見守る救世主的な位置づけの星って言えば良いかなぁ。本当は星々は干渉し合ってはいけないんだけど、例外には対処される場合もあるってわけ。あっ、今話したのは内緒だよ」


 またも理解の出来ない事を話した津名の言葉は無視され、その中の一言にアニヴァはカチンと切れた。


「あぁ、そうかい、余らは"例外"ってことかいっ!」


「言い方悪かったかもしれないけど、星々の基本システムである転生輪廻から外れちゃだめだってこと」


「何が転生輪廻だ、仏教じゃあるまいし。ありもしないことを言いやがって」


「えぇぇぇ、生まれ変わりのシステムはありありだってぇ……。もう、この星は生まれると霊力を縛りすぎちゃうからホームのことを信じない人が多いんだよなぁ……。未熟な星にありがちなんだけどね……。進化のためだろうけど極端だよねえ……、あ、誰かに怒られちゃいそう……」


「また、ふ~な事を言いやがってっ!」


「あはっ!お姉ちゃんが"フ~"を使ってるっ!」

「おぉ、アニヴァちゃんも仲間だねっ!」


 珠川と日高の言葉にぶち切れ状態のアニヴァは、二人をこれでもかとを睨んだ。


「お前たちまで余を侮辱するかっ!!!」


「ひぃぃぃ~、ごめんなさいぃぃぃっ!お姉ちゃん……ブルブルブル……」

「ごごご、ごめんなさいぃぃぃ、調子に乗りました……」


 今度は目を一瞬かっと開くと、津名を睨んで話を続けた。


「命があるなら長生きするのが良いだろうがっ!命を守って何が悪いってんだ」


「命を大事にすることは大切だけど。長生きしすぎだよ……、君たちは……」


「何処までもバカにしやがってっ!宇宙船でも見せてやれば信じてやるっ!」


「う、宇宙船はなくてね……」


 津名が困っていると入口の扉が急にドカンと開いた。


「あぁっ!もうっ!なぁぁ~にぃぃを話し合ってんのよっ!いい加減にしてよッ!!」


「え、え~っと、大寬さん……だっけ?居たの?あれ、名前合ってる?」


「あぁぁぁ~~~~ってるわよっ!良いから、さっさとやっちゃいなさいよっ!あんたってホントにモタモタしててイライラするっ!」


「いやいや、そんな過激な……、まずはしっかりと話し合ってだね……」


 津名は、割り込みに入った大寬に困ってしまった。しかし、彼女の裏側、庭でしている者達に気づいて鋭い目つきに変わった。


「お前たち、何をしているっ!」


 今までの緩やかな声とは異なり、その怒りに満ちた鋭い声に大寬は寒気が走った。


「えっ?!な、なによいきなりっ!」


 日高は急に津名が立ち上がったため、地面に落ちてしまった。


「……痛っ!ふ、ふぇっ?!ど、どうしたの津名君……?」


 アニヴァと珠川はニヤリと笑っていた。


 珠川も外にいたアニヴァ達の"仮"の両親二人が、津名の祖母を捕まえている事に気づいた。二人の中年眷属は、恐怖で震える老婆の首元にナイフを突きつけていた。


「お、おばあちゃんっ!……あんたたち、おばあちゃんは関係ないでしょっ!」


 しかし、中年眷属は、大寬の言葉など耳を貸さず、老婆を脅し続けた。


「こ、こ、こいつがどうなっても良いのか……」

「そ、そうだ……。わ、私達はほっといて、ど、どっかに、い、行くんだ……」


 津名も怒りを抑えきれず、アニヴァと珠川を睨んだ。


「な、何でそんなことをするんだっ!」


「貴様が余達を殺そうとするからだっ!!!このまま消えないと、眷属がお前のババアを食べちまうぞっ!」


 日高は献血車の二人が食べてしまうのが分かったような気がした。彼らは自分達の"食事"を取る必要があったのだった。


「け、血液はあの人達の食事……?」


 しかし、そんなことを考えている間もすぐになくなった。津名の様子がおかしくなったからだった。


「つ、津名君っ?!」


 津名は何かを抑えきれないのか自分の身体を両手で掴んでいた。


「あ、あぁ……あぁぁぁっ!駄目だ……抑えきれない……」


「だ、大丈夫?……あっ」


 日高が、そう言った瞬間に津名は目の前から消えていた。


「え、あれ?」


 そして、津名がいつの間にか階段の手すりの上に立って眷属二人を睨んでいるのが分かった。


「いつの間に……だ、だけど、そ、その姿……」


 しかし、その姿の変化にも日高は驚愕した。


「て、天使……?!」


 日高は思わずそんな言葉が出ていた。


 彼の身体から青白いオーラが黒い制服の上からハイロゥのように白くたなびいていて、髪の毛も真っ白になっていた。頭の上には輝く円盤のようなものが見えた。それは天使の輪のようにも見えたが、日高には銀河のようにも見えた。しかし、こんな小さな銀河はあり得ないと思った。更に彼の後ろからは大きなジェット気流のように何かが光りながら広がっていて、それは天使の羽のようにも見えた。


「きゃんっ!」


 すると、別のところから犬の鳴き声のような声が聞こえたので、日高はそちらの方を見つめて目を丸くした。


「だ、大寬さん……?」


「凜々しい……。はぁ~~~、これを待ってたのぉぉ」


 さっきまで津名のことを小馬鹿にしていたのに、大寬も目をハートマークにして両手を祈るように握って津名に見入っていた。日高はこの人も別人になったなと思った。


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