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バケモノに至し暗殺者  作者: ヤヒド
冒険者編
13/115

下手な演技と教育

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<冒険者組合受付嬢アニカ視点>

私は、彼女(サツキさん)が冒険者組合から去った後、すぐさまギルドマスターの部屋に向かった。

向かう途中で護衛の方々などに止められたが、「ギルマスに緊急の要件です」と言い押し通った。

ギルマスの部屋に着くとノックをして「()()()()()について緊急の話があります」と告げた。

ウラオモテというのは私のスキル「聖邪判定」で聖でも邪でも大きく深いオーラを持っている人がいたときに、緊急と要件を伝える隠語である。

しばらく待っていると「入っていいよ」と返事が返ってきた。

私は部屋に入ると、いつもと変わらない態度のギルドマスターに少し緊張がほぐれたが、すぐに報告を始めた。


「それで今回見つけた()()は、どちらの性質を持っていたかな?」

「ウラの性質を持っていました」

「それは本当かな?」

「ええ間違いありません」


私はいつの間にか出されていた紅茶で口の滑りをよくしてから、意を決して話し始めた。


「そのウラの方は女性で、まだ16歳なので少女と言ってもいいでしょう」


ギルマスは女性で尚且つまだ16歳ということに少し驚いた様子だったが、先を促す様に頷いた。


「彼女…サツキさんは、()()()()普通の人と同じような、聖と邪が混じった小さなオーラだったんですが、違和感を感じて深く見てみると、そこには濃紫を通り越してもはや漆黒で、無限かとも思える様なオーラが広がっていました。今はまだ秘められているだけでしたが、()()()()が解き放たれたらどうなってしまうのか…」

「そののサツキという人物は君から見てどうだった?」


私は少し考えて言った。


「少し常識を知らないところもありますが、元Cランク冒険者のアルガさんに認められるほどの実力があることも確かです。しかし彼女の逆鱗がどこにあるかは分からず、私のスキルを知る人もこの組合内には少ないため、どうすればいいか困っています」

「今の彼女の実力はどれくらいだと思う?」

()()Cランク中位ぐらいだと思います」


ギルマスは少し考えた後、再び質問してきた。


「そのサツキさんほどのオーラの持ち主を、君は聖の性質を持っている人で見たことがあるかい?」

「いいえ、ありません」

「勇者候補は?」

「オーラの大きさや深さという点では、塵の様なものかと」


フゥーとため息をついた後、ギルマスは言った。


「僕も一度会った方がいいかも知れないね…」


私が何か言う前に彼は続けて言った。


「すまないね、君を危険な目に合わせないと約束してそのスキルを利用させてもらっているのに、君を彼女の危険性を訴える証拠として王の前に出す時が来てしまうかも知れない…」


さらに続けて少し芝居がかった調子でいった。


「今僕は君が入ってくる前に飲んでいたワインで酔ってきてとても眠い。この国が大変なことになった時に、他国に逃げる準備をしたマジックバックとかが僕の机の中にあるけれど、寝てしまうから気づかないだろうなー」


そう言ってギルマスは椅子の上で目を瞑って沈黙してしまった。

私は唖然としていたがしばらくすると腹の底から笑いが込み上げてきた。

私は働いている同僚達に不審に思われぬよう、声を上げぬよう押し殺しながら笑った。

いい上司を持った、と誇らしくなり、漠然と抱いていた未来への不安が少し弱くなった。

しかし、逃げてもいいと、私の覚悟と6年間の生活を否定された様な気がしたので、私は意趣返しとしてこう言い残してギルドマスター室を出ていった。


「ギルマスが職務中にお酒を飲んでいたって、秘書のノエルさんに伝えておきますね!」


ギルマスは寝ているはずなのに()()()ビクッとなると、汗をかき始めた。

さっきのは確かに演技で、ワインを飲んでいなかったのだろうが、今まで飲んだことのあるような動揺の仕方だった。


「それでは良い()を〜」


私が出ていくと、ギルドマスターの動揺した、「どうしよう、どうしよう」と言う声が聞こえてきてついニヤッとしてしまった。

もっと前向きに頑張ろう、そう思った今日この頃だった。


後日ギルマスがノエルさんによって、教育(オシオキ)を受けている姿は、多くのギルド職員の笑いを誘ったという…


「あっ!アニカちゃんた〜す〜け〜て〜」

「フッ」

「あっ、鼻で笑った!」

「無駄話している暇はありませんよ!そんなにお酒が好きなら飲ませてあげます!」

「嫌だ〜飲みたくない〜」



次回も別視点かもしれません

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