確かな実感~道~
いつも読んで頂きありがとうございます
「私は何をすればいいの?」
しばらくの間を置いたサツキはギルマスの方へ向き直るとそう言った。
「ん?つまり私の話を受けてくれるということでいいのかい?」
そんなサツキに対してすぐさま切り返してくるギルマスをしっかりと見据えながらサツキは言った。
「話が飛躍してる。交渉において大事なのはお互いの条件をすり合わせることだと学んだ、私は歩み寄りに行っている。だからあなたもそうしなきゃ」
言外にさっさと条件を吐けとのたまうサツキに対し、静かに表情を引き締めたギルマスは言った。
「それはこの話に前向きだっていうこと…「そう言っている」
それを遮り言葉を発し、遮ったのは自分にもかかわらず先を促すようにギルマスに態度で示した。
「分かった。なら話すけれど、誰にも口外しないでくれよ?」
そういうとギルマスは話し出した。
「君は今、ハクミ商会のブレンという跡取りがこの街に来ているのは知っているかい?」
サツキは数秒唸るように思案するとハッと思い出した。
(なんかめんどくさい護衛がいたやつか。なんかブレンとかいうのももう1人の護衛もキラキラした目で私を見てきて…)
「その顔じゃどうやら知っているようだね。しかもなんらかの形で関わっているみたいだ」
表情から見透かされ、情報を読み取られたサツキはむすっと不機嫌になるとギルマスを睨めつけた。
「いや、すまない。癖になってるんだ…、話を続けよう」
ギルマスは視線から逃げつつ話を続けた。
「それならばそのハクミ商会が…ブレン様が色々な意味でおかしいというのも知っているかい?」
サツキのさっきの思い出した内容の中に、隻眼のおじさんが話した内容もあった。
「ブレンじゃなくブレイ、後確か「王鉄」だっけ?」
「うん、知ってるみたいだね。誰に聞いたのかな?」
サツキは特段隠すことでもなかったため正直に答えた。
「おじさん」
「おじさん…バルドルね。まあ彼もある意味関係者だしね」
ギルマスは少し考えるそぶりを見せた後再び話し出した。
「じゃあブレン改めてブレイ様がアプメイ公爵家の倅ということも知っていると…じゃあもう核心に入ってもいいね」
サツキに前提となる知識があることを確認したギルマスは本題に入った。
「実は今、アプメイ公爵家は妙な状況にあるんだ。これは全ての国に存在する冒険者組合だからこそ手に入れられた情報ではあるんだけど…」
ギルマスはそこで言葉を区切ると意味深な目線をサツキに送った。
それに対して…
「いいよ。面白そう」
サツキはこれ以降の話を聞き、自ら沼にハマっていくことを承諾した。
それを聞いたギルマスはコクリと頷き、一拍おいて言った。
「現在、アプメイ公爵家は所在不明の組織によって乗っ取られている。当主の弟である叔父を利用し当主を貶めて傀儡としているというわけさ。タイミング的にもブレイ様をこの旅へ追い出せたのも非常に都合がよかったんだろう…まあなぜ「王鉄」の武器なんか持たせているのかは知らないが…公爵家の権威を利用しようとしているのか、それとも貶めようとしているのか分からないんだ」
そこまで一息に言い切ったギルマスに対してサツキは聞いた。
「それは分かったけれど、仮にも全ての国にまたがる組織がその国の問題をどうこうしようとするのは問題なんじゃない?」
冒険者組合は非常に力のある組織である。その組織の総力だけで、大国一つ以上はあるとされそんなものが国を跨いで存在しているとなれば、勿論ルールも厳しくなるはずで…
「うん、だからこそ君なんだ」
ギルマスはその質問を予期していたかのように言った。
「私はアプメイ公爵家の友達なのさ、だからこの情報を知った時かなり狼狽したよ。不本意ながら私はかなり顔が売れてしまっているし、冒険者組合はこちらに実害が出ない限り、他国への干渉(※今回で言えばアプメイ公爵家)もできないから情報も渡すことができない。この立場を捨てて突撃しようかとも思った」
サツキはそんな告白を黙って聞いていた。
「そんな時に君が来た。君は考え方が違う、生き方が違う、そして何より」
ギルマスはそこで言葉を区切り、サツキを見据えると威圧感を発しながら言った。
「君は突然現れた」
その言葉が発せられた瞬間サツキの体を衝撃が走った。
「フフフ…」
思わず笑いが漏れる…。
「こう言ってはなんだが君には過去がない。本当にポッと現れた。そう、まるで…神の奇跡のように」
ギルマスはそう言いながら笑っていた。
それを見ながらサツキも笑う。
「ギルマス…」
「ん?なんだい。サツキさん」
「私、此処に来てよかった」
「それはそれは光栄だね」
「うん、此処なら、此処ならばもっと…」
サツキは確かな実感を得た。
自然と困難が寄ってくるこの世界でサツキは…
第一章~冒険者編~完
第一章が終わりました。一章92話は果たして多いのか少ないのか…まあ大体15万文字ならそんなもんかな?
書き始めて六ヶ月…なんやかんや半年になりましたが此処まで読んでくださってありがとうございます。初心者ながらたくさんの人が読んでくださったおかげで続けられました。
まあ二章、三章ぐらいまではこんな感じにしようかなって構想があるのでこれからも読んでいただけると幸いです。
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次回も本編です。




