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二人がお会計を済ませ外に出ると、ちょうど秀人がこちらに向かって歩いて来ていた。
「ほら和花ちゃん、佐伯くん来たよ」
「え~?本当ですかぁ?うふふ、やったぁ」
「うんうん、嬉しいねぇ」
和花はフラフラしながらキャッキャと笑い、なぎさはその体を横からしっかり支えつつ秀人に渡す。そして秀人にだけ聞こえるくらいの声で、
「和花ちゃんがやけ酒したのは佐伯くんのせいだから、責任取りなさいよね。私の和花ちゃん泣かせたら許さないから」
と凄みをきかせた。
「ごめん、富田さん。迷惑かけ──」
「私は和花ちゃんと飲めてすごく楽しかったから。後はよろしく頼んだ!じゃあね~」
秀人が和花をしっかり支えているのを確認したなぎさは、手をヒラヒラと振ってさっさと夜の闇へ消えていった。
(邪魔者は退散っと~)
お互い想い合っているくせにお互いに想いが通じ合っていない。お酒の力で素直になれるなら、この機会に思いの丈をぶちまけてほしいものだ。
「あ~ほんとに世話の焼けること」
なぎさは一人、こっそりとほくそ笑んでいたのは言うまでもない。




