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ああ……ようやくお前の気持ちがわかったよ!  作者: 月白ヤトヒコ


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なんでこんな目に遭わないといけないんだっ!?


 ああ、どうしてこうなったんだろう?


 あの女が、『妊娠したから、自分が結婚するために別れろ』なんて言って来たのが悪いんだ。


 あの女のせいで、怪我をして動けなくなった。


 酷い怪我で、手足も上手く動かせなくなった。今はベッドに寝た切りになってしまった。


 少し前まで病院に入院していたというのに……


 入院を延長するかと聞かれたときに、


「大丈夫です。うちに連れ帰って面倒を見ようと思います」


 アイツが、笑顔でそう言った。


 入院中にお見舞いだと称して、こちらの声が出ない……上手く言葉が喋れなかったり動けないことをいいことに、食事の介添え時にわざと食べ物を零したり、点滴の確認だと言って腕に入っている針をぐりぐりと動かして、苦痛を与えるようになった。


 だから、退院はしたくなかった。元気なときなら兎も角、こんなになって家でコイツと二人きりになるなど、なにをされるかわからない。


 必死に『嫌だ』と訴えようとしたが、(うめ)き声しか出ずに……


「そうですか。あなたが介護をするのでしたら安心ですね。よかったですね」


 と、医者が笑って言った。


「ええ。任せてください。今日まで、ありがとうございました」


 アイツが、医者に頭を下げながら……こちらを見下ろして、ニヤリと笑うのが見えた。


 それからが、地獄の始まりだった。


 乱暴に扱われる。治っていない怪我を、わざと痛くなるように手当てされる。わざと食事を零される。痛いと、やめろと訴えても……


「なにを言ってるのかわからない」


 と、ニヤニヤした顔で笑われる。


「ちゃんと食べてよ。零すなんて汚い」


 明らかにわざとだ。こうやって笑う、笑われることが、酷く屈辱だ。


 嫌だと主張するために、動かし難い腕を痛みを堪えて振っても……


「邪魔」


 冷たく言われる。


 それでも抗議のために頑張って動かしていると、


「暴れて危ないから」


 ニヤリと笑って、拘束具を取り付けられて動けなくなってしまった。


 そして――――


 放置された。


 動けなくて苦しい。痛み止めが切れると、身体のあちこちが酷く痛む。助けてほしい。そう思っても、訴えることすらもできない。


 ここには、アイツ以外にはいない。誰も、誰も助けてくれない。見舞いにだって、来てくれない。


 何時間も放置され、空腹や脱水で意識が朦朧として、死ぬような思いをする中――――


「ホント、なにもできない奴だな」


 馬鹿にされ、罵られ、笑われながら世話をされる。


 なけなしの抵抗をしたところで、


「人間の両手足の重さって、知ってる? 両腕、両足の重さを合計すると、大体その人の体重の四十数%くらいあるんだって。意外に重たいと思わない? ということは、邪魔な両手足を切り落とすと、それまでの体重が約半分になる」


 ニヤニヤと手足を撫でられながら、恐怖を煽るようなことを言われる。


「今度、ノコギリでも買って来ようか? 両肩や足の付け根から切り落として軽くなると……その分、世話するのが楽になると思うし」


 やめてほしい。冗談だと判っていても、怖い。


 どんなに悔しくても、死ぬ程の恥辱を感じていても、唸ったり呻くことしかできない。


 その姿を、アイツは笑って……いや、嗤って見下ろしている。


 そんな、自分に苦痛を与える嫌な奴に、世話をされないと生きて行けない。


 なんで、なんで、なんでこんな目に遭わないといけないんだっ!?


 怪我が治ったら、絶対に復讐してやる。


 今に見てろ!


 そう思いながら、どうにか今日も生き延びる。


 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・


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 読んでくださり、ありがとうございました。

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