探偵と種族
長めだよ
「え、えっと…サツキ…さん?」
「……」
シロナからの問いかけに黙って顔だけ向けるサツキ。
そんなサツキを少し怖く思いながらも、シロナは話しかけた。
「貴方は何か用があってエルに向かっているんですね?」
問いかけに黙ったまま頷くサツキ。
するとシロナとノートの2人はチョイチョイとアーゴスを手招きし自分たちの席側に呼び寄せると、3人で何かを話し始めた。
「(サツキさんは一体なんのためにエルに行くのでしょうか)」
「(僕はエルだからこそ意味があるんだと思うね)」
「(どういうことだ?)」
「(学園、だよ)」
「(ああ、なるほど。確かにな…同い年なんだから…夏休み明けから入る転入生ってとこか?)」
「(そうかもしれないわね…)」
「(イヤイヤ、2人ともよく考えるんだ。彼女はこの組合の馬車に乗っているんだぞ?僕たちのように乗せてもらったわけでなく、元々だ。つまりギルド職員か組合員の可能性が高いんだ)」
「(つまりは…冒険者ってことか?)」
「(うん、それなら護衛がいないことにも説明がつく。きっと盗賊や街道に出る弱いモンスターぐらいなら倒せる実力を持ってるんだよ)」
「(つまりギルド職員よりは組合員…冒険者の可能性が高いわね)」
「(そう!そしてここで最初のエルだからこそ意味があるって話に繋がってくるんだ)」
「(あ?どういうことだ?)」
「(ほら、思い出して見てよ。去年1年生だった時に夏休み明け誰かが外部から来ていたじゃないか)」
「(……ああ!冒険者だわ!)」
「(そういえばきてたな…確か1ヶ月の冒険者を招いての訓練のためだっけ)」
「(その通りさ!つまりそういう事だと僕は思ったね)」
「(つまり彼女は冒険者で依頼のために向かっているわけなんだね)」
「(でもよ、あれってCランク以上じゃなかったか?基準)」
「(よく覚えてたねアーゴス。そうなんだよ、この仮説が正しかったら彼女はCランク以上なんだけど…)」
3人はサツキの様子を伺った。
サツキは目を閉じてしまっておりその表情からは何も窺い知ることができず、また彼等が…というより彼がわざと聞こえるように少し大きめに喋ったこの内容が伝わってその反応を見るという策もできなくなっていた。
「(僕らと同じ年齢でCランク以上っていうのは流石に嘘だと思うから、僕は彼女が長命種か何かだと思ってるよ)」
長命種とは数百年から数千年生きる種族の総称で彼等彼女らは若々しい見た目のまま成長するため年齢の見分けがつかない事で有名である。
またCランクを超えるというのは才能にある冒険者でも30を超えたあたりでなれるもののため、余計「サツキ長命種説」が浮上する原因となっていた。
そして…それをしっかりとサツキは聞いていた。
(ふんふんふん、このノートっていう子がヤバイな。探偵みたいに情報を繋ぎ合わせて真実まで辿り着いてる、まあ最後の詰めは甘いけどこれはこの世界の常識からくるものだからしょうがないのかな?まあほとんど正解だけど…どうせだし言わないでおくか。めんどいし)
サツキのめんどくさがりによりネタバラシを先延ばしにされる3人…遅いか早いかの違いだがきっと彼等は知りたかった事だろう。
(反応を伺うっていうのはいいけど、目をつむって動きを抑制すれば誤魔化せるしな)
そんな事を考えながら次に聞こえてきた声の耳を澄ました。
「(じゃあこのサツキってやつ俺よりも強いんだな)」
「(うん、そうだね。もし本当に冒険者ならって注釈がつくけど)」
「(まだ生徒に可能性もあるものね)」
「(まあほぼほぼ冒険者だと思うけど)」
「(この人はどこの学年担当になるんだろうな)」
「(まだうかるってきまってないとおもうよ?)」
「(あ?そうなのか?)」
「(そうね、エルで面接と試験らしいから…)」
「(それにしても綺麗な黒髪ね。まるで夜みたい)」
「(確かに、一体どこの国出身なんだろう)」
「(長命種なら亜大陸じゃね?いろんな種族がいるって聞いたぜ?)」
「(そうだね。耳長族には見えないね。耳は長くないようだし)」
「(後は…鬼族、精霊族、妖精族、獣人、妖呪族、蟲人、巨人族、小人族、竜人族、龍人族、ドワーフ、ダークエルフ…)」
「(ストップストップ、いくつか長命種以外も混じってるよ。適当に呂律しただけじゃないか)」
「(おっとすまん。でももっと亜人っていたよな)」
「(そうだね。まだまだいると思うし見つかっていない種族もいると思うよ)」
サツキは情報を得た。
(竜人族と龍人族はなんか面白いな、同じっぽいけど。あと獣人と蟲人、鬼族はその中にさらに種族がいそうだな。妖呪族は知らん、なんだそれ。それに精霊族と聖霊は違うっぽくてエルフとダークエルフも違う。これの他にまだいるのか…人間溢れすぎな)
寝ながらの情報収集…なかなかに有意義でかつ、新たな警戒対象の確認ができたことでサツキはなかなか機嫌が良くなっていた。
(じゃ、またなんか聞き耳を立てますか…喋ってくれるまで)
サツキは情報を待ち続ける…。
種族多い
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次回も本編です