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バケモノに至し暗殺者  作者: ヤヒド
冒険者編
107/115

貴族と話術(?)

長めだよ

「あなた、お名前は?」

「……」

「おい、お前黙ってないで何とか言えよ」

「……」

「そんなに威圧的な態度をとってはいけないよ?アーゴス。知らない人であり女性なのだから」

「そうよ!ノートのいう通りだわ」

「っち、分かってるよ!」

「……」


黙りこくったサツキは現在、冒険者組合の用意した馬車に()()()()乗り込んで学園都市エルへと向かっていた…。

時は少し前に遡る。


……


「はい?学園の生徒も一緒?」

「ああ、そうだね。一緒の馬車で学園都市まで向かってもらうことになっているよ」


出発の日、サツキはギルマスに用意してもらった馬車に乗り学園都市に向かうために組合に来ていた。

前日の間に、宿「聖神の抱擁」のチェックアウト及び明日からの利用をやめ、今日はそれを知り追いかけてくるブレイ達を振り切ってやってきたサツキの耳に入ったのはギルマスの無慈悲な言葉だった。


「え?何で?意味がわからないんだけど。何でそんなことになっちゃったの?」

「あ〜…それは…まあ、あんまり言えないんだけど…貴族絡み、かな」


そう言われてサツキが考えたのはブレイの事。彼はちょうど学園の生徒で夏休みももうすぐ明けて尚且つ貴族である。

しかし…


「ああ、ブレイ様じゃあないんだ。別の貴族でね。あんまり爵位の高くない家なんだけれど、何処からか学園都市に馬車を出すって情報が漏れたみたいで…」


漏れたというか元々隠してなく、多少調べればわかる事だったためすぐにその情報は伝わった。


「それで乗る人が自分の子供と同じぐらいの子供って知ったらしくて、後は…ね?どうせなら乗せてくれないか?って」

「…そうなんだ」


サツキは悟った、出る当日にこれをいった意味を。

どうせ断ることもできなく、断るにも貴族に対しては、同乗者が嫌がっているなどという理由も弱く、それによって生まれてしまう可能性のあるサツキと組合の軋轢を生むことを恐れたのだろうと。


「まあ、しゃあないか。我慢すればいいんでしょう、3日間ぐらい。それで?一体どんな子?」

「ああ、えっと…()じゃなくて()()だね」

「え?兄弟なの?」

「いや違う。3人で1人が女子、2人が男子で、貴族は女子、残り2人は平民だ。3人に血のつながりはないよ。まあ本当は貴族の子だけだったんだけどね。その子が2人も乗せてくれって頼んだらしい。まあ1人も3人も大して変わらないからね」

「男2の女1か、私も入れて女2…御者は?」

「男だね」

「そう…襲ってきたら?」


サツキはそこを懸念していた。サツキ自身は御者も男2人も余裕ですり潰せると思っているが、実際にやっていいかは別であった。


「なるべく無力化して拘束してほしいかな。まあ無理なら殺していいけど、君の実力なら余裕だと思うよ?」

「…分かった。物分かりがいいね」


クスリと笑うギルマスを見ながらサツキはさらに聞いた。


「私のこと言ったりしてないよね?」

「ああ、もちろん。1人一緒に乗る人もいるけれどそれでもいいか?って聞いていいって言ったからそれ以外は何も」

「誓って?」

「ああ。正義神に誓おう」


サツキはその誓いの重さが一切わからなかったが、まあ覚悟はあるのだろうと放っておくことにした。


「あ、でも性別は言ったよ?女って」


…微妙に閉まらないギルマスにため息を吐きつつサツキは頷いて問題ないと示した。


「もう無いかい?」

「うん、まああんまり喋らないで関わんなくてもいいでしょ?」

「まあいいけれど、学園に行ったらどうせ顔を合わせると思うよ?」

「え?何で?まだ教師になれるかも確定してないのに?」

「いや?なれるさ。絶対なれる。それに彼女達は…ブレイ様と同じ学年だからね」



<馬車の中>


3人の生徒、貴族であるシロナ・フォン・パータ、サツキに文句を言った平民のアーゴス、そんなアーゴスを諌めた同じく平民のノート、そのうちノートとシロナが並んで席に座りその向かい側、シロナの向かいにサツキその横にアーゴスが座っていた。

馬車は6人が乗ることができ、3人の生徒が並ぶこともできたがなにを考えたのかシロナが、


「あら、あなたが一緒に向かう方ですか?折角ですから隣に座りましょう?」


と唐突に距離を詰めてきてそれを、


「いやシロナ。俺が横に座る」


と何故か出てきたアーゴスが席を奪い、既に乗り込んでいたサツキはあっという間に横に座られてしまったのであった。

そして冒頭へと戻る。


……



「そうだわ、まずは私たちが自己紹介しなくちゃ」

「そうですね、僕の名前はノート、平民です。今年から学園都市エルに存在する学園エルナメトの2年生となりました。学年でのランク分けではSにいさせていただいています」


ピクッとサツキが反応する、Sというランクを資料で見たことがあったことと、それが一番上であることを覚えていたからだ。

しかしサツキはなにを考えているかも窺い知れない目をしながら馬車全体を把握し続けていた。

そんなサツキに少し不満そうな様子を見せるノート、その様子を見ていたアーゴスが今度は始めた。


「じゃあ次は俺だ!俺はアーゴス。ノートと一緒で2年生だ!ランク分けはAだが戦闘授業のみはSクラスだ!俺は()()()()()()強い!」


サツキはその()()()の意味合いが広くなっている気がして気になったが抑えた。

その様子を不満そうな顔でアーゴスが見る。


(チェッ、何だよ。分かんなかったのかよ、挑発したってのに)


そしてそのまま次に移った。


「そして私はこの国で男爵をしているパータ家の長女シロナです。同じく2年生で私は戦闘も勉学もSクラスとしてやっていますわ」


微妙にアーゴスを煽っていくシロナ、もちろん彼は食ってかかる…はずだが彼は勉強はAクラス並みにはできてもなんというか…アホでピュアであった。

全く皮肉が理解できないのである。


「そうそう、シロナは勉強もできるからな。流石だぜ」


ピュアなのかアホなのか…そんな事を考えながらサツキはこの空間及び馬車を常に把握し続ける。


「それで、自己紹介…してくれないかい?」


まあどうせ知られるかと、サツキは今の面倒ごとを避けつつ、これからの面倒も軽減するために口を開いた。

(※もちろんサツキにとって教師になることは決定事項、ギルマスになれないかもよ?なんて言ったりもしたが)


「私の名前はサツキ、君達と同い年だ。学園都市には用事があって向かっている、詮索しないでもらいたい。質問には答えるが嫌なことは嫌と言えるタイプの人間(生物)だ、無理強いはされたく無い。悪意には悪意を返すし殺意には殺意を返すが、善意に対して善意を返すかは人による」


それだけを言って再び黙り込むサツキ。その場には何とも言えぬ空気が漂っていった。

外行きモード…というより知らない人へのサツキに警戒が表に出た何ともサツキらしい自己紹介であった。


初対面かつある程度権威を持つ相手用の敬語、知らない人と話す用の威圧感及び近寄り難さ溢れる話し方、ある程度心を許した人用の軽い言葉…これ以外にもさまざまな喋り方によって相手に与える印象をコントロールするサツキの話術はこの場でも遺憾なく発揮されていた。


決して!コミュ障だから、恥ずかしいから、なに言っていいのかわからないから、こんな喋り方をしている分けでないことは…ここに明記しておく。



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次回も本編です



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