交渉と善意
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「別に…私は、この国に…忠誠を誓ってないから…大丈夫ですよ」
私が思わず武器を用意したことに感づいたのか彼女はそう私のことを落ち着かせようと答えた。
「…じゃあ貴方は何を刷り込まれているんだ?」
私は未だ彼女の在り方、彼女の意思がそこになかったとしてもその在り方であることに嫌悪感を抱き「忠誠を誓っている」を刷り込みと表現し皮肉を添えた。
しかし彼女は気にした様子もなく私に対し今まで通り返答した。
「私の忠誠は…坊ちゃんただ一人に」
(予想通り…期待通りの返事だな、坊ちゃんに手を出さなければこいつは無害か…今の実力じゃ逃げれるかも怪しいからね)
私は彼女から期待通りの返答を得ると手の中のマキビシを消した。
(それにしてもこの力意図せずやっていたけれど凶器を再び魔力に還元できるのか…ますます暗殺向きだね)
そんな他愛のないことを考えつつ私は彼女に向き合った。
「わかりやすくていいね、内心はともかく貴方みたいなモノは一点に関しては信用できるからね、それで目的は達成できた?」
「はい、とても。もしかすると…後日伺うかもしれません、その時は…」
「うん、まあ話だけならね」
私は言質を取られぬよう慎重に言葉を選ぶと今度は先ほどとは逆に私がお風呂を出ることにした。
「出るのですか?」
「うん、結構長く浸かったから」
「そうですか…それではまた…」
「またいつか…ね…。ああ後貴方の同僚の男いるでしょ?」
「彼は…」
「あいつに言っておいて、見逃してやるって」
「一体何を?」
「そういうことだから」
私はまだ何か聞きたそうにしている女護衛…ノートを放って外に出た。私は宿の人から服を受け取るといそいそと着替え始めた。
<お風呂の後…>
私は着替え終わった後そのままの勢いで食堂に来ていた。
(お腹すいたな〜って本当に人が多いな、この宿泊まっている客以外にも食堂を開放しているのか?)
宿泊客の数ではとても足りないぐらいの人たちがこの食堂には集まっていた。そしてそんな客たちにはある一つの共通点があった。
(みんなこの街の普通より金持ってそうだな、やっぱりご飯の金額も高いのかな?)
そう、ここにいる客たちはいかにも金を持っていますという商人や貴族が多くその他は護衛かBランク以上の実力がある冒険者たちだけだった。
そしてそんな成金と上等なゴロツキの間に、お風呂に入りたてで石鹸や洗剤を使っていないにも関わらず、なぜかいい匂いがするサツキがいれば、その夜のような黒い髪と見た目の幼さ、この辺では見ない容姿もあいまってちょっかいをかけられるのは当然のことだった。
まず最初に|ちょっかいをかけたのは、BランクのパーティーメンバーのCランクだった。
「なあなあ嬢ちゃん、こんなところでどうしたんだ?」
「…?私?私ですか?」
「ああそうさ。ここは「聖神の抱擁」だぞ?嬢ちゃんが泊まれるような宿じゃないんだ」
「え?今の私を見てそれを言ってる?どう見ても風呂上がりですが?」
「ああ、ああ大丈夫わかってる、わかってるさ、どこかの貴族に夜伽のために身を清めてこいって言われたんだろ?辛いよな、だけど大丈夫だ。うちのパーティーはBランクのノルタさんがリーダーをやってるんだ。俺たちがガツンと言ってやる。どこの貴族に言われたんだ?」
私はここで多大なる違和感を覆えた。今までのテンプレではなくこの人は本当に心配してくれているのでは?と。
(なんか思い込み激しいけれどいい人…なのかな?まあBランクなら色々言えるのかもしれないけれど…う〜んめんどくさいな)
私はありがた迷惑ってこんな感じなのかと理解すると黙ったままの私が言えなくされていると考えたのか男は周りにいる貴族に向かって睨みをきかせ始めた。
「こんな小さな子を…クソ貴族が…」
(おいおい、睨みだけじゃなく殺意も滲んでるよ?巻き込まないでほしいなあ)
私は貴族どもにグルだとみなされていちゃもんをつけられる前にこの男の人をなんとかすることにした。
ちょい長めですね。
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次回も本編です




