外道とポンコツ暗殺者?
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(おじさんごめんね。だけどヤリたくなっちゃったんだ)
私は心の中でおじさんに謝罪しながら、一つだけ感じていた気配が薄い人の方へ向かって「暗殺走行」を行いながら走って行った。
「暗殺走法」は普通の走りと比べ少し遅いぐらいで、大したデメリットもなく、いい技を開発したななんて考えながら走っていると、突如上から殺気と共に短剣を構えた襲撃者が落ちてきた。
(ん?これわざとやっているのかな?)
私は少し困惑しつつ最小限の動きでかわすとベルトから短剣を一本抜き放ち襲撃者に向けて振るった。
(随分とチグハグだな?)
襲撃者は私の返礼に対し風の魔法?を使って自分の体を押し出しその勢いで離れた。
「こんにちは襲撃者さん。随分な挨拶ですね?」
「…」
「ダンマリですか?」
「…」
「それにしても随分とチグハグですね。探知するのはうまいのに殺気を隠すのは下手なんて」
やっとまともに反応して今度は沈黙の代わりに殺気を叩きつけてきた。
「それで私に何の用ですか?」
「…オマエニヨウハナカッタガ、オマエハワタシニカカワッタ。ショウガイニナリソウデ、ナオカツモクゲキシャハコロサネバナランタメハイジョスル」
どうやら変成器か何かを使っているようで男か女かも判別できない不思議な声だった。
「ろくな用事じゃないですね。まあ本命はあのおじさんでしょう?」
「…ソウダ、イマハオマエモダガナ」
「まあ、私が首を突っ込んだんでそれはいいですよ」
「…オマエハジジョウヲシッテイルノカ?」
…事情ってなんだろう?おじさんのことかな?
「そんなもの知りませんし興味もないですよ。どっちにしろ私を殺すんでしょう?ならもう関係なくないですか?」
しばらくの沈黙の後、襲撃者は答えた。
「ソレモソウダ。ソレナラバキサマモソノコトバズカイヲヤメロ。モウイミガナイダロウ?」
…なんか見透かされたんだけど。せっかく丁寧にやっていたのに…
「そう言うならそうするよ。まあどっちにしろどっちかは死ぬんだけどね」
「ソウダナ。シヌノハオマエダ。オマエヲコロシターゲットモコロス」
「ヤッテミナヨ、なんちゃって」
瞬間、襲撃者は動き出した。
襲撃者は真っ直ぐ私との距離を詰めながら同時に先ほども見せた風の魔法を撃ってきた。私は魔法のこともちゃんと聞いておけばよかったと少し後悔しながら、短剣を構えた。
風の魔法は「風」と言うだけあって無色なのでどこまでが効果範囲かがわからないため、大きく迂回して避けるとそれについてくるように襲撃者は短剣を振るった。それを短剣ではなく戦闘用に買ったブーツで受け止めると襲撃者はそこで受け止めると思っていなかったのか一瞬動揺した。私はその隙に短剣であえて足を刺そうとしたが至近距離で風の魔法が炸裂し2人とも反対方向に吹き飛ばされた。
「仕切り直しってわけ?」
「ソンナトコロデハアルガ、ナカナカヤルナ」
「そっちもね。だけどあなたさ、それ本来のスタイルじゃあないでしょ?」
私はあの短い戦いの中で一つ気づいたことがあった。それは襲撃者が暗殺者ではないと言うことだ。
襲撃者は仮面越しでも分かる驚きの表情を浮かべた。
まあ分かるのは私があの爺さんどもに人の筋肉の動きを教わったからなんだけどね…
「なぜって顔してるね。普通暗殺者ならばその状況下において利用できるものはなんでもしようとするんだよね。だから暗殺者なら、私なら風の魔法を地面に打って砂埃を上げて自分に有利な状況を作るし毒を混ぜたりもすると思うんだ」
そう言うとこいつやべえみたいな顔で私を見てきた。
「どうかな?いや答えはいらないんだけどね、気になったから」
しばらく黙り込んだ後返事が返ってきた。
「…キョウハトリアエズ、ヨシトスル。コンドハワタシトシテオマエノマエニタツ。マッテイルガイイ」
「え?帰るの?もうヤンないの?」
「ヤラン、カエル」
そう言うと襲撃者は私のアドバイス通り風の魔法で砂埃を巻き上げて消えて行った。
まあ私の感知では走って行っているのがわかっていたのだけど…なんかごめん。
次回別視点になりそうです




