説教と言いたいこと
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「た〜のも〜」
言葉から感じる快活さとは裏腹に、もはや他虐を通り越し自虐的な気配を放ちながらサツキは冒険者組合に足を踏み入れた。
そしてそんなサツキの背後からニコニコと笑いながらついてくるカイナと、そんな事をするとは一切考えてもいなかったスカイの慌てふためく姿は…とても対照的で、それだけに個々が際立っていた。
……
「一体お前は…何がしたいんだ!!」
床に座り正座をするサツキ、その横で同じように正座をするカイナ、そんな2人を見下ろしながらガミガミと説教をするスカイ、サツキによってトラウマを植え付けられ組合の隅で固まる新米冒険者、呆れた顔でカウンターからこちらを除くアニカ、組合の階段からこちらを覗き見するギルマス…ざっとそんな様相であった。
「いや、これは違う」
「違わん!私はおはなしをしにきたと聞いたんだが!?これではただの殴り込みだ!」
サツキの言い訳を切り捨てるスカイ。出発前の言い争いではサツキの正論への反抗によって、両者一歩も引かない硬直状態となっていたが、今は、サツキにも多少の負い目があることと、此処が敵地になりうる場所であり、ギルマスが見ていることもあってスカイのワンサイドゲームとなっていた。
「はっきり言おう!お前は常識がない!」
「……」
「果たしてそれが何故なのかなんぞ知らんが、この場所にいるからには此処のルール、常識に準じるべきだ!」
「……ん」
「それが人としての、集団で生きる者の真理だ」
「……っ」
最後のスカイの言葉を聞いた時に、微かに、しかし確かにサツキの頭を駆けた鈍痛…それは確かに…
「まあとりあえずこの話は終わりだ。…ギルドマスター殿、彼女が話をしたいと」
スカイはサツキへの説教を終え、ギルドマスターへとバトンを繋げた。
「うん、そうだね。私が彼女を呼んだから。それじゃあついてきてくれるかな?」
「……」
サツキはジッとギルマスを見つめ警戒するように、探るように目線を向けながら頷いた。
「うん、じゃあついてきて」
ギルマスは二階へ向かう階段を登り始めた。
そしてそれに続くようにサツキが登る…そしてさらにそれに続こうとしたカイナが、スカイによってグイッと引き止められた。
「何さ!僕も行きたい!」
「いや、ダメだろう。常識的に考えろ…全くどいつもこいつも常識がないな…」
呆れたようにそう呟くスカイだが、彼女もまた戦う姿は常識外れと言われている事を、此処では誰も口にしなかった。
……
「さあて、まずは座ったらどうだい?お茶もあるしお菓子もあるよ?」
ギルマスの部屋(執務室)に入ったサツキとギルマスはギルマスは着席、サツキは直立という対照的な状況へと移行した。
「嫌だ。何が入ってるか分からないし、椅子にも何か仕掛けられてるかもしれない。もちろんこの部屋にもだから…」
サツキは早口にそう捲し立てると今入ってきたドアの方へ向き直り、ドアを蹴飛ばした。
「逃走経路も確保する」
そんなサツキの行動に一瞬目を丸くしたギルマスは、元に戻るとサツキに聞いた。
「えーっと、2ついいかい?その状態じゃあ話を聞かれてしまう恐れがあるけど?」
律儀に機密性について心配する彼の評価をほんの少しあげたサツキは答えた。
「大丈夫。誰も近寄らせないから(あのスカイとかいう女がね)」
サツキにはスカイがそういう奴だという確証を持っていた。
「(カイロスの安全のために、わざわざ私の尾を踏むようなことはしないし、させないでしょう)」
そんなサツキの考えを知らないギルマスは、仕方なく納得しつつ、二つ目の質問を投げかけた。
「そうか。まあ君がいいならいいんだけどね。…それでもう一つはね、あの扉結構高いんだよね、ハハハ」
「……」
サツキはそういえば此処自分のものじゃなかったと、今まで壊せる環境にいすぎた弊害か、その一言を聞き非常に焦っていた。
怒られてばっか
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次回も本編です。




