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「もっと?もっとしていい?」
「……うん」
先程よりも深く口づけると和花の力がしゅるしゅると抜けていくのがわかり、秀人は頭を抱え込むようにして舌を滑り込ませる。口内を舐め取られた和花は初めての感覚に頭が真っ白になった。
和花をぎゅっと抱きしめながらゆっくりとその身を倒していき、上から眺めるだけで言い様のない愛しさが込み上げる秀人。そっと首筋をなぞるだけで和花は可愛く身をよじらせた。
「……佐伯さん」
このまま和花に溺れそうになったところ、名前を呼ばれて少し我に返る。と同時にほんの少しの不満が意地悪となって口からこぼれた。
「和花こそ、俺のこと好きなのかな?」
「好きです!」
「じゃあなんで名前で呼んでくれないの?」
「え……だって、恥ずかしい」
「名前で呼んでくれるまでおあずけだ」
「ええっ、やだぁ」
と言いつつも頬から首もとを撫でて挑発をすると、和花はくすぐったさに甘い吐息を落としながら首をすくめた。
「すごく色っぽいよ和花。このまま抱きたいんだけど和花が名前で呼んでくれないからなぁ」
「意地悪しないでぇ。……ひ、秀人さぁん」
「可愛すぎて優しくできる気がしないな」
「んんっ……はぁっ」
貪るような深く激しいキスが落とされ、和花の口からは無意識に甘い吐息が漏れた。
「和花、愛してる」
小さく呟いた秀人の言葉が和花の頭を痺れさせる。お互いを求めあった甘くて熱い気持ちは一瞬のうちに波に飲み込まれたかのように過ぎ去り、そして夜が更けていった。




