05話.誘拐の目的
「オルトク・バルディさん、そろそろお目覚めですか?」
引き締まっている小柄な男性が、手足を拘束されて床に転がされてる中年男性に話しかけていた。
オルトク・バルディと呼ばれた中年男性は、自分が今置かれている状況が全く理解できずにただただ困惑していた。
「ジ、ジン! これはどういう状況なんだ!!
早くワシの拘束を解かぬか!!」
「オルトクさん……、全く状況が理解できてないみたいですね。
丁寧にご説明してあげますね」
ジンと呼ばれた小柄な男性は、今の状況を説明し始めた。
大商人でありジンの雇い主であったはずのオルトクは、ジンに誘拐されて拘束されているということを。
そして、そもそもの発端であったオルトクの娘、シャリーナ・バルディの誘拐犯もジンであるということを。
「……何が目的だ」
「あんたたち商人が王国から自治権を勝ち取った城塞都市ラッカード、あの都市を俺の拠点にしたくなってな。
あんたの財産とともに街ごと頂こうかなってね」
「ふざけるな!!
お前ごときにそんなことできるわけないだろ!!」
「そうでもないさ。
あんたが娘捜索の作戦に必死になっていた頃、あんたの金を使ってあの街にいる腕利きはほぼ買収した。
ジンがオルトクを誘拐したという置手紙も残してある。
後日、俺がオルトクとしてジンを討伐したという名目で凱旋する。
そして、俺がオルトク・バルディとして、あの街に君臨するっていう寸法さ」
「僕やお前の顔を知っているやつはたくさんいるのに、そんなことできるわけないだろ!!」
「買収に応じないやつ、密告しようとするやつは全部殺す。
それだけだ……
見せしめも兼ねて、あんたの死体は街の真ん中に晒すさ、ジンとしてね」
「……」
「そう大きくもない町だ、不可能ではない」
「……」
「少しは状況を理解してもらえたようで助かるよ」
「……娘は、シャリーナはどうした?」
「たぶん今はまだ忙しいだろうな。
まぁ、そのうち会えるさ」
「ワシになら何をしてもかまわん!
娘は……、シャリーナだけは……」
「そんなに会いたいなら今から会わせてあげてもいいけど、お父さんびっくりしちゃうよ。
あはははははっ!!」
唇を噛みきるほどに必死な懇願をしているオルトクをあざ笑うかのようにジンは言った。
そして赤く染まっていた唇は、より血が滲むことに……
そんなオルトクの表情を見たジンは、満足げにその場を去っていった。
ジンの後ろ姿を無言で見送るしかなかったオルトクは無力感にさいなまれ、行き場のない不安に押しつぶされそうになっていた。
数時間後、オルトクはシャリーナと再開を果たした。
しかしオルトクはシャリーナのあまりの惨状に発狂してしまう。
数日前に誘拐されたシャリーナは、つい先ほどまでジンの部下たちの慰み者にされていた。
かろうじて息はしているものの、あまりにも変わり果てたその姿は、オルトクの心を壊すには十分すぎる光景であった。
オルトクの絶望に落ちた顔を見たジンたちは、自分たちの作戦の成功を確信するのであった。
そして少し早い勝利の美酒に酔いしれながら、夜は更けてゆくのであった。
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「なあ、アイオン。
あの後街で聞いた山賊のアジトってやつはここで合ってるよな?」
「奴らがいるかどうかは別にして、街で聞いたアジトはここで間違いないはずだ」
「アイオンとクラウスはこのアジトを見てどう思う?」
「山賊のアジトとかいうからてっきり穴倉なのだろうと予想していたが……
ここは森の中に隠れた小さな村という感じだな」
「俺もアイオンと似たような感じかな。
ただ、あの一番大きな家以外は人がいないみたいだけど、本当にいるのか?」
「実はボクもそう感じているんだよね。
とりあえず他の家には誰もいないことを確認しよっか?」
「もしも誰かいたら?」
「もちろん、サクっと拘束で!」
三人は頷くと、真っ暗な村の中へ入っていった。
「面白かった!」
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