実感と次元
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この世界における竜や龍と呼ばれる存在は本来、食事を行わない。
仙人が霞を食うなんていう逸話があるように、竜は空気中の魔力を吸収して腹を満たし、ただそれだけの行為で更に自身の血肉を強化して最強へと近づいてゆく。
しかし此度の竜は神に生み出されし特別製。自身に起こった影響から無限に進化するサツキへの試練。特殊な出自からほんの僅かな**や、欲神の性質を受け継ぐことによって、備わってしまった欲、それを制御し始めていた。
そしてそれは「制御された本能」を身につけた。
<サツキ>
思考を続けるサツキは、走ってくる竜を横目に見ながら思案を続けていた。
(あの魔力波によって、当たった部分から体がずらされた?ズレた体が固定されたままの体の方に押し付けられて、体の境目に力場が生まれて…それに潰される前に魔力波が体の全ての部分を通ったことで…)
サツキは初めての感触、知らず知らずにそれに触れていたことを初めて実感し息を呑んだ。
「死なずに済んだんだ」
全てがずれることによって力場は消え、ただ反対方向へ飛ぶためのエネルギーとなった、しかしこれが例えば中途半端な位置で魔力波が止まってしまう、または消えてしまっていたら、サツキの体は…
「…死に近かったんだな…」
「……」
そんな感傷に浸るサツキに対しバルドルが声をかけた。
「おい!嬢ちゃん、もういいだろ。早く戻ってこい、竜の様子が…おかしい!」
そんな声に釣られ、サツキは横目に見ていた竜を正面から見据えた。
真っ直ぐとサツキに向かって走ってくる竜は、突如「魔力波」によって吹き飛んだ天井から、いつの間にか再生された翼で飛び立つと、上空で突如何かに包まれた。
それは、形容し難き色をしており、まるで…人の、否!竜の、否!魔人の、否!獣人の、否!エルフの、否!…生物の醜さを煮詰めたような…そんな雰囲気を纏っていた。
そしてそれはドロリと形を崩し、空から落ちて地面に滴った。
「うわっ!なんだこれ、地面が溶けてやがる」
ボルダーの言う通り、それは地面に落ちると土を溶かしジワジワと下に下がっていった。
やがて全てのナニカが滴り落ち、その中から出てきたそれは、確かに先程の竜…をベースとしたナニカであった。
体からは先程の何かが滴り落ち、地面を溶かす。再生されたはずの皮膜はところどころ穴が開き、鉤爪は何かを刈り取るかのように鋭く湾曲し、色は形容し難き色をしており、鼻の穴からは見るからに体に悪そうなガスが漏れていた。
そして何よりそれからは、まるで聖霊のような、そのような神の気配が感じ取れた。
「な、なんですの?あれは…」
「お、おかしいだろ、なんであんな見た目で…」
「あの竜は神の使いだったのか?いや、それならば最初から分かるはずだが…」
「どうなってやがるんだよ、これ、倒して大丈夫か?」
混乱する者、分析する者、心配する者、四者三様の反応を見せるバルドル達だが、サツキは実際に神にあったことのある経験からあることを感じ取っていった。
「次元が違う。これは倒せないなあ」
サツキは、かの竜が自分たちの存在する次元、位相からもう一つ上の次元に移ったことを確信していた。
「普通に考えて高次元の存在は、低次元に干渉はできても現れることはできないはずだから、あの神もこの竜もここに存在しているのはおかしかったしおかしいんだけれど…」
ここで説明しよう!
例えば我々人類は三次元という縦横高さで構成される場所に存在している。
そこで二次元…縦横のみの世界に存在する人類がいると仮定すると、その二次元の世界は紙であり、我々三次元の存在は、紙に触れるや書き込むなどという行為でその世界に干渉することができるのだ!
高次元に存在する生命は低次元に干渉できる…しかし!我々三次元の存在が、二次元に行くことができないように、高次元の存在は低次元の世界では存在できないのである。
ここが矛盾点!サツキの考察の通り、これは確定された事実であり不変だ。しかしそれを破れているのは…
「まあ、ここに降りてきている以上、あれは倒せるだろうけどあれがどういった手段でここに降りてきているのかわからない以上、無理だな」
サツキはこいつは何を言っているんだ?という顔で見てくるバルドル達を横目に見つつ、竜の様子を伺った。
そして直後、図書館で感じた空気をサツキは感じ…そして全てが等しく止まった。
みなさんわかりました?
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次回も本編です




