カイナと齟齬
お願いします
(…私昨日どうやってお風呂に入ったんだろう…?)
私は脱衣所で丁寧に服を脱ぎ宿のお姉さんに服や持ち物を渡すと風呂の中に入っていった、のはいいのだが昨夜は意外とプッツンしていたので何も考えず無我夢中で入ったためかどうやってこの風呂を使うのかわからなかった。
(なんか体を洗うっぽいところもないし思ったより浴槽もちっさいし…なんか拍子抜け)
このまま入口で唸っていても何も起こらないため私は近くにいたなかなかナイスなバディをしたお姉さんっぽいけど同い年っぽく見える女性にどうやって入ればいいのか聞くことにした。
「こんばんわ」
「ん?えっ!ええ〜!ぼ、僕?」
(ワオ、僕っ子だ。日本みたいな養殖じゃなく天然の)
私は妙に驚かれたことと異世界の天然物に遭遇し驚きつつ肯定した。
「はい。今大丈夫ですか?」
「いや…大丈夫だけど…本当に僕?」
何故か食い下がってくる彼女の質問に肯定の頷きを返しつつ質問で畳み掛けた。
「私、昨日もこのお風呂に入ったのですが昨日はちょっと色々あってプッツンした状態で入ったのでどうやってここを使っていいかわからないんですよ、教えてくれませんか?」
「ああ昨日ね…」
(彼女も昨日見ていた中にいたのかな?)
「そういうことなので…」
「よし!いいよ。僕が教えてあげる!その代わりに…」
私は勿体ぶった話し方に少し警戒しながら続く言葉を待った。
「君のことを教えて?」
「へ?そんなことでいいんですか?」
「うん!君のことが知りたいな」
私はいい笑顔の裏に何か悪意が潜んでいないか確認した後、純粋な興味しかないことが明らかに見てとれたためその対価で行くことにした。
「いいですよ。まあ答えられないのもありますが…」
「よし!それじゃあ君じゃあ呼びずらいから名前と歳を教えてよ」
「サツキ、16歳です」
「サ・ツ・キ、サツキ、サツキちゃんね…って16歳!?」
「はい」
「同い年じゃん!敬語なんてしなくていいよ」
「ん、それじゃあそうする」
「いいね!」
「あなたの名前は?」
「僕の名前はカイナ!傭兵団「黒き鉄槌」の切り込み隊長だ」
「カイナ…カイナね、わかったわ」
「それじゃあ早速説明していくよ」
私は歩き出したカイナの後をついていった。
「よし!こんなところかな」
「ねえ、本当に石鹸はないの?」
「ないって。というか本当にそんなものあるの?僕聞いたこともないよ」
私はカイナから説明を受けた後、この世界には石鹸つまりシャンプーやリンス、ボディーソープがないことに落胆していた。
「(暗殺者にとって匂いを消すのはとても大事なことなのに…)」
「ん?なんか言った?サツキ?」
「いや何も言ってないよ」
事実、殺来の生家である死飼家では無味無臭の体についた匂いを消し余計な匂いをつけず潜入先の匂いにすぐ馴染むことができる素晴らしいシャンプーや…(以下略)が独自開発されており、表向きの四海家は洗剤作りの名家なのである。
(まあ仕方ない、ないものはないんだ。だけどこの世界で絶対に代用品を見つけてやる)
サツキは謎の使命感を燃やしているとカイナから声がかかった。
「はあ仕方ないな、僕も傭兵団の仕事で色々行くからいろんなところで聞いてあげるよ…はい!この話はおしまい。わかった?お風呂の使い方」
「ありがとう。うん、使い方はわかった。走らない、騒がないとか基本的なことに加えて入る前に体を流して入るだね、洗ったりしないの?」
「んー正直生活魔法の「浄化」があるからお風呂はいらないんだよね。貴族とかこういう高級宿の嗜好品みたいなものだし…実際僕も今日初めて入るからルールもさっき知ったんだけどね」
残念ながらこの世界のお風呂に実用性はないようである。
「サツキは何回も入ったことが?」
「うん。生まれてから入らなかった日はないよ、好きだしね」
「サツキは…いやなんでもない」
(あれ今の私の発言って私お金持ちですよアピールみたいなものか?)
私は未だ常識に齟齬があることを再度理解しつつ体を流し始めた。
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次回も本編です




