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バケモノに至し暗殺者  作者: ヤヒド
冒険者編
109/115

街と弱点

ごめんなさい

端的に、簡潔に、この3日間の、学園都市エルへ向かう馬車の旅ではサツキというこの世界へ来て僅かにも関わらず凄まじいまでの面倒ごとに関わった存在が乗っているとは思えないほど何も起こらなかった。


1日目の宿泊は野外だったが何かが襲ってくることもなく、またサツキが()()()()こともなく、何事もなく夜が明けた。


2日目は最寄りの町で一泊、何も起こらず。


3日目は何か起こるどころか何故だか学園都市エルに数時間早く到着した。


旅路には危険が伴うことが常識の生徒たちや御者も驚きを隠せておらず、何故こんなに早く着き、何も起こらなかったのだと訝しげに思っていた。

そして彼等はそんな珍事が起こったにもかかわらずのほほんとしているサツキを見て彼女が何かやったのかと考えていた。

そんな嫌疑(?)をかけられた本人は、


(こんなもんなのか、旅って。結局3日間かかってないし、盗賊も魔物も何も出ない。退屈だったな)


なんて何かをやったも者ならばとても出てこないような事を考えていた。

実際手を回したものは別にいる…。


……


(うん、ついたみたいだね。それじゃあ…サツキ、ブレイ様を頼んだよ)


……


サツキはそういうものだと納得し、他の4名は彼女がやったんだろうなと納得し、双方落ち着いたところで彼等の街へ入るための検査の順番が回ってきた。


「ようこそ、学園都市エルへ!身分証の提示をお願いします…と言いたいところですが、この馬車は組合の馬車ですね?失礼ですがどこからきたのか伺っても?」


質問に御者が答える。


「カイロスからです、これがギルマスからの紹介状ですね」

「おお、まさに連絡通りです。一応紹介状も確認させていただきますね」


紹介状を手渡す御者、門番は確認すると顔に笑みをたたえて言った。


「間違いなく本物です。それではお通りください!」


門が音を立てて開く、サツキたちの馬車は進んだ。


(私身分証見せてないけど、依頼のこととか書いてあったのかな?先に根回しでもしてた?)


少し疑問に思いつつもサツキは自分の座る席につけられた穴から外の様子を伺った。


(へえ!これはなかなか)


そんなサツキの目はこの世界で見たことない規模のそびえ立つ巨大な建物と塔を捉えていた。


(ん?塔の下の方から上に向かって魔力が流れていってる…なんか魔法でもしてるのか?)


魔力を見てを読み取りこの街の魔力の流れを看破したサツキは、魔力が塔の上に送られているのを確認した。


(先の方から何かが張られてる?薄い膜みたいな…うーん…害はないかな?)


この町を覆うように何かが張られているのも看破したが現状何もないため放置することにしたサツキは馬車が向かう方向が気になった。


「これはどこへ向かっている?」


それに御者が答える。


「冒険者組合ですね、この街の。そこで馬車を返します、その後はおそらくサツキさんはギルマスと話をすることになるかと」

「そう、分かった」

「私たちはそのまま学園の寮に向かうでいいですわね?」

「やることねえしな」

「そうですね、早くついたとはいえやることもありませんしね」


そう言って3人で考え始める生徒たちを見ながらサツキは考えていた。


(ギルマスめんどくさいな、まあ試験は受けなきゃいけないんだけど…何人ぐらい採用されるんだろう?っていうか2年生担当にしてって頼まなきゃいけないのか?事情通ってんのかな…まあ同い年だからしてくださいとでもいうか。1年はめんどくさそうなので2年ぐらいがいいし、それより上は私が年下になっちゃうって)


呑気に受かった後のことを考えるサツキの頭には自分が受かる未来しか存在していなかった。


……


そして一行は組合へ到着した。


サツキと生徒たちは馬車をおりる…そしてサツキは御者に礼を言うとすぐさま組合の中へ入ろうとした…が、彼等に止められた。


「サツキさん、ありがとうございます」

「…なんだ?」

「道中盗賊や魔物を遠ざけてくれていたのはサツキさんでしょう?」

「は?…いや、何でもない」


彼等の勘違いを感じたサツキは否定もめんどくさいので適当にあしらった。


「大したことじゃない、終わりか?」


あしらうと言うよりぶった斬ったサツキは再び歩き出す。

そしてその背中にノートが言った。


()()会いましょう」

「…ああ、会えたらな」


サツキの返事に満足そうに歩き出す3人を振り返ってみたサツキは「ハア」とため息をつくと組合の扉を開けた。

時間は夕方の少し前、仕事を終え組合内の酒場で今日の疲れを癒す冒険者の視線を浴びながらサツキは受付まで歩いた。

…実力者は気づく。この黒髪の少女の実力に。しかしその全てが抱いた感想は、年齢にしては戦えると言う評価だった。


「ギルマスに会いにきた」

「貴方…名前は?」

「サツキ」

「そう、お客さんね。紹介状は?」

「これ」

「ふんふん…本人ね、案内させるわ」


彼女がそう言うと奥から男性が出てきた。


「ギルマス室に案内して」

「分かった。だが、お前が行ったらいいんじゃないか?」

「いや、私はやる事あるから」

「俺もあるが?」

「……」

「…分かった。おい、名前は何だ?」

「サツキって言ってたでしょう?」

「聞こえてねえよ」

「早く行きなさい」

「……いくぞ、ついてこい」


階段を登る男性について歩き始めるサツキ、チラッと見た受付の女性はサツキと目が合うと少し微笑んだ後正面を向いた。

サツキは男性についていく…。


……


2人が登ったのを確認した受付嬢は考える。


(彼女は、()()がうまいわね)


……


サツキと男はギルマスの部屋に前についた。


「失礼、ギルマス。サツキを連れてきました」

「入ってください」


ギルマスの返事を聞き、入ったサツキは椅子に座る人物を確認した。

その人物は白髪と口髭を蓄えたお爺さんであり、齢は80をゆうに超えていそうな雰囲気を持っていた。


「こんばんわ、かな。サツキ君、ワシがここ学園都市エルのギルマスじゃ」

「こんばんわ、とりあえずきました」

「そうじゃな、まあ別にここでやることも特にないしの。それで依頼を受けたんじゃったか?」

「そうですね、学園の依頼です」

「ふむ、カイロスの小僧の推薦かの…さぞ逸材なのじゃな」

「小僧?」

「ああ、そうじゃ。あのギルマスの小僧じゃよ、ワシはあやつの師匠じゃからな」

「そうですか…」

「そうじゃ…そして何やら事情があるらしいの?」

「それも小僧から?」

「いや?予想じゃ、あやつがこの依頼に人を推薦するのは珍しいことなのでの」

「じゃあ言えませんね」


…サツキはいきなり取っ掛かりを斬り落とした。


「さっぱりしとるの」

「まあ信用できないんで」

「……く、くく、カッカッカッカッ。お主もなかなか面白いの」


何かが琴線に触れたようだ。


「じゃあサクッと試験をしようかと思うんじゃが?」

「是非に」

「じゃあ修練場へ行こうかの」


ギルマスが立ち上がる、そして彼はよろけた。

そんなギルマスをサツキはギリギリで支えると聞いた。


「大丈夫?」

「おお、優しいの。しかも中々に出来るようじゃな」


今のサツキに動きを見て総評するギルマスを見ながらサツキは考えていた。


(今のわざとかな?)

「わざとじゃよ?」


サラッと心を読んでくるギルマスをジト目で見ながらサツキはギルマスから手を離した。


「ホッホッホッ」


笑いながら歩き出すギルマスを見てため息をついたサツキは、ギルマスを食えない爺さんと表するとその後ろを歩いた。



修練場についたサツキはギルマスに聞いた。


「何をすれば合格?」

「ふむ…ちょっとまちょれよ?今呼んどるからの」


そう言われてしばらく待つと男が1人息を切らしながら走ってきた。


「ハアハアハア、やっとついた…ギルマス!来ましたよ!誰を見ればいいんですか!?」


少しキレ気味なその男はギルマスにの胸ぐらを掴みぐらぐらと揺らしながらそう問いかけた。


「ホッホッホッ、老人を労わらんかい。ああそうそう、そこの彼女じゃよ」

「へえ、僕の目には10歳かそこらに女子に見えますが?生徒と同じぐらいの」

「うむ、確か二年生と同い年じゃよ?」

「確か最低基準は冒険ランクCとしたはずですが?」

「うむ、じゃから」

「いや、じゃからじゃなくて!C以上ですよ?とうとうボケ…」


サツキは男に向かって冒険者カードを見せた。


「ごめんなさい」


すぐさま謝る、その男にある意味尊敬しながらサツキは聞いた。


「で?何をすればいいの?」

「お、怒っていらっしゃらないので?」

「うん、気にしてないよ。別に、だって素人の評価だもん」

「グサッ!」


自分でそう声を出しながら地面に崩れ落ちるその男を冷めた目で見ながらサツキはギルマスに聞いた。


「何すればいいの?」


……


「ご、実技は合格です…」

「じゃあ私は明日から教師?」

「そう、ですね…いや!面接も…ある、ます」


たどたどしい言葉を話す男の目の前には一瞬のうちに的確に鎧を通して首を掻き切られた鬼の子(オーガキッズ)の死体が転がっていた。

そしてその死体は鎧を残したまま空中に溶けた。


「ねえ」

「はい!何ですか!?面接も合格にしますから、殺さないで!」

「この装置ちょうだい?」

「い、いや…それは…」

「すまんのうサツキ君、これはあげられん、組合の所有物じゃしこれはここだからこそ使えるんじゃ。エルから出たら一切使えんのじゃよ」

「そう…」


サツキが欲しがっていたのは先程の魔物鬼の子(オーガキッズ)を生み出した魔道具であり、外部供給の魔力を魔物の形に変えて顕現させ、戦闘をさせるという擬似的に使い魔を生み出せる装置である。

しかしこれはエルと紐づけられておりエル以外では使うことができず、また生み出した魔物は生み出した本人にも攻撃をしてくるという代物だった。


「残念…でもいいや。面接も合格したから」

「え?」

「え?って何?」

「い、いや!何でもないです!もちろん合格でうよ!」


サツキのお願い(脅し)に屈した彼を誰も責めることはできない。

…あまりに焦ったせいで言い間違いをしていることも指定してあげないようにしよう。


「ホッホッホッ、よかったのサツキ君。まあ、不正…何てなかったの」

「うん、もちろん。ね?」

「は、はい!」


3人は分かりあった(一名強制(任意))。


「明日どこにいけばいいの?」

「そうですね、組合に来てください。迎えにくるので」

「いつぐらいにいけばいい?」

「そうですね…授業前に学園長とのお話が全員まとめてあるので5時には来てほしいですね、そこで学年の担当とどのクラスか決めたりします」

「何人受かったの?」

「8人です。だから2人で一学年でS、AとB、C、Dで分けて見てもらうことになりますね」

「分かった(2年のS、Aがいいな)」


学園長が事情を知っているかも知らないし、カイロスのギルマスに伝えられた懸念点である他の冒険者のちょっかいの対策だってできてはいないが、もう時間はないのだ。


(まあ、なるようになればいい)


サツキは今日だけで気づいたこの街の二つの弱点を思い浮かべながらそんな事を思っていた。

長い


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次回も本編です。


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