ステータス確認と宿屋でのいさかい
お願いします
鍛冶屋から出て教えられた宿屋「聖神の抱擁」のある方向に向かって歩いていると、いい匂いのする屋台がたくさん並んでいる通りに出た。
そこで一際目を引いた屋台に近づくと、その屋台は串焼きを売っていた。
「こんばんは、是非いかがですか?」
「これはなんの串焼きですか?」
「これはオーク肉を秘伝のタレにつけて焼いた特製の串焼きです!とても美味しいですよ」
「じゃあ3本いただけますか?」
「はい!ありがとうございます♪3本で900ミムです♪」
私は900ミムを支払うと受け取った串焼きにかぶりついた。
秘伝のタレが芯まで染みていて、脂が口の中で溶け肉がホロホロと崩れた。
「すごく美味しいですね!」
そう言うと店員さんは嬉しそうな顔をして「良かったです♪」と言ってきた。
少し行儀が悪いが歩きながら食べているといつのまにか目的地まで着いていた。
なかなか大きく馬を泊めておける場所もあり、上にある3本の煙突から黙々と煙が出ていた。
扉を開けて中に入ると受付台のようなとこらがあり、そこで受付をするようだった。
日本でいうところの呼び鈴のようなものがあり、それを鳴らすと奥から女の人がやってきた。
「はい、こんばんは。何の御用でしょうか?」
「ここに宿泊したいのですが大丈夫ですか?」
彼女は少し驚きながら言った。
「泊まることについては問題ないのですが…ここは宿泊料がかなり高く…」
「大丈夫だと思います。一泊いくらでしょうか?」
「一泊10000ミムとなっております」
「それではとりあえず一泊お願いします」
そう言うと私は10000ミムを払った。すると登録のために名前を聞かれた。
「サツキさんですね。それでは説明をします」
名前を確認すると、この宿についての説明をしてくれた。
「この宿には一階に大勢が入れる酒場兼食事処、貴族の方などがよく使われる個室の食事場所、大浴場があり、2・3階には各お部屋、4階は貴族の方などが使われる特別なお部屋です。またお客様どうしのいさかいに関しては宿屋に被害が及ばない又は我々が原因でない限り不干渉とさせていただきます」
最後の一文だけやけに力がこもっていたが、まあいちいち関わってられないもんな。
「分かりました。ちなみに食事ついてきますか?」
「はい、もちろんです!今はもう夜なので、今日の晩御飯と明日の朝ごはんのみとなりますが」
「大浴場は何回でも入ってもいいんですか?」
「はい問題ありませんが、時間が決まっていて午前0時と午後0時は空いていません」
この世界ではこの時間帯は古いものが滅び新たなものが創られるため様々な準備時間とられているらしい。
「分かりました。それでは部屋に行ってもいいですか?」
「はい大丈夫です、案内しますついてきてください」
そうして2階に上がり案内された部屋には大きいベットと小さな机、そこに付随した椅子が置かれていた。
またランタンも置かれていたが、「火事になったらどうするんですか?」と聞くとクスリと笑って「それは魔力を流すと光るんですよ」と言われ少し恥ずかしくなった。
「ご飯を食べたくなったら降りてきてくださいね」そう言って彼女は降りていった。
私は暇になってしまったので今日の成長を確かめるためにステータスを見ることにした。
「ステータス」
<ステータス>
名前・サツキ シカイ(隠蔽中・死飼 殺来)
年齢・16
<スキル>
短剣術level 9・走術level 8
歩行術level 9・体術level 7
簡易武器創造level 2
威圧level 2
(隠蔽中・暗殺術level 5・隠蔽level 3)
<魔法>
闇魔法適性
風魔法適性
(隠蔽中・禁忌-古代魔法適性)
<固有魔法>
(隠蔽中・「??」魔法)
<称号>
九死に一生
メンタルブレイカー
(隠蔽中・未経験の暗殺者・異世界転移者)
<加護>
(隠蔽中・厄災神の加護・混沌神の加護・邪神の加護)
一つ新しいスキルと新たな称号を手に入れたようだ。「隠蔽」のlevelも3になっている。
新しいスキルと称号の効果も確認してみよう。
<スキル>
威圧(level 2程度の他生物に対する威圧ができる証)
<称号>
メンタルブレイカー(他生物の精神に多大なる破壊をもたらしたものに与えられる。効果・「禁忌-古代魔法」に含まれる「洗脳術」への適性が上がる)
私はそっとステータスを閉じた。見なきゃよかったと激しく後悔した。
私は気分転換をするために一階にある大浴場へ向かうことにした。
部屋から出て一階に向かうと食事処で食べるために歩いていく商隊の人達や、個室に食べに行く貴族、4階に給餌をしに行く人達などで混み合っていた。
私はお腹はさほど空いていなかったので、まずは大浴場に行こうと人並みを避けながら進んでいると、大浴場の扉に手をかけようというところで、誰かに声をかけられた。
「お前のことを気に入ったと、あそこにいらっしゃる私達の主人、ハイシ子爵様がおっしゃっている。お前の様な平民が子爵に目をかけてもらえるなどとても光栄なことだ。大浴場で身を清め4階にある子爵様の部屋にすぐいくといい」
なぜ受付のお姉さんが、不干渉と言っていたのかがよく分かった。
私はこれでも結構な美人だと自負している。日本でもナンパされることもあったし、さらにこの世界の、この大陸の人間にとっては、私のこの夜のような髪と瞳が珍しいのも分かっていた。
きっとこの時の私は、自分の未知の可能性をいきなり提示されて、頭も疲れてしまっていたんだと思う。
だけどその疲れ切った頭でも、その子爵様とやらの視線ははっきりと認識できていた。
自分が望めばこんな平民の娘如き自由になると考えている、その視線が心底嫌だった。
殺来の生家である死飼家は、暗殺者という人に使われ仕事を行い日銭を稼ぐ家業でありながら、昔からあるものが先祖代々心底嫌いだった。
これはある意味遺伝と言ってもいいだろう。
それは平民を統治する身分にあり、その平民が作ったものを税として受け取りながら、いつの間にかただまとめているだけなのに、平民を自分たちの奴隷だと勘違いしている権力者どもである。
当時の権力者たちにとっても死飼家はとても扱いずらかっただろう。
まだこの世界の平民の女たちならば、喜んで身を捧げにいったかもしれない。
しかし私は、基本身分差のない国、日本から来て尚且つ死飼家次期当主の一人娘「死飼 殺来」だ。
このまま殺してやろうかと思ったが、貴族ということは殺した場合、最悪この国を出て逃げ回らなくてはいけないと思い、返礼を殺すことの次にわかりやすい形で返してやることにした。
私も昔なら殺してただろうに自制が効く様になったなと思いつつ、私の最大限の殺意を威圧としてピンポイントに子爵様だけに放ってやった
すると腰を抜かして、私に話しかけていた護衛の様な人達と一緒に階段に登って行こうとした。
子爵様が登っている間に、あの殺気を私が放ったって子爵様じゃ分からないんじゃないか?と不安になり今度はあいつの眼を見てさっきをぶつけてやった。
すると殺虫剤をかけた虫みたいにころっと気絶して護衛たちに運ばれていった。
こうして溜飲を下げると私は再び大浴場に向かって歩き出した。
何故かは分からないが、今の実力で私が戦ったら、逃げることしかできないであろう人たちが、揃いに揃って、護衛対象を後ろに下げて、私の通る道を譲り、剣に手をかけていたことだけは証言しておこうと思う。
次回は別視点かもしれませんし、本編かもしれません




