二重と素直さ
おひさです。遅れまくってすみません。
サツキは二階から一階へと降り立つと自分に向かって手招きをするアニカを見つけた。
「なんですか?」
カウンターに近寄ったサツキはそう尋ね反応を待った。
「はい!もしかするとギルドマスターから聞いているかもしれませんが、今回サツキさんの冒険者ランクを大幅に上げることになりました!」
まるで自分のことのように嬉しそうに言ったアニカ、そんな彼女を見ながらもサツキの反応はあまりに普通であった。
「まあCじゃないと受注できないらしいですしね」
GランクからCランクへの昇格という4っつも飛び級したにもかかわらず、一切そのことへの感動を見せずただただ受注できる幅が広がったことを喜ぶ、まさに「実利」なサツキ。
そんなサツキに苦笑いしつつアニカは言った。
「それじゃあ前まで使っていた冒険者カードを渡してもらえますか?」
断る理由もなくすぐさまカードを渡すサツキ。
受け取ったアニカは「少し待っていてくださいね」という言葉を残し奥へと消えていった。
……
言葉通りサツキが少し待つと奥からアニカが顔を出した。
「はい!これが新しいカードです」
そう言って渡されたカードには今まで同様サツキの名前と四つになった星が刻印されていた。
「…変わったのこれだけ?」
しかし子供っぽい一面もあるサツキは少しだけ残念に思っていた。
「そうですね…もっと上のランクになれば色々変わってきますよ」
「そうなんだ、ちょっと見たいかも」
少しだけランク上げにモチベを見出したのかサツキはそんなことを言いつつ、カードから目を離しアニカの方を見た。
「じゃあ私戻るから、お金は全部預けておくね」
「はい、頑張ってくださいね」
サツキは出口の方へ歩き出した。
そんなサツキを見つめながらアニカは徐に「聖邪判定」を行使する。
「ッ…」
そんなアニカの様子を感じ取ったのか徐にサツキが振り返る。
その顔がアニカにはどうにも二重に被さり自分に対して「 」をしているようにしか見えなかった。
トッ、トッ、トッ…
やがてサツキは顔を戻すと出口へ向かい歩き出す…。
アニカはギルマスに語る。
「もう私は見れません、覗いたら覗かれる」
**されない怪物が**がいかに蛯イ諷を**させた。これはただそれだけの、それだけが真理だ。
……
冒険者組合からでたサツキは何か少し自分に違和感を感じながらも、同行者であるカイナとスカイを探した。
「おっ、いた」
2人はちょうど道に出た露店で何かを買っている最中だった。
「何買ってるの?」
「お、サツキ。食べる?美味しそうだよ」
そう言ってカイナが買った肉を渡してきた。
「やっとか、随分と長かったな」
「うん、そうだね。ギルマスといっぱい話すことがあったから」
そんなサツキをなぜかじっと見つめるスカイ。
「どうしたの?」
「ああ、いやなんでもない。そうだ、私は街に戻ったついでに領主様へ挨拶をしてくるがお前たちはどうするんだ?」
明らかな話題転換に対し違和感を覚えつつも興味のないサツキは少し考えて答えた。
「ギルマスがダメだったらあったかもだけどギルマスが優秀だったからいいや。カイナはどうする?」
「へ?僕?」
急に話を振られたカイナは食べ物を飲み込むと言った。
「僕もいいかな、別に自分は傭兵としてきてないし、代表でもないからね」
そういうと再び肉を食べ始めた。
「それじゃあここで解散だ、街かあっちの戦場跡地どちらかにいてくれ。連絡がしやすいからな」
そう言ったスカイは歩き出そうとし…サツキに止められた。
「ねえ、なんで少し優しくなったの?」
「は?何を言う、そんなことないが」
「えっ、でもさっきより優しくなってる」
「…たとえお前が原因でも原因でなかったとしても竜との戦いで助かったのは事実だ…ただそれだけだ」
それを言い切ったスカイはズカズカと領主館に向かって歩いていってしまった。
「…変なの」
「素直じゃないね〜」
サツキの発言に対してか、スカイに対してかどちらとも取れる発言をするカイナ、そんなカイナをジト目で見たサツキは歩き出した。
「サツキどこいくの?」
それに追従するようにカイナが歩く。
「ん?宿屋と鍛冶屋、後は外かな」
化けたのかどうか、それは本人には分からずとも今までの結果が証明してきている。しかし…まだ足りぬ。
足りぬよ足りぬ、全然足りぬ。
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次回も本編です。




