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52.邪神の最後

本日のみ2回投稿!

18時に最終話が公開です!!

「フェリシア!!」


 フェリシアの渾身の一撃が邪神を切り裂くその瞬間、クラウスの叫び声が響いた。

そして、邪神の口が大きく開き、眩しい(まぶしい)光が放たれた。

光に包まれたフェリシアは大鎌(デスサイズ)と共に吹き飛ばされる。


「フェリシア、大丈夫か???!!」


 フェリシアのもとに駆け寄ったクラウスは思わず絶句する。

僅か(わずか)に息はしているものの、その身はボロボロとなり意識を失っていた。


「フェリシアぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 クラウスは愛する者を失いたくないその一心で悲痛な叫びをあげた。

そして邪神を見上げ、剥き出しの憎悪を叩きつけるべく飛び出そうとするクラウス。

それを必死に止めるのはアイオンであった。


「離せ!!!

 フェリシアが……

 くそっ、お前からぶっ飛ばすぞ!」


 今にも飛びかかりそうな剣幕でアイオンに噛み付くクラウス。

すると、アイオンの(こぶし)がクラウスの頬を撃ち抜く。


「落ち着け!

 冷静さを失えば死ぬだけだぞ!!」


 反射的に殴り返すクラウス。


「うるせー!

 あいつを……

 あいつだけは絶対に許さない!!!」


「わかってる!!

 だからこそ、俺の話を聞け!」


 アイオンの真剣な眼差しを受けたクラウスは、少しだけ冷静さを取り戻していた。


「……話せよ」


 クラウスが聞く耳をもったことがわかったアイオンは、とっておきの作戦を説明し始めた。


「とりあえず俺が一人で邪神の正面から斬り込む」


「はぁ??!」


「これでも勇者だぞ?

 邪神の攻撃くらい俺が一人で捌ききるさ」


「3人がかりでもダメだったんだ!

 おまえだけでできるわけないだろ!!!」


「心配するな。

 できるできないじゃない……

 やるんだよ」


「……」


「俺が邪神までの道をかならず切り開く。

 お前はそこを通って、その魔王の大鎌をやつにぶちかませ」


「アイオン……

 おまえ、死ぬ気なのか……?」


 アイオンの提案に戸惑うクラウス。

どう考えてみてもアイオンの命をかけた作戦であるとしか思えないからだった。


「あとは頼んだぜ、親友(あいぼう)


 アイオンはクラウスに笑顔でそう言い残して、邪神のもとへと走り出した。


「ま、待ってくれ!」


 クラウスは声にならない声で叫ぶが、その言葉はアイオンには届かなかった。


 宣言通り邪神の真正面から突撃をするアイオン。

その行動が邪神の気に障ったのか、怒り狂ったように無数の触手をアイオンに向けて伸ばした。


 聖剣(アーク)が激しい光を放つ。

その光を浴びた触手は悶え苦しむように身を捩り(よじり)、アイオンから遠ざかる。

光を掻い潜るようにして迫る触手も、アイオンの華麗な剣舞によって瞬く間に切り落とされた。


「あいつ……

 あんなに強かったのか?」


 クラウスがアイオンの華麗な剣舞に目を奪われていると、鈍い大きな音が響き渡り、その音より遅れて何かがクラウスの足元に転がってきた。

左腕を吹き飛ばされたアイオンは、激しい出血をしながらも剣舞をやめない。

そして、いよいよ全ての触手を薙ぎ払うのだった。


「アイオン!!」


 激しい痛みにアイオンは顔を歪めながらも、渾身の一閃を繰り出す。

それは振り下ろされた邪神の右腕を跳ね返し、クラウスの道を切り開く一太刀であった。


「クラウス!!!」


「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 クラウスは叫びながら、その道を無我夢中で突進する。

邪神がそれを許すわけもなく、全身から再び無数の触手が伸び、襲い掛かった。

しかしその触手が加速していくクラウスに届くことはなかった。


「死にやがれぇぇ!!」


 邪神の懐深くまで潜り込んだクラウスは大鎌(デスサイズ)をおもいっきり振り払う。

そしてついに邪神の胸部を大きく引き裂くことに成功した。


「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」


「クラウス!

 聖槍(デュナミス)を刺すんだ!!」


 クラウスの後ろについて懐まで潜りこんでいたアイオンは、叫ぶとともに聖剣(アーク)を切り裂かれた胸部に突き立てる。

クラウスはその一撃に合わせるように、聖槍(デュナミス)を突き刺した。


「やった……  か?」


 しかし、アイオンの願いは裏切られる。

邪神はうちあげられた右腕を真下にいる2人へと振り下ろした。


「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」


 2人が死を覚悟したその時、突如邪神の断末魔が響き渡る。


「やってやったのじゃ」


 邪神の胸部には見覚えのあるもの(ケルビム)が突き刺さっていた。

驚く2人が振り返ると、そこにはボロボロになりつつも立ち上がっているフェリシアの姿があった。


「急にわらわの前に現れた杖を投げたまでじゃ」


 照れくさそうにそういうフェリシアの元に2人は駆け寄り、満面の笑みで笑い合うのだった。



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