騎士とAランク冒険者の受難
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私達騎士団は冒険者組合でケンカ沙汰が起こっていると、騒ぎを聞きつけ逃げてきた人たちから通報を受け、新人の騎士たちにもいい経験になるかと思い連れていった。
冒険者組合に着くと、もうあらかたかたはついていた様で、私達がついた時には小さな少女がよく問題を起こし、騎士団の詰所に連れていかれる冒険者を殴って気絶させているところだった。
とても鮮やかな手口で、ここにいる全員の意表をついていた。
その全員の中には、なぜかAランク冒険者のバルドルさんもいらっしゃった。
そして私はもう一つの事実に気づいた。彼女はおそらく部隊長たちが身分を保障してこの街の中に入れた者だと。
だとしたらまずいことになる。
私はそう考えて彼女に話しかけに行った。
「冒険者登録の再開お願いできますか?」
こんな状況でよく続けようと思うものだ、と感心しながら声をかけた。
「すみません、少し待ってください。話を聞きたいんですが…」
するとこっちを見て一瞬何事か考えると、
「無理です、後にしてください」
と一蹴した。
部隊長が言っていた話とだいぶ違うな、と考えつつ、来てもらうために面倒ごとになると伝えた。
「でもそうなると君が色々と面倒なことになっちゃうんだよね」
「脅してるんですか?」
…確かに脅しとも取られかねなかったかもしれない。
「いやそうじゃないが…」
否定するとそれに乗じて、たたみ込んできた。
「これってこんなのをのさばらせたあなたたちの落ち度ですよね?」
「うっ、それを言われると…」
「それに私が悪くないことは周りの方もわかっていると思いますよ?」
ケンカが起こっていると通報を受けただけなのでよく分からないが…
「ねっ?隻眼のおじさんや組合の人達?」
Aランク冒険者のバルドルさんはおじさんと言われ落ち込んでいたが、周りの人たちは頷いていたためどうやらそうらしい。
どうやら彼女に落ち度はない様なので、まずは彼女の冒険者登録を待ち、その間に彼女と揉めていた男を連行することにした。
彼女はちゃんと話を聞かせてくれるだろうか…
<Aランク冒険者バルドル視点>
あの後再びおじさんと言われ傷ついていた俺は、しばらくして立ち直るとあの嬢ちゃんに俺を…お、おじさん…と言ったことを問い詰めるため、万が一ケンカになっても問題ない組合の外で待つことにした。
組合の外に出ると、先ほど嬢ちゃんに向かって話しかけていた騎士たちが、外に立っていた。
「こんばんは、バルドルさん」
騎士の1人が声をかけてきた。
「お前らもあの嬢ちゃんに用があるのか?」
俺が聞くと、彼は頷いて肯定した。
「言っとくが俺が最初に話をするからな?それが終わったら自由にしてくれ」
そう言うと、騎士たちは驚いて、
「協力していただけるのですか?」
と聞いてきた。
「まあ目的は一緒だしな、俺の用事が終わった後なら問題ねえよ」
そう言うと律儀に礼を言ってきた。
しばらく待つと、やけに嬉しそうな顔で嬢ちゃんが出てきた。
嬢ちゃんは俺たちを確認すると、騎士達の「ご同行願え…」と言う声を無視して一目散に走り出した。
せめて話ぐらいは聞くだろうと思っていたため、咄嗟のことに驚いていたが、「ま、待ってください〜」、「おい嬢ちゃんちょっと待ってくれよ!」と騎士達と一緒に走り出した。
俺の「走術」のlevelは56ある。嬢ちゃんがいくつかは知らないが、追いつけない道理はない…そう思いつつ俺より速かったらどうしようと思っていたが…
みるみるうちに距離が縮まっていったが、もうすぐというところで、嬢ちゃんの全てが薄くなった。
またあれか!と思いつつ俺の「探知」を欺くレベルではないようで、先ほどと同じ様に嬢ちゃんを追いかけた。
すると、「隻眼のおじさん」を超える精神攻撃を俺に加えてきた。
「隻眼のおじさん!!しつこいおじさんは余計モテないよ!!」
俺は崩れ去っていた。
そうか…モテないか…
俺が膝をついて呆然としている間に嬢ちゃんは行っちまった。俺はその背を見送ることしか出来なかった。
やげてその背も見えなくなり俺は発狂した。
「嗚呼嗚呼ああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
そんな俺の姿を、途中から嬢ちゃんを見失って混乱した騎士達が変人を見る様な目で見続けていた…
もう…やだ…
次回も別視点かもしれませんし本編かもしれません




