92/100
092
──佐伯くんってつまらない
──結婚するならスペックの高い佐伯くんだけど彼氏としてはないよね
秀人が過去の恋愛において散々言われてきた言葉だ。だから直さなくてはいけなかったのに、秀人はまた同じ失敗を繰り返そうとしている。今までの恋愛なら別れを切り出されてもあっさりと受け入れてしまっていた。
だけど本当に大切に思える和花に出会った今は違う。
和花にずっと好きでいてもらいたい。
和花をずっと好きでいたい。
いつの間にか、秀人にとって和花はかけがえのない存在になっていた。だから大切にしたかった。いや、大切にしていたつもりだった。けれど大切なものは大切だからといって箱にしまっておいてはダメなのだ。それでは存在価値がなくなってしまうから。
そのことを秀人は過去の恋愛から学んでいたはずなのに。
秀人はぐっと唇を噛みしめる。
自らの過ちを悔いている場合ではない。
今ならきっとまだ間に合うはずだ。
この手のひらに寄りかかってくれている和花の温もりがあるのだから。




