神達と蛯イ諷「
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「いやー意外も意外、まさかあの竜が欲兄の眷属になるなんてねー」
止まった世界、止まった時の中を一切気にすることなく歩き、サツキの隣まできた全知神は言った。
「ふん、この程度のことお前が知らぬはずもあるまい。なんせあれには私の残り滓のような力しか残っていないんだ、知れないはずもない」
それに対して見知らぬ女の子を肩車した欲神が横に並びそう返した。
「あ、バレた?」
「……」
そんなふうにからかってくる全知神を無視しながら、欲神は女の子を背から下ろした。
「時、そのまま止めておいてくれるかい?」
全知神はその女の子にそう聞くと、彼女は眠そうな目を擦りながら頷いた。
「じゃあ確認してね、欲兄さん」
「ああ」
欲神は竜に向かって歩き出すとその手を竜の方へ向けた。
「ふむ、やはりとてつもなく少ないが**がある。まあ大方これと欲望と理性とを利用して眷属…我が眷属の末端へと至ったようだな。さしずめ「欲竜」といったところか」
魔力に混ざる自身の**を感知し、そこから眷属としての格を推測った欲神は静かに手を下ろした。
「それで、どうするの?」
全知神の問いに込められた、処分か登用かの二択の選択。本来なら処分してこの世界の養分とする欲神だったが、しかし欲神として、自分の欲による産物は自身が責任を持つという思考によってその命は生きながらえた。
「持って帰る」
「その心は?」
「…そこだけ知れるようにした」
「…ああ、そういう事ね。兄さんの在り方がこれの命を救ったわけだ」
1人納得する全知神は徐にサツキの方を見た。
「おっと、これ反抗してきてるな」
その言葉通り、止まる世界にいてサツキの凍りついた思考は熱を帯び始めていた。
「時、もう少し強くできるか?」
欲神がそう聞くと時…時間神は目を見開きフルフルと首を振った。
「僕達に影響が出てもいいから少し強くできない?」
しばらくうーんと目を瞑った時は頷くと目を開いた。
「おっと」
「おお、強くなったな」
確かにその効果を実感した二柱は目的を果たすため行動を早めた。
「じゃあまずこの竜は天界に送ろう、宛先は…兄さんの領域でいいよね?」
「ああ、それでいい。時、もう一つ頼めるか?」
時間神はこくりと頷くと、分かっていたかのように眷属を召喚した。
その眷属は数匹の蝙蝠で、それ1匹1匹から竜以上の力が発せられていた。
「これ、持ってね」
やっと二言喋った時間神は蝙蝠達に竜をつかませ持たせると、全知神に目配せした。
「じゃあ知識を付与するね、ほい」
受け取った蝙蝠達は空を飛ぶとある程度の高さまで上昇してゆき…やがてパッと消えた。
「これでオッケー、それじゃあ次は…」
蝙蝠を見届けた全知神の目はサツキに向き、サツキに近づいた。
「それじゃあ確認だ」
全知神は再び覗いた…。
(ん?おーっと、これは…表層が現れてきている…ああ、そっか。魔力はこれにとっても天敵だから上手いこと削れたんだ。偶然とはいえ中々やるな。時が止まってるから前みたいにすぐ来ないけどそれでも長居はできないな…)
しばらく覗いた全知神は戻ってくると二柱に語りかけた。
「うん、まあどうせ消滅させられないんだし悩んでもしょうがないね。帰ろうか」
全知神は内心楽しんでいた。兄弟を除きなんでも知ることができる自分が行く末のわからない存在…とても、とっても、楽しんでいた。
「帰るか、時、ありがとう」
欲神が礼を言うと時間神は目を開けて頷くと手を伸ばした。
「ああ、肩車だな」
その様子を微笑ましく見つめながら全知神は思った。
(願わくば新たな兄弟とステキな反発者が現れますように)
…知らない知らない、誰も知らない、それがもうすぐ現れる、それがもうすぐ暴れ出す、そんな時代がもう少しで…そう、もう少しで…
「私は が一番 蛯イ諷「 だと思うんだ」
「だってそうだろう?」
「そんな余裕あるのかな?」
「そんなに自分は のかな?」
「思い上がるなよ、 風情が」
「 訳がないだろう」
「だけれど私はそれを行う」
「とんだ皮肉じゃないか」
「 されぬ怪物が をする」
「ククク…」
「だからこそ、なればこそ、私は…」
「 蛯イ諷「 だ」
独白かな?
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次回も本編です




