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9.旅の終わりに(2)

 

 どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんんっ‼


 轟音が鳴り響き、広場全体が激しく揺れ動いた。

 何事かと慌てて見やれば、広場の石畳の床に大穴があいている。そして、その穴から水柱が立ち上り、水柱は天井を貫いていた。

 轟々と唸り続ける水流に逆らうように、バラバラと石の欠片や砂が天井から落ちて来る。

 そして、その水柱の中心にいるのが二ムエだ。彼女は銀髪を逆立たせ、細い眉を吊り上げ、アクアマリンの瞳をギラギラと光らせている。

 マーシャはたじろいだ。どうしたわけか、二ムエはマーシャの方を睨み付けている。

『よくも我のいる場で……っ』

「え、何? どうしたの?」

『我は嫉妬深いと申したであろーうっ‼」

 大声を張り上げると共にニムエは水柱から弾け出てくると、瞳を見開いて一直線に黒狼へと突っ込んで行く。

 黒狼は翼を折られ、尾の大蛇を槍で貫かれ、脇腹を抉られ、片足を切り付けられ、既にボロボロの様子だった。

 そして、そこに、床下から天井の上へと流れていた水柱の水の流れを従えてニムエが体当たりして来る。


 ドオオオオオオーー-ンッ‼


 途轍もない水圧に押し潰され黒狼の姿が砕け散る。

 と同時に、二ムエの姿も水の泡となって消え、水柱も消えた。後には床一面に大きな大きな水たまりが残される。

 いったい何が起きたのかと、茫然と立ち尽くすマーシャとアーサーだったが、ふと、マーシャの脳裏にひとつの名が浮かび上がり、マーシャはその名を唇に乗せる。

「マルコキアス」

 アーサーが振り返ってきたので、マーシャは彼に深く頷いた。終わったのだ。マーシャはアーサーと共に安堵のため息をついた。

 マーシャは玉座の間を見渡した。床の大穴は井戸のように深く、天井の大穴からは雲の多い空が見えた。これはなかなか修繕が大変そうである。

「モルガナ姫は?」

 彼女の姿を捜して再び視線を巡らせたが、荒れ果てた広間の中に彼女の姿は見付からなかった。

「すでに去ったようだ」

 大扉の方から声が聞こえて振り向くと、カイが兵士たちからの報告を受けていた。

「馬のような獣に跨ったモルガナ姫の姿を目撃した者がいる」

「馬のような? 馬ではなく?」

「わからん。――追っ手を出した方がいいか?」

「いや、やめておこう」

 アーサーが左右に頭を振って答えた。

「追いかけて捕らえることができたとしても、その後の対処に困る」

 確かに、とカイが頷く。

 悪魔と契約した魔女として火炙りにすれば良いのか。

 それとも、王の姉としてログレスに迎え入れるのか。――いや、まさか! そんなことできるはずがないし、モルガナもそれだけは望まないはずだ。

「モルガナ姫はアーサーを諦めたと思う?」

 マルコキアスがアーサーを殺せなかったことを、モルガナはすぐに知るだろう。

 あれほどの憎しみが簡単に消え失せるはずがない。きっと今もログレスから逃げながら、憎しみの炎を燃え上がらせているに違いないのだ。

 アーサーの青い瞳がちらりとマーシャを見やる。

「マーシャは、モルガナ姫の気持ちに寄り添っていたな」

「え?」

「気持ちが分かると言っていた」

「あ……うん…。父親を殺され、母親は自ら命を絶って、姉二人とも離れ離れにされたら、あたしでもモルガナ姫と同じように憎しみを抱くだろうなぁって思ったの」

 モルガナが悪魔と手を結んだことは、間違いなく、『悪』だ。

 だけど、やらかしたことが『悪』であっても、人間として『悪』とは限らないのではないだろうか。

 もし、人間としても『悪』であるのなら、それは生まれつきなのか、否か。

 生まれつきの『悪』である人間がいるのか、いないのかは、意見が分かれるところだが、いないと仮定するのであれば、人間が『悪』の道を進むことになった理由が何かしらあるはずだ。

 この頃、よく考えてしまう。世の中が『悪』だと断じる人の中に、自分との共通点や共感点を捜してしまう癖がマーシャにはあるようだ。――例えば、女王ブーディカのように。

 だから、どうしても『悪』を完全な悪として見ることができなかった。もしかしたら、見る角度を変えてみれば、『悪』ではなくなるのではないだろうかと。

 そのせいで、バアル・ゼブルという悪魔を、悪魔だと頭で分かっていながら、気持ちが彼を完全な『悪』として見ることができない。

 もしかしたら、良い悪魔かも? と思ってしまうのだ。

 冷静になって考えれば、『良い悪』魔なんているはずがないのだから自分でも笑ってしまう。

 モルガナにしても、彼女が悪魔と契約することを選んだ時点で、人の道に外れてしまっているのだから、共感も同情もする必要がないのだが。それでも思ってしまうのだ。

 もっと違う時に、もっと違う形で彼女と出会えたのなら、もっと違う道を指し示してやることができたかもしれない。だから、もっともっと、と。

 自惚れに違いない。自分の力などたかが知れているのに。

 それでもマーシャには救い出された過去があるから、今度は自分が誰かの力になりたいと望んでしまうのだ。

 マーシャはため息交じりに言った。

「モルガナ姫は諦めていないと思う。近くまた何か仕掛けて来るかも」

 一度、悪魔の手を握ってしまった者は、もう二度と神の瞳には映らない。後戻りのできない茨の道をモルガナは裸足で前へ前へと歩き続けるしかないのだ。

 マーシャは、ふと自分の左手のひらに視線を落とす。

 生まれついての『悪』はいないとしても、自分は生まれ落ちた時から紙一重の場所で生きている。たとえどんな些細なことでも、きっかけがあれば、いつでもマーシャは地獄に落っこちることになる。いや、もしかすると、もうすでにマーシャは片足を地獄に突っ込んでいる状態なのかもしれない。

 先ほど二ムエがマーシャから奪い取っていた力は、霊力だけではなかった。魔力をも己のものとしたからこそ、二ムエは悪魔を容易に滅する力を得たのだ。

 であらば、マーシャは悪魔の力を使ったようなものではないか。司祭に魔女だと罵られても仕方がない。

「マーシャ?」

 押し黙ったマーシャの頭を、アーサーがくしゃりと撫で回す。やめてよと言ってその手を払おうとすると、その前にアーサー自ら手を引いた。

「マーシャ、大丈夫だ」

「何が?」

「分からない。けど、俺の傍にいろ。そうすれば、大丈夫だ」

 何かを察したのだろうか。そうだとすれば、恐ろしい勘の良さだ。その人の欲しい言葉を、欲しい時に与える力をアーサーは持っている。

「アーサー」

 カイに名を呼ばれ、アーサーは広場の惨状を見渡しながらカイに向かって言った。

「カイ、報告を。皆、無事か?」

「玉座の間から慌てて逃げて転んで怪我をした者が何人かいるが、おおむね皆、無事だ。グリフレットも正気に戻っている。あと、そうそう。司祭たちが青ざめた顔で教会に逃げて行ったぞ」

 アーサーはカイの報告を受けて、こくんと頷いた。

「死者が出ていないのならいい。俺に対する個人的な恨みで、関係のない者たちを巻き込んでしまった」

 アーサーが婚姻を発表すると人々を集めなければ、彼らは悪魔という恐怖を目撃することもなかっただろう。悪戯に人々を怖がらせてしまったこと、怪我人を出してしまったことをアーサーは悔やんでいるのだ。

「何ひとつ、アーサーの意思ではないわ」

 悪魔をログレスに連れて来たのは、モルガナだ。

 そして、モルガナに恨みの種を植え付けたのは、ウーゼル王だ。

 アーサーはただ、ウーゼル王とイグレイン妃の間に生まれてきただけだ。

「何を知らなかった。だけど、知らなかったことこそが罪かもしれない。きっと、知ろうとすることを疎かにしてしまったのではないかと思う。自分の両親について知りたいという気持ちがあれば、調べたはずだ。そうしていたら知ることができて、モルガナ姫が悪魔の手に落ちる前に何かできたかもしれない。そしたら――」

 いやと言ってアーサーは頭を左右に振った。

「違う。そうではない。姉だと知って、彼女を救いたいという気持ちはあるが、それよりも、俺はこの国の王だ。この国の民を護る義務がある。俺が両親について早くに知っていれば、彼女のことをもっと警戒していたはずだ」

「媚薬を嗅がされて、心を操られるなんて情けなかったわね」

「心を抉るな」

 マーシャが、ぺろりと小さく舌を出すと、アーサーは小さく笑い、それから真顔になって視線を下げると言葉を続けた。

「俺はこの国とこの国の民を護るために、彼女がログレスに害をなす存在ならば、剣を向けなければならない」

 ――たとえ、母を同じくする姉であろうと。

 アーサーは孤児だ。父も母もなく育った。それが、ここにきて、血を分けた姉がいたことが分かったのだ。本当ならば、喜ばしいことだ。

 だが、その姉にはひどく憎まれていて、、殺しても殺しても足りなくて、死後も地獄で苦しむように魂を汚してやりたいと望まれていた。アーサーを想うと心が痛い。

 マーシャはアーサーの正面に立ち、まっすぐに瞳を見つめた。

 なんていう表情をしているのだろう。迷子の男の子のような、頼りない顔をしている。

 そんな顔をしていると、大丈夫よ、と声を掛けてあげたくなる。傍にいて、力を貸してあげたくなる。

 それは彼が『騎士』様だから、そう思うのだろうか?

 違う。そうじゃない。

 だって、アーサーは、マーシャが彼を『騎士』様だと気付く前から、ずっとマーシャの前でこんな顔をしていたではないか。

 マーシャを信じ切った無防備な顔。

 他に頼れる者はいないんだ、お前だけだ、と言いたげな瞳。

 マーシャにとって、アーサーが『騎士』様だと分かった今も、アーサーはアーサーだった。

 そして、もし『騎士』様がアーサーではなく別人で、どこか別の場所にいて、そこがどこだか分かっていたとしても、マーシャは目の前の迷子の男の子を見捨てて『騎士』様のもとへ行ったりできないだろう。

 なぜなら、見捨てて去るには情が移り過ぎているから。何もかも手遅れなのだ。

(さあ、あたし)

 マーシャは心の中で自分に問う。

(『騎士』様を捜す旅は終わったわ。あたしはいったいこれからどうしたいの?)

 旅の目的は果たされてしまった。ならば、次の目的を捜すの? どうあってでも旅に出たいの? もう一度、悪魔から身を隠す? そのための旅に出ようか。

 どうするの? とマーシャはアーサーの瞳を見つめたまま己自身に問い掛けた。

(あたしは)

 マーシャはアーサーに向かって右手を差し出す。

「アーサー、ありがとう」

「ん?」

「あたしは、アーサーの力になりたい」

 彼の傍にいて、彼を護り、彼がこの先どのような王になるのか見てみたい。

 マーシャが差し出した右手に、アーサーがそっと触れると、マーシャは彼の手を引き寄せて握り締めた。

「アーサー、貴方のドルイダスになるわ。キャメロットに留まり、貴方の傍にいる」

「ずっと?」

「貴方が貴方である限り。あたしがあたしでいられる限り」

 あるいは、二人の想いが擦れ違ってしまうその時まで。

 きっとその時まで彼の傍にいよう。



 ▽▲



 ひと月後、モルガナが無事にオークニーのロット王のもとに戻ったとの報せが届いた。しばらくは姉であるロット王の妃と共に過ごすとのことだ。

 アーサーはモルガナが仕出かしたことを追及しなかった。モルガナの後ろにはロット王がいるからだ。

 ロット王の方からも今のところ何も言って来ない。奇しくも、モルガナとウルフィウスの証言によりアーサーがウーゼル王の唯一の王子だということが世に知れ渡ったからだ。

 どこの馬の骨だか分からないことで、アーサーの即位を認めていなかった者たちが今回のことでアーサーを否定する理由を失い、こぞってアーサーの元に下ったため、アーサーの勢力はロット王を筆頭とする勢力よりも上回ることになった。

 それは喜ばしいことだけではけしてない。アーサーとロット王が戦火を交える日がぐっと近付いたということだからだ。

 今頃、ロット王は焦っているに違いない。アーサーとの勢力差が取り返しのつかないことになる前に手を打って来るはずである。

 ロット王が付け入るとしたら、イグレインがアーサーを身籠った経由だ。

 それに関してはアーサー自身ですら嫌悪を感じるし、人々の間においても賛否が上がる。教会の司祭はあからさまに顔を顰め、汚らわしいと言わんばかりだが、アーサー自身が犯した罪ではないので、ひとまずローマ帝国の後ろ盾は失われていない。

 さて、この一ヵ月を、アーサーはキャメロット城の修築に費やした。一方、マーシャはキャメロットの城で過ごしたり、城外の森に建てた借家で過ごしたりしている。

 マーシャが森に引っ込んでしまっている間はアーサーにとって不満が募る時間だが、必ず城に戻って来ると毎回約束してくれるので、とりあえずアーサーは耐えていた。

 アーサーが執務室で村々から上がってくる報告書や領主たちからの上奏書に目を通していると、カイが追加の書類を手にやって来た。

 アーサーは眉を顰めた。彼を呼んだのはアーサーだが、追加分を持って来いとは命じていない。余計な物をと思う。

 その思いがそのまま顔に出てしまったのだろう。カイは苦笑しながらアーサーの机にどさりと書類を置いた。

 アーサーは唇を尖らせて言った。

「そろそろマーシャを迎えに行って欲しい」

「またか。まだ二日しか経っていないだろう。早すぎると怒れる。勘弁して欲しいんだが」

「もう二日だ」

 拗ねた口調で言い放つと、カイは笑ってアーサーの頭をくしゃりと撫で回した。

「マーシャは城を留守にしている間に『騎士』様とやらを捜しているんじゃないのか? ……言ってやらないのか?」

「何を?」

「とぼけるなよ。マーシャはあの子だぞ」

 アーサーは報告書から手を放し、椅子に座ったまま机の前に立つカイに向き直った。

「そうだ。マーシャはあの子だ。あの子であり、あの子でもある」

「は?」

「俺たちが度胸試しに入った塔に封じられていた悪魔の娘。それがマーシャだ」

「俺や他のヤツは途中で引き返したが、最後まで――マーシャのもとまで行ったのはお前だけだった。お前がマーシャを見付けたんだ、アーサー」

 アーサーの青い瞳がカイを上目遣いに見やる。そして、一度瞬いて、それから口を開いた。

「暗い塔の中でマーシャを見付けた時、俺はゾッとした。本当に悪魔がいたと思って、あまりの恐ろしさに寒気がしたんだ。だけど、すぐ暗闇に輝く紫色の瞳に目を奪われて、怖いなんて気持ちはどこかに行ってしまった」

 マーシャの肌は驚くほど白く、腕も足も枝のように細かった。黒髪はぼさぼさで、前髪も後ろ髪も床につくほどに長く伸びていた。

 マーシャは口が利けなかったから言葉が分からないのかと思って、アーサーは身振り手振りで自分の意思を伝えた。どうにかして塔の外へ連れ出したかったのだ。

 なぜ、あれほどまで強く連れ出したいと思ったのだろう。

 おそらく冒険の末に見つけた宝を持ち帰る気持ちと同じだ。アーサーがマーシャを見付けた。だから、マーシャはアーサーの物だ。そう、その時、少年アーサーは幼心に思ったのだ。

 アーサーは外に連れ出すためにマーシャを抱きかかえた。マーシャの足が萎えていて、とても歩けそうになかったからだ。

 だけど、たとえマーシャが自力で歩けたとしても、アーサーはマーシャを抱えて外に連れ出したことだろう。なぜなら、アーサーにとってマーシャは自分の大切な戦利品だからだ。

 抱き上げると、マーシャの体は鳥の羽根のように軽く、ひんやりと冷たかった。

 マーシャは抱えられて移動することが怖かったのだろう。ひしりとアーサーにしがみ付いてきた。愛おしいとアーサーは思った。けして手放してなるものかと。

「思い出した。俺、嫌だったんだ。マーシャをドルイドに預けるのが」

「あの時は仕方がなかっただろう。悪魔の娘を傍に置くなんて父上が許さない。それに、マーシャにとっても一番良い方法を考えた結果じゃないか」

 カイの父親であるエクトル卿は、アーサーが塔から悪魔の娘を連れ出して来たと知ると、教会に使者を送ると共に近くの村に滞在していたドルイドに助けを求めた。

 すると、そのドルイドは教会から使者が戻ってくるより先に、自分がその子を引き取ると申し出たのだ。

 少年アーサーはかなり抵抗をしたが、エクトル卿には逆らい切れず、マーシャをそのドルイドに引き渡すことにしたのだ。

「そして、カンタベリー寺院だ。あの時の少女もマーシャだ」

 じつを言えば、その時アーサーはなぜ自分がこんなにも必死に少女を追い駆けてしまうのかまったく分かっていなかった。

 そして、その少女がかつて自分が塔から連れ出した少女だということにも気が付いていなかった。

 なぜならアーサーがマーシャをドルイドに預けてから七年の歳月が経ち、襤褸を纏い、ガリガリに痩せていた悪魔の娘は、すっかり健康的に人間らしく成長していたからだ。

「今なら分かる。マーシャだったからだ。マーシャだったから俺はあんなにも必死にマーシャを追い駆けて走ったんだ」

 そして、即位後も執拗にマーシャを捜して追い求めたのは、心の奥底でずっとずっと塔から連れ出した少女のことを忘れていなかったからだ。

「それなら、なおのこと言ってやればいい。そうすれば、ずっと傍にいてくれるだろ」

「それは……そうかもしれないが……そうじゃないんだ」

「あ?」

 さっぱり分からないと、カイは表情いっぱいにその思いを表現した。その顔を見て、アーサー自身も複雑そうに眉を寄せる。

「なんと言うか……、俺は恩を感じられて傍にいて欲しいわけじゃないんだ。というか、マーシャがそこまで恩に感じているだなんて、ちっとも想像していなかったというか、俺からしてみると、マーシャを塔から連れ出したけど、助け出したという意識はないんだ。だから……」

「恩に感じられても困る?」

「そう、困る。……困るし、恩に縛られて傍にいて欲しくない」

 いや、傍にはいて欲しい。

 常に自分の視界の中にいて欲しい。

 だけど、それが恩とかいう義務感であって欲しくはない。

「我がままなんだろうか……」

「そうだなぁ。我がままなんじゃないのか? けど、我がままで何が悪い。どうしようもなく、好きだってことだろ?」

 こくん、と首が落ちるような頷き方をアーサーはした。まるで幼い子供のような。

 それを見て、カイはからからと笑った。

「いいんじゃねぇ?」





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