反射と1ピース
眠いっす
「なっ!一体どうしたって言うんだ、お前達!」
頭を鷲掴みにされ髪を女性に引っ張られるサルスはサツキのことなんか忘れて事態を把握しようと必死に拘束を振り解こうとしていた。
「どうした、じゃないわよ!私達を無理矢理隷属させて!あんなことも…アンタとなんか…アンタとなんかぁ!」
サルスの一言が火に薪をくべ、さらに激しく女性達を暴れさせる。
「許せません、到底許せない!お前を殺して私も死にますわ!」
「そうだそうだ!あんたを殺して死んでやる!」
1人の女性に続いて残りの2人もそう口火を切った。
「な、何のことだい?」
そして誤魔化すように今更優しいご主人様の仮面をかぶって3人を落ち着かせようとするサルス。
しかし彼の声には動揺がはっきりと刻まれており、それを隠すことはできなかった。
「死ね!死ね!死ね!!」
ヒートアップしていく痴話喧嘩(笑)、しかし女達も身体能力や装備の差からサルスを仕留めることができず、サルスもここで女性を殺したり気絶させたりできるほど胆力も技術力もなかったため硬直状態となっていた。
そこにサツキが割り込む。
「止まれ」
「ッ……」
ピタリと止まる殺し合い(?)と騒音、その場にいたサルスと3人の女、そして何だかわからずあたふたしていたよくわからない男はハッキリとナニカを感じ取って…感じ取らされていた。
しかし、サツキは黙れと言っていない。
「そうだ!大体お前が彼女達に何かしたんだろう!大方何かの魔法でも使って彼女達を操っているんだ!」
そんなふうに謎の主張を始めるサルス。これにはサルスの頭に手をかけたままの女達にも力が入る。
「…おい、力も込めるな」
しかしサツキが先手を打った。そしてサツキはサルスに言った。
「おい、悪意は返した。彼女達は正気に戻り、お前は彼女達によって告発、または殺害される。一体どう言う方法で操っていたのかは知らないが、私の魔力のごり押しで破壊できる程度の魔法(?)だったんだろうな。お前は自分が都合良く扱い続けた彼女達に命を握られるといいと思うぞ」
怒っているふうなサツキだが別に怒っていない、ただ感情を反射しただけ。その際に自分が受けた感情を相手が嫌なことに加工する作業は行なったがただそれだけだ。
だから別にこの後3人の女性がサルスに殺され彼が逃亡しようとも、3人の女性が彼を脅し奴隷のように扱おうとも、吹っ切れて実力によって3人の女性を再び隷属させようとも、別にサツキにとっては終わったこと、まるで興味はなかった。
「まあこれだけ目撃者がいて証言者であり当事者の女が3人もいるんだ。なに、運が良ければこの街の施設で死ぬまで生きさせてもらえるんだ。せいぜい上手く生きれるように頑張りな」
事実と皮肉のコンボレーションを決めたサツキは許可を与えた。
「動いてよし」
「……」
「……」
「…殺してやるわ!」
「死ね!死ね!死ね!!」
「こいつを訴えて社会的に抹殺してやる!」
………
そんな声を聞きながら静かに扉に向かって歩き始めるサツキ。後ろからの声が遠ざかっているのにも関わらず強くなっていくのをひしひしと感じながら扉を開けて組合の外に出た。
いつの間にか日は落ちかけており日の反対側を見ると、強化されたサツキの目には星が写り瞬いているのが見えた。
「地球とは違うな…」
一言呟いたサツキは宿の方へ歩き始める。
今日の出来事によって学んだ、自分の異世界での基準の1ピースを噛み締めながら。
次が向かうとこかな?
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次回も本編です。