評価と起こりうる災害
長めだよ
「さて、サツキちゃんも此処にご飯を食べにきたんでしょう?その様子じゃあうちのサツキと約束でもしてたみたいね」
ガイとの言い争いを一方的に切り上げたメリリャはサツキの方へ向き直るとその鋭い洞察力を発揮して言った。
しかしサツキはそれを言い当てられたことよりも別のことが気になった。
「サツキ…ちゃん…」
「あ、あら嫌だったかしら?」
「いや、そんなことは。ただ少し思い出して」
サツキの脳裏には地球での思い出が少し蘇っていた。
「そう、嫌じゃないならこれからもそう呼んでいいかしら?あと私に対しても丁寧に話さなくていいわ、言った通り減るもんじゃないもの」
なぜか彼女に対しては普通の話し方がしづらいと感じていたサツキだが、それをしっかり抑え込んでサツキは普通にした。
「じゃあそうさせてもらうね」
「うん、うん、その方がいいわ。さてそれじゃあ私とガイは戻らせてもらうわね」
「え?いや別に…」
「カイナと約束していたんでしょう?此処で私たちが出しゃばるのはあまり好ましいことじゃないわ、だからまたこんど、ね」
そう言うとメリリャはガイを伴って食堂の外に向かって歩き出した。
「メリリャカッコつけすぎでしょ」
そんな2人の後ろ姿を見つめながらカイナはそう言った。
「また今度あの2人とも色々話したいな…」
「ん?興味持ったのサツキ?「黒の鉄槌」入る?」
色々話したいを拡張して捉えるカイナに苦笑いしつつサツキは2人を見送った。
「じゃあ食べよっか」
「そうしよう!僕もお腹すいたよ。ご飯お願いしま〜す!」
<ガイとメリリャ>
「いい子だったわね、彼女」
「そうだな、意見をすぐ聞き入れる姿勢と言われるまではわかりやすい形で警戒を表に出す今時じゃ珍しい素直で危うい子だったな」
意図した出会いじゃなくとも、娘のようなカイナが興味を抱いている存在にあったにならばしっかりと評価するのは当たり前。
あの短いやりとりで判断できたことを2人はまとめようと話し合っていた。
「そして何よりあの貴族との諍いの時から分かっていたが、引こうと言う意思が一切感じられなかったな」
2人がカイナと話してても物怖じせず輪に入っていくその胆力…否それを胆力と呼んでいいのか2人は迷っていた。
「あの子はきっと厄介事をたくさん引きつけるわね、そして何より自ら飛び込んでいく…何と言うか…」
「…言葉にしづらいな。そうだなぁ…魔力災害みたいな子だな」
魔力災害とは高濃度の魔力が溜まった魔力溜まりに対してさまざまな生物が惹きつけられてそこに溜まり、その生物たちが争いになり最終的に1匹の強靭な生物が誕生し、それがそこに溜まった魔力を吸収することによって「蠱毒の性」が誕生するその一連の流れのことである。
「自分を餌にして強者から何から何までそこに惹きつけて、結果いつか誕生するであろう「蠱毒の性」を作る器官…彼女が蠱毒の性になるのかも分からないがとにかく彼女はそういう渦な気がする」
その言葉に得心したかのように頷くとメリリャ言った。
「しかも自分で動き回るわよ。あの気性、あの生き方で世界中を動き回ると言うんだから…あの子が「蠱毒の性」になる可能性は低い気がするわね」
動き回ることによる被害の増大を心配をしつつも、動き回ることによってどうしようもない強者との出会いが乱数的に起こる可能性を感じ、彼女自身が「蠱毒の性」になることは少なそうだと感じるメリリャ。
「でもな、こんな事例もあるらしいぜ?」
少しもったいつけるとガイは言った。
「あまりに高濃度の魔力が無数の死骸と負のエネルギーを核として魔力そのものが形を作り、全てを喰らい尽くすってな」
「……」
「そんな固くなるなって。仮称「魔神」の出現なんて、遥か昔に一回あったような話さ」
あくまで例として魔力災害が出されただけであってサツキは決してそんなものではない。
「蠱毒の性」も仮称「魔神」も所詮それに関連付いた例えでしかない。
しかし…どうしてもメリリャの頭からはその事がこびりついて離れなかった。
メリリャは心配を抑え込む。
「まあ、気にしてもしょうがないわね。こんな事少しの接触で感じた予感でしかないんだし。カイナにとっても初めての同年代の友達だわ、こんな予想で離すわけにもいかないでしょう。まあ2日後にはどちらにせよ離れるのだけれど…」
「まあカイナが心を開いているからな、言った通り悪い奴じゃあないだろう」
2人はそう結論づけるとカイナたちがいた方向を一瞥し別れて取られてある部屋の中に別々に入っていった。
…どうやら2人はそういう関係ではないようである。
……
仮称「魔神」は確かにこの世界でも類い稀なる力を持っていた。
魔力そのものである強みを生かし物理攻撃の一切の無効及び、願うだけで発動する魔法を超え、魔術を超え、魔を利用しつつも自身特有の法まで近づきつつあるその御技…それはそれは、恐ろしいものであった…が、それは限りなく法に近いだけで法ではなかった。
だとしたら勝機は存在した。しかしそれは世界に類まれなる犠牲を強いた。世界の全ての生命体の数が戦争前の5分の2程まで減少した。
そして倒されたこの怪物を「神」の称号をつけて呼んだことによって事態は急変した。
1柱の神が怒ったのである。曰く「舐めるな」
その神は自分の正義に基づき力を行使した。
世界の生物は仮称「魔神」を除き戦争前と同じように再生した。蘇った。
そしてその神は「正義神」と呼ばれ今でもこの世界で崇められている。
神さん
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次回も本編です