26話.ぎこちなさ
フェリシアの元に合流することを決めたファルミナは、自分の隠れ里まで道案内をしていた。
フェリシアの左にはファルミナ、そして右にはクラウスという並び順で歩いていた。
「ファルミナよ……」
「なんですか、フェリシアさま」
「わらわと共に歩んでくれるのは嬉しいのじゃが……
わらわを挟んでクラウスを睨むのをやめてくれんかの」
フェリシアはなんとも言い難い渋い表情でファルミナに訴えた。
すると、ファルミナは先ほど以上に鋭い眼光でクラウスを睨みつけた。
「人族ごときがフェリシアさまのお隣にいるなどとは汚らわしい。
フェリシアさまの願いだから殺さずにいることを忘れぬように」
クラウスは困ったようなめんどくさそうな、そんな表情を浮かべてフェリシアに尋ねた。
「俺たちも一回はっきりさせたほうがいいんじゃないのか?
魔族って力を示せば認めてくれるんだろ?」
「おまえさんなぁ……
勝てることを前提で言っておるが、勝てる自信はあるのか?」
「どうだろうな。
でもこのままただ嫌われたままっていうわけにもいかないだろ?」
「聞き捨てなりませんね。
私に勝てると?
フェリシアさま、この者との決闘のお許しを頂けませんか?
侮辱されたままではいられませんので……」
「はぁ、ホントにめんどくさい奴らじゃな!
あーもう好きにせい!
ただし、殺しはなしじゃ!」
決闘の許しをもらえたファルミナは、満面の笑みを浮かべて感謝の言葉をフェリシアに告げた。
そして、薙刀『ニヴル』を取り出すと、クラウスに刃を向けて言い放った。
「人族よ、相手をしてやる。
ひれ伏すが良い!」
クラウスはめんどくさそうに頭を搔きながら、聖槍デュナミスを顕現させた。
「えっと、ファルミナだっけ?
俺が勝ったら俺のことを名前で呼んでもらうぜ」
「私に勝てるつもりでいるとは、本当に不愉快な生き物だな。
……万が一そのようなことになれば名で呼んでやる。
私が勝ったら、フェリシアさまの元から去れ」
「待て!
クラウスが居なくなってはわらわが困る!!」
「その条件でいい、早く決闘しようぜ!」
「ば、ばか!! おまえさんは何を言っておるのかわかっておるのか!?」
「お前は惚れた男がこのくらいのこともできないと思っているのか?
俺を信じて大人しく待ってろ!」
「……わかったのじゃ」
「本当に不愉快なやつですね、さっさと始めますよ!」
そう言うと共に、クラウスに向けて飛び出したファルミナ。
ファルミナは右手一本でニヴルを持つと、突撃の勢いのまま横薙ぎを放った。
クラウスはその横薙ぎをバックステップで避けると、その反動を利用して右片手突きを放つ。
雑な突進に、その勢いをそのまま利用した大振りの横薙ぎ。
それを回避されたファルミナは完全に無防備な体勢であり、そこに放たれたカウンターを防ぐすべはなかった。
「ぐあぁぁ!
バカな……」
「人を舐めすぎなんだよ、あんな雑な攻撃が当たるわけないだろ!」
右肩より流血しているファルミナにクラウスは追撃をかけた。
機動力を奪うために下半身の蛇部分を中心に攻めるクラウス。
様々な角度から放たれる突き、そしてそこから続く横薙ぎ。
また、時には石突での打撃も加えられた。
そして、まともに移動もできなくなったファルミナの額にデュナミスがそっと触れた。
「勝負ありってことでいいか?」
「あぁ、私の負けだ……
屈辱ではあるが、お前……
いや…… く、くら……うすは、私より強い」
「ちゃんと認めてもらえたようで良かったよ、いっぱいケガさせて悪かったな」
クラウスが立てないでいるファルミナに手を指し伸ばすと、フェリシアに後ろから頭を叩かれた。
「おまえさんのバカ!
やりすぎじゃ!!!
ファルミナよ、大丈夫か?」
急いで駆け寄り回復魔術で瞬く間に傷を治したフェリシアは、鬼の形相でクラウスを睨んだ。
そして、クラウスはその後しばらくの間、フェリシアの説教を受けるのであった。
「クラウス……
変な人族ではあるが、悪い奴ではないのかもしれないな」
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