隠し事と緊張
すっごく休ませてもらいました。
<2年生Sクラス>
サツキが今後お世話になる量を紹介してもらい、急いで正門前に向かっていく中偶然サツキと同じ馬車に乗り合わせた3人組、そのうちの2人であるノートとシロナは既に教室で親しい友達と言葉を交わしていた。
「ノート、お前たちは夏休み何してたんだ?」
「今回の夏休みは非常に有意義な経験が積めましたね?ノート」
「そうだね、シロナのおかげで図書館でも普段入れないような場所まで入らせてもらったりしてすごく勉強になりました」
そんなノートの解答に周りの生徒たちは笑う。
「全くノートは…どこに行っても勉強だな!」
「…?」
キョトンとしたノートの様子に今度はシロナも一緒になってクスクスと笑った。
「シロナ…」
「ふふふ、ごめんなさいねノート。…そうね、私もノートとアーゴスのおかげでちょっとした意識の差とかが知れていい夏休みだったと思っているわ」
シロナは貴族ではあるものの、男爵であり尚且つそこまで裕福な家ではない。しかしそれでも貴族は貴族、差は生じるものなのだ。
「それにしても何でアーゴスってSクラスじゃないんだろうな」
ある生徒が言う。
「それはSになるには実力がたりてないからじゃない?」
「そうか?だってアイツ模擬戦で俺たちより強いじゃないか、だからそういう授業だけSでやってるんだし。別に頭も悪くないと思うんだけどな…」
「でも上がれてないんだから学力が足りてないってことでしょう?」
「まあそうなんのか…」
口火を切った生徒はアーゴスと模擬戦をすることが多く彼の実力をよく分かっており、また彼のテストの点数からSに迫れるほどに学力が高いこともわかっていた。
だからこその疑問だったのだが…。
ノートとシロナはコソコソと話し始める。
(どうしましょうノート。みんなもそろそろ気づいてきてますわ、アーゴスが優秀だってことに)
(まあ元々優秀だからAクラスにいるんだけれど…早くアーゴスも決めないと強制的にSクラスに上げさせられちゃうね)
(…このことを伝えて、早く決めなさいとでも言ったほうがいいわね)
(いい加減打診を断り続けるのにも限界が来たかな、まあ学校側は大丈夫だろうけど生徒側が暴発しかねないね。…これを口実に反平民派の貴族たちが動く可能性もあるな…)
ノートの頭脳はアーゴスがSクラスになる事への打診を断り続けていることが裏で漏れた場合、それを利用しようとする派閥で尚且つアーゴスとノートを恨む派閥に心当たりがあった。
(噂話の収束は不可能だから、やっぱりこれはアーゴスが綺麗に決めて…成功か失敗かは知らないけど、Sクラスに上がってもらうしかないね)
(じゃあ朝礼終わったらすぐ行って言いましょう、アーゴス…勇気を出してくれるといいんですが…)
(…それは…まあ、アーゴスだから)
2人は未だにアーゴスのことについて話し続ける生徒と別れると、席に座った。
いつのまにか教室はいつも通りの人で満たされておりノートたちの意識を自然と変えていた。
すべての生徒が席についた…
黒板近くにドアが開く、いつも通りの教師が入る、今日も1日が始まっ…背筋が凍る、鳥肌がたつ、入ってきた教師の背後そこにそれはいた。
緊張のあまり教師の、「入ってきてください、と言ったらきてください。お願いします」という指示を完全に忘れ、顔を強張らせ、笑顔の代わりに威圧を振り撒き、その黒い髪をわずかに他靡かせながら入ってくるその人物は、まさに!
ノートとシロナ、アーゴスが馬車で相乗りした、その人だった。
まあ僕は前々緊張しないですけどネ。
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次回も本編です