50.友よ
無言のままファウストに攻撃をしかけるマサラ。
無意識のまま闘争本能のみで行動しているかに見えるマサラであったが、防戦一方であった先ほどとは打って変わって、反撃できるようになっていた。
一進一退の攻防。
大幅なパワーアップをしたマサラだったが、それでもファウストの動きについてゆくのがやっとであり、神器を奪い返すほどではなかった。
そのときである、ファウストの体がグラッと傾いた。
なんと目を覚ましたファルミナとラースが渾身の体当たりを食らわせたのだった。
予想外の攻撃によって生まれるわずかな間隙。
それをマサラは見逃さなかった。
一瞬にしてファウストの懐に潜り込み、神器を奪うことに成功した。
「『受け取れ』」
得体の知れない響きを重ねたマサラの声が3人の耳に届いた。
そして、アイオンの手の中には、聖杖ケルビムがあった。
「え??」
突然の出来事にアイオンが戸惑っていると、怒りの籠もった声にならない声が響き渡った。
「ぐがあああがががぎゃあああアアあ!!!!
殺してヤルるるるああああ!!!!!」
神器を奪われたことに怒り狂うファウスト。
そして、ファウストの姿をかたどっていたどす黒い靄は、まったく別のものへと変化してゆく。
「『破滅の権化が目を覚ましたか……』」
ファウストを依り代にして、ついに邪神インペリオがこの世界に降臨した。
「コロす……
すべてキエロ……
けしサッテやる……」
目を覚ましたばかりの邪神は、ゆっくりと破滅の言葉を口にする。
それには呪いのちからでもあるかの如く、アイオンたちの足を竦ませた。
「『勇者たち!
こんなもんにビビってるんじゃねーよ!!
おい、さっきの小娘たち!
勇者たちのための時間稼ぎするぞ、付き合え!』」
マサラの檄を受けて、アイオンたちは正気を取り戻す。
そして、ファルミナとラースはマサラの呼びかけに応じた。
フェリシアのために自分が犠牲になることを躊躇う理由など二人にはなかった。
「では、我も微力ながら……」
いつのまにかメラゾフィスの姿もそこにあった。
不死の存在である吸血鬼。
切り落とされた頭部より再生した肉体は、すでに元の力を取り戻していた。
「フェリシアさま、あとはお任せします」
ファルミナがそう告げると、4人で邪神の猛攻に対抗を始めた。
かなりの善戦はしてるものの、じり貧な状態であるのは明らかであった。
アイオン、クラウス、フェリシアは互いに顔を見合わせる。
皆言いたいことはあるが、今はいがみ合うときではないと。
そして、フェリシアが提案する。
「時間はあまりなさそうじゃ。
クラウス、そしてアイオンよ。
おぬしらの神器の力を開放してくれ……
わらわの大鎌にそれを注ぐのじゃ」
クラウスは聖槍を両手で持ち、大鎌にそっと触れる。
クラウスは聖槍に祈る、その力を開放して注ぎ込めと。
光り輝く聖槍。
その光はゆっくりと大鎌に流れてゆき、全てが吸い込まれていった。
「はぁはぁはぁ……
これでいいはずだ。
アイオン……
次はお前だ」
「……
魔王に神器の力を託すなど……」
「バカやろう!!
そんなこと言ってるときじゃないだろう!!
今、目の前で破壊神である邪神が暴れまわっている。
そして……、お前の師匠や俺たちの仲間が命をかけて時間稼ぎしてくれている。
勇者と魔王にすべてを託してな……
だからアイオン、力を貸してくれ!
今の俺にはお前が必要だ!」
クラウスの熱き思いがアイオンに響いたその時、アイオンの手の中にあった聖杖が強い光を放った。
『ボクも一緒だよ。
アイオン、クラウス……
一緒にいこう』
光の中から懐かしい声が響いた。
それはもう聞くことの叶わない友の声。
それが空耳なのか、そうではないのか、真偽は誰にもわからない。
ただ、光り輝いた聖杖は、大鎌の中に吸い込まれていった。
「……ファウスト。
ありがとう……」
アイオンは小さくそうこぼすと、聖剣を両手で天に掲げた。
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