読心と交渉
いつも読んで頂きありがとうございます
「続けてどーぞ」
「う、うん」
何事もなかった。そう、何事もなかった。(※大事なことなので2回言いました)
「それじゃあ改めて、私が此処カイロスのギルドマスターだ。君がサツキさんで間違いないかな?」
切り替えが早いギルマスはすぐに気を取り直すとそう自己紹介をした。
「うん、私がサツキ。後呼び捨てでいいよ」
「ん、ならそうさせてもらおうかな」
気前よく呼び捨てを許すサツキ、そんなサツキはギルマスに問うた。
「隻眼のおじさん…」
「ん?何だい?」
「えーっと…バルドル?だっけ。おじさんはあなたの使い走り?」
隻眼のおじさんことバルドルの名前がうろ覚えだったサツキは、何とか思い出しながらきいた。
「彼そうやって呼ばれてるんだね。う〜んそうだな…あれはただ君にそいう伝えてくれって彼に依頼しただけだから、まあ使い走りって言ったらその通りだけど、ただの依頼かな」
「そう」
サツキはその答えを聞き、少し安心していた。
(おじさんがもし、ギルマス側の陣営だったら敵になった時めんどくさいからね。まるっきり鵜呑みにはしないけれど、まあとりあえずは安心)
サツキ本人は望まずとも…?もし戦闘になってしまった場合、バルドルが出張ってくる可能性もあったため、その可能性を低くできたサツキは素直に喜んでいた。
「まあ君が危惧しているような展開にはならない事を此処でお約束しておくよ」
しかしこのギルマスの心を読んだような発言を聞き、一気にサツキの顔は険しくなり、無意識のうちに魔力の流れが速まった。
「警戒しないでくれよ、言葉の通りさ。私は君と争いつもりは今のところない」
「……」
「どうしようか、警戒されちゃったなあ」
警戒し続けるサツキ、そんな彼女はとても混乱していた。
(目的は何?争うつもりはない?この国で私の影響力なんて全く無いし、こいつが王や貴族どもに今回の首謀者として私を出せば権力的には絶対に勝てない。でもそうすると私は抵抗するから…争いになる。でもそれをする気がないということは…)
考えを収束させたサツキは答えた。
『脅し』では無いよ?」
しかしそれに被せるようにギルマスがそれを否定した。
それを聞きさらに警戒するサツキ。そんなサツキを見て苦笑いしたギルマスは続けた。
「確かに私はこの国ではかなりの影響力を持ってるし、いわゆる強者と言われる者たちへのツテも持っている。だけどまあ…」
ギルマスは少し事実を折り曲げながら伝えた。
「君は何か嫌な予感を感じさせる、だから脅すのはやめた」
アニカのスキルによってわかった情報を隠し、アニカのことを守りつつ、サツキ本人も自覚する異常性を利用した見事な言い分でサツキに一切の違和感を感じさせることなく、それを押し通した。
「だからこれは交渉かな。君がもし私の話に乗ってくれるのならば、この街の領主や国から君の情報を守ろう。おそらく何者にも守られなければ君の情報は伝わって行き、やがて君の元に様々な者たちが集まってくるだろう、まあそれでも君は切り抜けるだろうけどね」
ギルマスはそこで話を区切り、サツキを見ながら黙り込んだ。
「……」
サツキは考える。
将来の面倒と今の面倒を秤にかけて。サツキにしては珍しく、条件を詰めずにその私の話とやらの内容も聞かぬまま…
怖い大人
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次回も本編です。




