01話.運命の日
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魔王フェリシアが放った爆炎魔術を大魔導士ファウストが霧散させたことで、魔王城には静寂が訪れていた。
「我が魔王城にまで辿り着いただけのことはあるのお」
「だから、言っただろ? こいつらならここまで絶対に来るって」
緊張感漂うこの場所において、およそ場違いな雰囲気で話す魔王とその隣に寄り添う男。
「クラウス!!! お前は何故人族を裏切った!!!!
英雄とまで呼ばれたお前が…… 何故……
最後に聞かせてくれ……、これがお前の正義なのか!!?」
クラウスと呼ばれたその男は、勇者アイオンの言葉を無視して愛用の槍を振りかぶりながら勇者へと突撃をする。
「くっ……」
クラウスの槍をなんとか受け流したアイオンは、カウンターでクラウスの脇腹へ右薙ぎを放つ。
それを難なく回避するクラウスの顔には笑みが浮かんでいた。
まるで勇者との闘いを楽しんでいるかのように……
「なんで……
なんでお前は俺との戦いをそんなに楽しめるんだよ!!」
魔王フェリシアがそんな二人の闘いを悲しげな表情で見つめていることに大魔導士ファウストだけが気が付いていた。
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3人の「神の寵愛を受けし子」にとって運命の日である、女神からの神託を賜る15歳の誕生日まで時は遡る。
15歳の誕生日がシトラス王国にて成人を意味する日であるとはいえ、片田舎にある小さな村に住む3人にとっては、いつもと変わらぬ日であった。
「聖痕」を持って同じ日に生まれた3人は、幼き頃からなにかと気が合った。
今日もいつもと同じように3人で村の外れを流れる川まで遊びに来ていた。
「なぁ、アイオン。 誕生日の儀式って昼からだったよな?」
「昼食後に教会に集合だよ。
まったく、クラウスは人の話を聞かないやつだなぁ……」
アイオンのいつもの小言を聞き流すクラウス。
そんないつもの光景を微笑ましく眺めていたファウストが2人に話しかけた。
「ねぇ、そろそろお昼にしようか。
二人が遊んでる間に魚もいっぱい釣れたしさ。」
ファウストは自身が釣った魚を丁寧に串刺しにして、焼き始めていた。
アイオンとクラウスはそんなファウストを手伝い、みんなで昼食をとった。
「神父さまがしびれを切らす前に、そろそろ教会にいこうか!」
アイオンの言葉に無言で頷いた2人。
その場を後にした3人はそのまま教会へと向かう。
「遅い!!!!!!
まったくお前たちは、今までどこほっつき歩いてたんだ!」
教会に着いた3人は神父の怒号に出迎えられた。
「ったく……
成人の儀式の日ぐらいしっかりしろ……」
着いて早々のお説教ではあったが、3人にとってはいつものことでもあった。
そして、3人はこの神父の説教が嫌いではない。
小さい頃から「神の寵愛を受けし子」として、とても大切に育てられた3人ではあったが、反面3人のことを本気で怒ってくれる人もほとんどいなかったのである。
そんな中、唯一ちゃんと叱ってくれたのが神父であった。
最初こそそんな神父のことを煩わしいと思っていた3人だったが、その裏にある大きすぎる愛情を感じとれるようになると、ちゃんと叱ってくれる存在のありがたさを実感できるようになっていった。
「わかった、わかった、悪かったよ」
「クラウス、謝るときはちゃんと謝らなきゃダメだよ!
神父さま、クラウスの非礼をお詫びします」
「アイオン……
たぶんその前に来るのが遅くなったことを謝るべきだと思うよ?」
「あはははは!!
ホントお前たちは性格がまるで違うな!
自由奔放のクラウス、品行方正なアイオン、ファウストは……
2人を上手くまとめてる癒し枠だな」
急に大笑いを始めた神父に戸惑う3人。
そんな3人をよそに、神父は成人の儀式を始めた。
「エルドラを創造せし女神ユグドラシルよ、
本日新たに成人の儀を迎えし3人に祝福をお与えください……」
神父が儀式を始めると、急に3人が光で包まれて4人の頭の中に不思議な声が響くのであった。
「ついにこの日を迎えましたね、我が力を宿し3人の英傑よ。
我は女神ユグドラシル。
3人には我が神託と聖なる武器を授けます。」
アイオンの前には、聖剣アーク
クラウスの前には、聖槍デュナミス
ファウストの前には、聖杖ケルビム が顕現した。
あまりにも突飛な展開に理解が追い付かない4人。
その上、3人の意識は神託の中身より目の前に急に表れた光り輝く武器に奪われているのであった。
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