43.まさかの参戦
爆音の発生源に辿り着いたアイオンが見た光景は、異様であった。
何か不快なものの残滓が残っている他には、先ほど見かけた魔族のものと思われる頭部が転がっているのみであった。
「これは……
どういうことだ??
ファウストは何処に行ったのだ……」
状況が把握できずに茫然とするしかなかったアイオンであったが、見知らぬ気配が2つ迫っていることに気が付いた。
「あらあら。
まさかあの2人が負けるなんて。
さすがは勇者殿ってことですね」
「……仇をとる」
「バルトは相変わらず無口ですね。
しかし仇討ちっていうのはあたしも賛成だね!」
二人は刺すような殺気を放ちながら、アイオンに向かって行く。
それに一瞬たじろいたアイオンであったが、すぐにそれを正面から受け止めた。
「この気配は……
あいつらも強そうだ……
さっきのファルミナって奴と同格ってところか。
それが二人も……」
強敵を2人同時に相手しなければいけないことに動揺するアイオン。
先制攻撃で相手の出鼻を挫くべきか、それともしっかりと構えて迎え討つべきなのか、どうするべきか決めきれずにいた。
「……死ね」
まだ二人との距離には余裕があると思っていたアイオンを巨大な大剣が襲った。
バルトが遠方より自分の愛剣である大剣を投げつけたのだ。
「!!!」
強襲に不意をつかれ声にならない声をこぼしながら、間一髪直撃をさけるように受け流した。
しかしそのすさまじい勢いに、後方に吹き飛ばされた。
「あら、バルドのバカ力を受け流せるとはね。
あの勇者殿は意外とやるのかもしれないわね」
バルトの隣で妖艶な笑みを浮かべるラースは、アイオンを興味深そうに眺めていた。
バルトの力任せの一撃を受け流せる人間がいるとは思っていなかったのである。
「俺の一撃を受け流せる奴は帝国にはいなかった。
面白い、あいつは俺がやる!」
不敵な笑みを浮かべた瞬間、アイオンに迫るバルト。
そのことに気が付いたアイオンは、なんとか体制を立て直した。
迎え撃つべく構えたその視線の先には大剣を手にしたバルトがいた。
「あの戦闘バカが珍しく熱くなってるわね。
でもフェリさまのために、さっさと終わらせるわよ」
ふと姿を消したラースは、アイオンの背後に急に姿を現した。
懐から取り出した扇を翻してかまいたちを生み出し、アイオンを蹂躙せんと振り下ろした。
『キンッ!』
ラースが放った風の刃は、金属がぶつかるような音とともに砕け散った。
その音の元を辿ると、アイオンの背後に禍々しさを放つ刀を肩に担いだ老人がいた
「男たちが一騎打ちしようとしてんだ。
不意打ちなんて無粋なことを認められないな、お嬢ちゃん」
「あたしの風の魔術を剣で切り裂くなんて、おじーちゃん何者よ……」
「し、師匠!!!?」
「まったくもって不出来な弟子だな。
心を凪にしろ。
何度も言っただろ、冷静さを失ったら負けだ」
「は、はい!!」
「それとお嬢ちゃん。
こいつを『剣』なんかと一緒にしないでくれ、こいつは『刀』だ。
あんなもんと一緒にされたら、こいつが拗ねちまう」
「刀……
聞いたことあるわね、王国には『刀』という不思議な武器を作り使いこなすものがいると……」
不思議な老人に心当たりのあるラースは、バルトに声をかける。
「バルト!
あたしがこのおじーちゃんを抑えておく!
その間に勇者を始末して!!」
「ほほぉ、ワシを抑えるとは大きくでたな。
バカ弟子よ、わしがお嬢ちゃんと遊んでる間にそのデカぶつを倒せ」
好き放題言われたアイオンとバルト。
互いに緊張状態の二人であったが、その顔には苦笑いを浮かべているのであった。
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